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緊急事態宣言に関する社説・論説集(2020年4月30日)

コロナと農業 輸入頼み脱却が必要だ(2020年4月29日配信『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、ロシアやベトナムなど少なくとも13カ国が自国の食料確保を優先し、農産物や食品の輸出を規制していることが明らかになった。

 これに対し、主要20カ国・地域(G20)の農業担当相は先週の緊急テレビ会議で、農産物貿易を不当に制限しないことで一致した。

 世界には農業の生産基盤を持たない国も多く、貿易を通じた食料の安定供給体制の維持で国際協調を打ち出した点は評価できる。

 これまで安穏と輸入頼みを続け、食料自給率の低迷を放置してきた日本政府は、急速な輸出規制の広がりを大きな教訓と受け止めなくてはならない。

 輸出入依存を前提とした食料・農業・農村基本計画を見直し、国民が必要とする食料を国産で賄える方向に農政を転換すべきだ。

 国連食糧農業機関(FAO)など三つの国際機関は今月1日、新型コロナ危機に適切に対応できなければ「輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品が不足しかねない」と連名で警鐘を鳴らした。

 万が一にもそうした事態になれば、日本は最も大きな打撃を受ける国の一つとなる。

 2013年の主要7カ国(G7)のカロリーベースの自給率はカナダ、米国、フランスが100%を上回り、ドイツは95%、英国とイタリアも60%台と、少なくとも6割以上を自国で確保している。

 日本の39%は極端に低く、しかも18年度には37%と過去最低を更新するありさまである。

 政府の危機への備えが甘すぎたと言われても仕方ないだろう。当面は国際社会に安定供給を訴えていくしかないとしても、中長期的には自給率の向上を最優先に政策に取り組む必要がある。

 政府は先月末に新しい食料・農業・農村基本計画を閣議決定したばかりだが、今後10年の指針に足る中身かどうか再検討が必要だ。

 基本計画は、10年後の自給率を45%に高める一方、農林水産物・食品の輸出を昨年の5倍超の5兆円に引き上げる目標を掲げた。

 そもそも45%の自給率は旧計画では25年度に達成するはずの数値であり、実質的な目標先送りである。国家として輸出に力を割く状況なのか、よく考えてほしい。

 今回のコロナ禍では、農場で働くはずだった外国人技能実習生が来日できず、作物の収穫に支障が生じる恐れも出ている。

 食料も働き手も外国に頼る現状を変え、国内の生産基盤を強化するためにやるべきことは多い。



熱に浮かされる(2020年4月29日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 カウントダウンの終わりとともに歓声と拍手がわき起こり、会員制交流サイト(SNS)上ではお祝いの言葉が飛び交った。平成から令和へと元号が変わった1年前、全国各地でイベントが開かれた。改元にあやかった商品も登場し、人々は競うように改元ムードに身を委ねた

▼盛り上がりの背景には、改元という共通の話題が、孤立感を深める人々の結びつきを深めるきっかけとなったとの指摘もあった。確かに、働き方や暮らしの多様化の陰で疎外感も広がっていたのかもしれない

▼ただ、高揚感は長続きはしなかった。自然災害や凶悪事件が相次ぎ、政治の世界では閣僚辞任に続き、「桜を見る会」を巡る疑惑が表面化。悪化する日韓関係や米中関係は国内経済にも影を落とした

▼熱しやすく冷めやすいといえば、それまでか。気になるのは、政教分離問題などの議論が不十分だったことだ。皇位継承を巡る課題の解決も先送りされた。祝賀ムードに流され、大事がなおざりにされたということはなかったか

▼新型コロナウイルスの感染が広がる中、年金制度改革関連法案や検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案が、審議入りした。保険料の負担増や検察人事への政治介入の懸念も指摘される重要法案だ

▼感染対策が、最優先課題であることは間違いない。そんな有事にこそ、熱に浮かされると見えなくなるものがあることを肝に銘じたい。



医療機関に緊急資金配れ/院内感染と資材不足(2020年4月29日配信『東奥日報』-「時論」)

 新型コロナウイルス感染症の院内感染が止まらない。国は一刻も早く防護具を供給するとともに検査態勢を充実させ、不安を払拭(ふっしょく)するべきだ。医療機関が経営を心配せずに対策が取れるよう、緊急資金の投入を提案したい。

 院内感染による新たなクラスター(感染者集団)は、市中のクラスターと違い、患者が増える一方で医療者が離脱を余儀なくされ、感染拡大防止に二重の障害となる。体が弱っている入院患者が命の危険にさらされ、今後、欧米諸国のように国内の死者数が激増する恐れがある。

 日本看護協会によると20日までに19都道府県の54施設で院内感染が発生した。その影響は深刻だ。救急車が何十もの病院で受け入れられず、搬送時間が極端に延びた。病院以外に介護施設やリハビリテーション施設で集団感染が起きている。

 本県では、クラスターが発生した高齢者グループホーム入居者らの看護にあたっていた十和田市立中央病院の看護師計4人の感染が確認された。院内感染の可能性が高いとみられている。

 こうした事態は各機関の落ち度とは言えない。感染制御に精通した医療者だけでは到底足りなくなっている。感染症指定医療機関でないのに急きょ専門病院に指定され、現場は十分な準備もなく感染対応をさせられている。事前に教育を受ける余裕もなく、感染におびえながら実地で学ぶしかない。看護師の危険手当は日に数百円である。

 防護資機材の不足が医療者の感染の危険性を一層高めている。数少ない医療用ガウンや高機能マスク、フェースシールドを使い回したり、手作りしたりしている現状では、ミスがなくても医療者の感染は一定の確率で発生する。

 医療者はそれを知っている。家族に会わないと決めた人、遺書を書いた人もいる。耐えられず退職するケースも出始めた。専門家が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を懸念するレベルだ。長丁場の闘いは必至なのに、医療者の職業倫理に甘え、決死の覚悟を強いてはならない。

 厚生労働省は24日、防護具が著しく不足した医療機関への緊急配布をようやく発表した。ただ、ガウンやフェースシールドは「5月下旬ごろ」ではいかにも遅い。

 足りないのは、厚労省が配ろうとしている資材だけではない。医療機関や医療者個人が自前の資材調達のために使える緊急資金を配るべきだ。

 看護師増員の人件費、検査所の設置費用、寝具の頻回の交換、清掃や医療廃棄処理の増大など新たな出費は病院の資金繰りを悪化させている。

 一方で、今の厚労省に需要に応じて資材を調達する能力はない。幸い、企業が関連物資の増産を始め、流通も機能している。看護協会は離職看護師の復職を呼び掛けた。現場裁量で使える資金さえあれば個々の努力で補充できる可能性がある。

 資金をどう配るか、検討する時間の余裕はない。請求書をいったん自治体に回し、自治体が肩代わりした分を国が補償するのが最も早い。

 医療現場を感染から守るため、われわれも協力していきたい。急病やけがは別だが、持病の薬の処方や定期的な診察だけなら、直接受診しなくても電話やオンラインで可能な場合がある。かかりつけの医師や薬局に相談したい。



(2020年4月29日配信『東奥日報』-「天地人」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府は在宅勤務などのテレワークを推進している。通勤や職場における人と人との接触を減らすことができるからだ。ただ、押印や文書を重視する日本の「はんこ文化」が障害に。はんこを押すためだけに、出勤しているケースもあるというのだ。

 「まったくナンセンスだ。デジタル時代に合わない」。経団連の中西宏明会長が先の定例記者会見で「はんこ文化」をやり玉に挙げた。「はんことか書類とか言っている暇はない」。旧態依然とした“お役所仕事”では、緊急事態に対応できないということであろう。

 民間の提言も踏まえ、安倍晋三首相は感染リスクを抑えるため、行政手続きにおける押印や対面、書面提出の慣行の見直しを進めるよう、関係省庁に指示した。緊急経済対策に盛り込んだ施策の迅速な対応を図るため、補助金や給付金の申請がオンラインでできるような環境の整備を急ぐ。

 海外生活が長かったという中西会長は、はんこを押すのではなく「署名や電子署名でもいい」との考えだ。政府もそういった方向で具体的な議論を始めることに。

 とはいえ、印鑑が不要になるわけではない。婚姻届、出生届など役所への届け出の中には印鑑が必要なものも。表彰状などからはんこが消えるのは考えにくく、生活に根付いた「はんこ文化」は今後も大切にされるだろう。



新型コロナ・家庭内暴力/SOS見逃さぬ支援態勢を(2020年4月29日配信『福島民友新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための外出自粛が続き、家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス、DV)、児童虐待の増加が懸念されている。

 海外ではすでにDVが急増しており国連が警鐘を鳴らしている。県内でも民間団体などに相談が寄せられている。女性支援の活動に取り組むNPO法人ウィメンズスペースふくしまでは「一緒にいなければならない時間が増えた」「電話もできずストレスの発散もできない」など、苦しい胸の内を訴える相談が増えている。

 同団体によると、在宅勤務や休校などにより自宅で過ごす時間が増えている中で、DVが悪化しているケースもあるという。配偶者などの目があり電話しにくい場合には、メールや会員制交流サイト(SNS)によるSOSの発信が有効だ。内閣府はDV相談+(プラス)を設置し、24時間対応でメールや電話の相談を受け付けている。迷わず活用してほしい。

 学校の休校が続いている現状で、子どもの虐待にも目を向ける必要がある。普段は学校が子どもの様子などからチェックすることができるが、休校が長期化すると目が届きにくくなる。

 各学校は、定期的な電話連絡などで、子どもの生活状態を見守っていくことが大切だ。

 児童虐待やDV被害に詳しい福島大人間発達文化学類の安部郁子特任教授は、ずっと家にいる状態が続き、SOSを出せる状況にない中でのDVの深刻化を懸念する。「SOSをキャッチし、適切に対応できる仕組みづくりが大切になってくる」と話す。

 「助けてほしい」という訴えの発信すらできない状況は、被害者と支援する側の分断にほかならない。行政機関と民間団体が連携し、被害者のSOSを見逃さず、速やかな支援に結び付ける態勢を整えておきたい。

 安部特任教授はまた、「今の状況は誰もがストレスを抱えている状態にあることを理解し、怒りの感情に敏感になることが必要」と指摘する。自らが加害者にならないように心掛けたい。

 政府は新型コロナの緊急経済対策で、1人10万円の給付金を交付する。住民票を移さず世帯主と離れて暮らす被害者らに対しては、直接給付できるようにするとしているが、確実に受け取ることができるよう対応してもらいたい。

 「今後、経済状況が悪化すれば、DVのリスクが高まるだろう」という、県内の相談機関関係者の見方もある。安全で安心して過ごせる場の確保が重要だ。



一極集中是正の契機に(2020年4月29日配信『福島民報』-「論説」)

 新型コロナウイルス感染が東京(埼玉、千葉、東京、神奈川)で急増している事態は、東京一極集中が続く国土構造の新たなリスクを顕在化させた。国は感染抑止に総力を注ぐのは言うまでもない。終息後は一極集中の是正を強力、確実に進めるべきだ。

 東京都の感染者は二十八日午後九時半現在、四千五十九人で全体の三割を占める。移動や企業活動が著しく制限された影響は国内の経済、教育、文化など広範囲に及ぶ。緊急事態宣言発令後も連日、国内最多の感染者が確認されている現状を見れば、規制が長引き、日本経済は一段と悪化する恐れがある。

 県人は古里に逃れたくてもとどまらざるを得ない。東京への就職、進学にも支障を来している。全国各地の人々が同じ苦境にある。新たな感染症は、国内企業の本社機能や教育機関などが一都市に集中している危うさ、影響の大きさを浮き彫りにした。

 総務省がまとめた二〇一九年の人口移動報告によると、東京圏は二十四年連続で転入者が転出者を上回る「転入超過」となった。一方で、本県を含む地方は転出超過が続き、人口流出に歯止めは掛かっていない。

 国は地方の人口減少対策となる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を二〇一四(平成二十六)年に策定し、二〇二〇年までに転入超過をゼロにする目標を掲げた。しかし、是正どころか、東京圏への移動の流れはむしろ強まっている。

 目標は第二期総合戦略で二〇二四(令和六)年度に先送りされた。本社機能の地方移転などに加え、都市部に住みながら地方と交流する「関係人口」を拡大し、地方の就業者も百万人増やすなどの新たな柱を掲げたが、決め手になるとは思えない。

 是正を巡る国の政策は、動き出しては頓挫する経緯を繰り返してきた。一九七七(昭和五十二)年策定の第三次全国総合開発計画に「大都市への人口・産業の集中抑制」が盛り込まれて以降、「多極分散型国土の構築」「多軸型国土構造の形成」など長期計画を見直すたびに表現は変遷し、焼き直しとの批判を浴びてきた。

 阪神大震災で首都機能移転の機運が高まり、本県を含む国内の移転候補地が選定されたものの、国会議論は進まず立ち消え状態にある。

 今度こそ是正に本気で取り組まなければ、国家の危機管理のありようが厳しく問われる。国民は危機意識を共有し、議論を後押しする姿勢が求められる。



感染症と人類 世界の英知結集する時だ(2020年4月30日配信『毎日新聞』-「社説」)

 感染症のパンデミック(世界的大流行)は、「起きるかどうか」が問題なのではない。「いつ起きるか」が問題なのだ。専門家が繰り返し述べていたのは2000年代半ばのことである。

 果たして09年春に新型インフルエンザのパンデミックは起きた。ただそれは恐れられていた強毒ウイルスによるものではなかった。

 それから10年。新型コロナウイルスによる肺炎の集団発生が中国で報告されてわずか数カ月で、世界の都市が古典的な「外出制限」に頼らざるを得なくなった。感染症の脅威を過小評価していたと誰もが感じているはずだ。

 人類と感染症との闘いの歴史は古い。天然痘の痕跡は紀元前のエジプトのミイラにもみられる。14世紀の欧州で黒死病と恐れられたペストの流行は、それ以前にも、それ以降にも繰り返されてきた。

 直近のパンデミックは100年前のスペイン風邪インフルエンザによるもので、世界で数千万人もの命を奪っている。

楽観主義が招いた危機

 当時から背景には交易や戦争による人の移動があった。ペストが教会の権威失墜を招いたと言われるように、感染症のまん延は社会にも大きな影響を与えた。

 厳しい闘いの中で、一時は人類が勝利したとの期待が生まれたこともある。抗生物質やワクチンの登場によるものだ。前者は細菌への、後者はウイルスへの切り札となり、80年の天然痘根絶にもつながった。

 しかし、残念ながらどちらも万能ではなく、世界はしっぺ返しを食らうことになる。

 70年代からエボラ熱、エイズ、牛海綿状脳症、ラッサ熱など新たな感染症が次々と流行し、マラリアや結核など既存の感染症も勢いを盛り返していく。

 「感染症に対する楽観主義により世界は危機にひんしている」。世界保健機関(WHO)が新興・再興感染症への警告を発したのは四半世紀前のことだ。

 中でも、公衆衛生上の脅威となったのが、動物が持つ病原体が人間の間でまん延する「人獣共通感染症」である。

 新型インフルエンザはブタやトリのウイルスが組み換わって人で流行する。ウエストナイル熱はトリのウイルスを蚊が媒介する。エボラ熱も、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)も、そして今回の新型コロナも、元をただせばコウモリのウイルスだと考えられる。

 新興感染症の4分の3までが動物の病原体に起因する。新型コロナの出現も想定外だったとは言えない。

 では、人獣共通感染症が増えた要因はなんだろうか。

 ひとつには人口爆発がある。

 50年に25億人だった世界人口は77億人に達した。これに伴う森林伐採や農地開発は自然破壊を招き、野生生物と人間の接触の機会を増やした。

 食習慣や貧困から野生動物を食料とする人たちもいる。それらが結果的に動物から人への感染リスクを高めてきた。

人間の活動が鍵を握る


 都市化やグローバル化の影響も見逃せない。

 自然界から漏れ出した病原体は、かつては地域の風土病にとどまっていた。世界に陸路や空路が張り巡らされ、大量の人が短時間で移動するようになり、瞬く間に世界に広がるようになった。

 典型例は西アフリカ諸国やコンゴ民主共和国で猛威を振るったエボラ熱だろう。以前は地方の小さな村で散発的に起きるだけだった重篤な感染症が、今では国境を越え、都市にまで到達する。

 都市の人口を支える家畜の大量飼育もリスクを高める。鳥インフルエンザはその一例だ。温暖化の進展で、デング熱のような熱帯の感染症が温帯にまで広がることも、大きな懸念材料となってきた。

 中国の一地域から瞬く間に世界に広がった新型コロナの現状も、まさにこうした複合的リスクが重なり合った帰結だろう。人間の活動が動物由来の病原体の感染リスクを高めているのだ。

 人口爆発、産業化、都市化、環境破壊、気候変動、グローバル化、格差による貧困。パンデミックは、現代社会が生み出すさまざまな問題をあぶり出す。

 長期化する新型コロナとの闘いは、そうした世界共通の課題を考え直す機会でもある。人類の英知を結集して乗り越えたい。



コロナ不安 心の相談幅広く汲み取りたい(2020年4月29日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、不安やストレスを訴える人が増えている。子供から大人まで、何らかの我慢を強いられていることが背景にあるのだろう。

 全国の精神保健福祉センターの心の健康相談電話には、2~3月の約2か月で、1700件超のコロナ関連の相談が寄せられた。

 「感染が怖くて外出できない」「マスクが売り切れでパニックになりそう」など、感染の恐れを訴える声が多い。「仕事が休みになり、経済的に不安」「介護施設が利用できず、家族の介護に疲れた」といった内容もある。

 中には「不安で死にたくなる」という深刻な訴えが聞かれる。先が見えない不安や疲労、悩みが重なっていることがうかがえる。

 「こんな時には、誰かに悩みを打ち明け、聞いてもらうことで不安が和らぐ」と専門家は指摘する。心の健康を保つための支援を充実させることが大切だ。

 民間団体が実施しているSNSを利用した窓口には、20~40歳代からの相談が目立つ。18歳までの子供を対象に、電話相談を受け付けている団体もある。

 国や自治体は民間と連携して相談態勢を拡充し、幅広く訴えを汲くみ取る必要がある。

 気がかりなのは、うつ病などの精神疾患を抱えている人が、ストレスや不安で症状を悪化させてしまうことだ。自殺リスクの高まりを懸念する声もある。

 相談の結果、受診が必要だと判断した場合には、早めに専門の医療機関につなぐといった踏み込んだ対応が重要になる。

 精神科医らでつくる日本うつ病学会は、心の健康を維持する方法をホームページで紹介している。毎日同じ時間に起きて、2時間程度は日光を浴びる。自分で生活リズムを保つのがポイントだ。

 不眠や食欲の変化、気分の落ち込みやイライラは、心の不調の表れと言える。家族が身近な人の変化を見逃さないようにしたい。

 孤立しがちな独り暮らしの高齢者への目配りは欠かせない。長引く外出自粛で、社会とのつながりが絶たれ、状態の変化に気づくのが遅れることが心配だ。福祉関係者が電話で様子を確認するなど、見守りを強化してほしい。

 環境の変化で不安定になりやすい妊産婦への配慮も求められる。体調管理や感染への不安、里帰り出産ができるのかという悩み。様々な相談に、助産師らがオンラインで助言するサービスが人気だ。こうした取り組みを広げたい。



巣ごもりの日々 活字を親しい友にしよう(2020年4月29日配信『産経新聞』-「主張」)

 緊急事態宣言を受け多くの人が自宅で過ごす大型連休を迎えている。テレビの視聴時間が増えてネット利用も活発だ。巣ごもり需要である。

 一方で、学校は始まらず、友達や会社の同僚にも会えない。世に情報は多く、焦りや不安も感じるだろう。そんな今こそ思考のスキルアップや心のメンテナンスのために活字に親しもう。本や新聞を読もう。

 実際、こんな時だからと活字に向かうアスリートがいる。文武両道を掲げる柔道選手だ。「今だから勉強も取り組もうチャレンジ」でお薦め本をツイッターなどで紹介している。2016年リオ五輪銅メダルの羽賀龍之介選手は岡本太郎著『自分の中に毒を持て』を推薦し「自信のないときに読むと覚悟が生まれる」という。

 そのバトンを受けた原沢久喜選手は『留魂録 吉田松陰の「死生観」』を取り上げた。同じ山口出身の志士の生き方が「自分自身を見つめ直すいいきっかけになった」と語る。読書は時に自己との対話になるいい例だろう。

 選手のために、本の寄付を呼び掛けたのは日本フェンシング協会の太田雄貴会長だ。千冊以上が集まり、東京都内のナショナルトレーニングセンター(NTC)が使えなくなった選手らに本を貸し出した。「選手生活も、引退後もより良いものにする為に」と理由を説明する。競技のためだけでなく人としての幅を広げ、社会で通じる人材を育てるねらいがある。


 活字離れといわれて久しい。文化庁の平成30年度「国語に関する世論調査」では「読書量が減っている」と思う人が増えている。その理由で最も多かったのは「仕事や勉強が忙しくて時間がない」(49%、複数回答)だ。ならば今は絶好の機会ではないか。

 ではとにかくたくさん読めばいいかというとそうでもない。「無批判的な多読が人間の頭を空虚にする」(『科学者とあたま』から)と書いたのは物理学者で随筆家の寺田寅彦だ。「少なく読み、多く考えよ」という。寺田が「少なく」読んだわけがないが、漫然と読むのではなく、読んで考えることの大切さをいっている。

 我田引水だが、新聞は考えるための指標になろう。紙、デジタルは問わない。そこにはさまざまな情報や分析があり、異なる意見にも出会える。習慣にすれば、活字は親しい友となる。



人類最大の脅威は、核戦争ではなく、むしろウイルスの感染症である(2020年4月29日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 レオナルド・ダビンチが残した「レスター手稿」と呼ばれるノートは、世界一高価な本として知られる。やはり世界一の富豪であるビル・ゲイツさんが1994年に約30億円で手に入れた。

 ▼万能の天才だったダビンチは、潜水艦やヘリコプターの発明から地球温暖化まで予言したといわれている。米マイクロソフトを世界最大のソフトウエア会社に成長させたゲイツさんもまた、天才の称号をほしいままにしてきた。

 ▼当時のインタビュー記事を読むと、インターネットで人々が情報を共有する、現在のIT社会をすでに見通していたことがわかる。それどころかゲイツさん、まるで新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)まで予想していたかのようだ。

 ▼「ここ数十年で、数百万人の命を奪うかもしれない人類最大の脅威は、核戦争ではなく、むしろウイルスの感染症である」。5年前にある講演で世界の指導者に向けて鳴らした警鐘が注目されている。称賛の声が上がる一方、怪しげな陰謀論がネット上を飛び交っている。パンデミックを利用して、公衆衛生のシステム支配を狙っているというのだ。古今東西、天才には多くの敵がつきものだ。

 ▼2008年に経営の一線を退いてからは、慈善事業に専念してきた。特に途上国へワクチンを支給するなど、数千億円もの資金を投じて感染症対策に取り組んだ。春の叙勲で旭日大綬章が贈られたのは、長年にわたる活動が評価されたものだ。今回のコロナウイルスに対しても、有効性と安全性の両面で有望なワクチンを7種類選んで、その開発に資金を援助している。

 ▼コロナウイルスの押さえ込みが実現すれば、晴れてゲイツさんの来日が可能になる。受章を祝うその日が待ち遠しい。



コロナ禍に考える 本能に支配されないで(2020年4月29日配信『東京新聞』-「社説」)

 人間には陥りやすい心理状態があるそうです。「世界はどんどん悪くなっている」「すぐ手を打たないと大変なことになると焦る」「危険でないことも恐ろしいと感じる」「ものごとを過大視したり、単純化する」-。「本能」と言ってもいいかもしれません。

 日本をはじめ、世界で200万部超のベストセラーとなった「ファクトフルネス」という本に列記されています。

◆生き残るための知恵


 こういった「本能」は、「生存のための知恵」とも言えるでしょうが、過度に左右されてしまうと、現実が見えなくなります。

 データを基に、世界や未来を考える訓練を日頃からしておこう。この本が訴えていることです。

 自分にはこんな「思い込み」などない、という声が聞こえてきそうです。本当でしょうか。

 感染はさらに拡大する。緊急事態宣言は想像以上に長く続く。仕事も外出もできない日々に、これ以上耐えられそうもない。

 こんな気持ちになることがあるはずです。これは、「過大視」「単純化」「焦り」といった本能が働いているからでしょう。

 この本はハンス・ロスリングさんの言葉をまとめたものです。スウェーデン生まれ。大学で医学とともに統計学を学んだユニークな経歴の医師です。

 世界保健機関(WHO)や国連児童基金(ユニセフ)で保健アドバイザーとして働いたこともあります。

 2014年には感染症であるエボラ出血熱の患者を治療するため、実際に西アフリカの国に滞在しました。この病気にかかった患者は、全身から血を流して路上で死んでいきました。

 ところが現地では、病気に関する正確な数字がありませんでした。エボラ以外の患者まで「感染の疑い」に含まれ、数がどんどん増えていったそうです。

◆エボラと闘った経験

 ロスリングさんは、診療所で行われた血液検査の結果をグラフにしました。その結果、本当の患者数は減少していることに気が付きました。それまでの対策が正しいことを確信できたそうです。

 この経験から、正確なデータの重要性を実感し、「ファクトフルネス」を書く動機になりました。

 同じ感染症である新型コロナウイルスは、まだ正体がよく分かっていません。

 このため、怪しいうわさや、偽のものを含む情報(インフォメーション)が飛び交っています。この現象はエピデミック(感染症の流行)になぞらえて、インフォデミックと呼ばれています。

 例えば、次世代通信規格の「5G」の電波にさらされると新型コロナウイルスに感染しやすくなる。十秒以上息を止めても、不快感やせきが出なければ、感染していない証拠だ…。

 WHOはホームページで、いずれも誤った情報だと説明。ウイルスから身を守るのに最も有効なのは、頻繁かつ念入りに手洗いすることだと勧めています。

 トランプ米大統領が新型コロナウイルスの治療法として「消毒液の体内注射」を突然提案し、大混乱を招いたこともありました。

 PCR検査で判明した感染者の数は鈍化傾向を見せていますが、数よりも「陽性率」の方が重要だと指摘する専門家もいます。

 これは、検査件数に対する陽性者の割合を示します。

 東京の場合、陽性率は約4割にもなります。疑いのある人を中心に検査しているからです。

 効果的な対策のため、検査数をもっと増やし、正確な陽性率を把握すべきだとの声も出ています。

 論議は続いていますが、データを多角的に分析することの大切さを示す例でしょう。

 最後に「ファクトフルネス」から、人間の本能を一つ挙げましょう。「犯人捜し」です。

 物事がうまくいかないと誰かが仕組んだと考え、その人を特定して責めたくなるものです。

◆責めても解決しない

 しかしロスリングさんは、「何の解決にもならない」と断言しています。誰かを批判するだけでは、他の原因に目が向かなくなり、再び同じ間違いをしてしまうから、だそうです。

 「その状況を生み出した複数の原因やシステムを理解することこそ重要だ」と強調しています。

 ロスリングさんは17年に、惜しまれながら他界しました。

 この本の中で、今後心配すべき地球規模のリスクとして、金融危機や地球温暖化、極度の貧困、そして「感染症の世界的流行」を挙げ、処方箋も残しました。

 「危機が迫った時、最初にやることはオオカミが来たと叫ぶことではなく、データを整理することだ」と。

 心に留めておきたい言葉です。



二度とない日々を(2020年4月29日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 <涙は心の汗だ たっぷり流してみようよ 二度と戻らない今日のために>。「帰らざる日のために」。学園テレビドラマの「われら青春!」の主題歌だったか

▼テレビっ子の記憶がよみがえる。前作の「飛び出せ!青春」の主題歌は「太陽がくれた季節」。<青春は太陽がくれた季節><燃やそうよ 二度とない日々を>。いずれも青春時代は一度しかなく、喜びも悲しみも存分に味わってという内容だろう

▼このまま今の高校生からそんな日々は奪われるのか。新型コロナウイルスの感染拡大対策で休校が続く。さらに長引き、二度とない「太陽がくれた季節」が外出自粛とマスクの季節で終わるとすれば、たまらないだろう

▼高校生の間から入学・新学期スタートの時期を9月に変更すべきだとの声が上がる。世界的には9月入学の方が一般的でこれに合わせるべきだとの意見は以前からあったが、高校生の気持ちからすれば、このままでは失いかねない大切な1年間を9月スタートによってまるまる取り返したいということなのだろう

▼安倍首相は「選択肢の一つ」と答弁しているが、明治から続く、4月入学の伝統である。導入となれば、教育機関のみならず就職など社会全体の見直しも必要な大改革となる

▼議論を急がなければならないが、9月まで時間は少ない。間に合うか。なにせ、マスク2枚さえいまだに届かない。



いい一日だったかどうか(2020年4月29日配信『中日新聞』-「中日春秋」)

いい一日だったかどうか。笑顔は指標らしい。喜劇王チャプリンが語ったと伝わる言葉がある。<笑いのない日は、無駄な一日だ>。18世紀のフランスで多くの格言を残した批評家のシャンフォールも書いた。<すべての日々の中でもっとも無駄な日とは、笑わなかった一日である>

▼さてどう笑おう、近くにいるだれかをどう笑わせよう。いい日々のために悩んでいる方もいらっしゃるだろう。笑顔がもらえるはずの場所が、軒並み扉を閉ざすなか、迎えた大型連休である

▼「文化、芸術は“不要”ではありません」。先日、読者の方からいただいた手紙にそんな言葉があって、うなずいた。落語や芝居を楽しみにしているという手紙の女性は落語会や劇場で会う多くの高齢の人たちを思いつつ、文化や芸術の力こそが必要なのですと書き、元に戻れる日が早くくるように、と願いをつづられていた

▼笑いの発信地となる寄席も、いいものを見たと共感の笑顔と笑顔がうなずきあう劇場も、いい一日のためには欠かせないものであろう

▼一方では映画館をふくめ小劇場などの苦境が報じられている。経済的に耐えられないという声も聞く。さあまた出番となるときはいずれくるが、それまで持たないような事態にしてはならない

▼欧州には公的支援が手厚い国もあるという。いい日々が戻ってくるために、なんとかならないものか。



全国知事会 住民目線で国政に注文を(2020年4月29日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 国の対策が後手に回る中、現場に近いところで指揮を執る知事の役割が重要性を増している。

 全国知事会が新型コロナウイルス対策に関する国政への提言を議論した。

 噴出する課題は医療、福祉、教育などあらゆる場面に及ぶ。地域における感染防止の課題や暮らしへの影響を国が把握し切れない状態は、今後も続くだろう。

 各知事は国政に対し、住民の目線で具体的な提案を重ねていかねばならない。全国知事会は、その先頭に立ってもらいたい。

 今回焦点になった一つは、緊急事態宣言を全国一律に延長するかどうかだ。一部の地域で解除すると、他の地域から人が移動して感染を広げる恐れがある。

 ただ、感染状況は都道府県によって開きがある。延長に伴う財政負担への懸念から否定的な知事もおり、温度差が目立った。

 一律延長の検討を国に求める方針を確認したものの、今後は、財政力の違いも踏まえどんな提言を示せるかが課題となりそうだ。

 知事会はこれまで、医療や検査の体制整備を国に求めてきた。既に独自の取り組みを進めている都道府県も多い。それぞれの経験を基に、有効な対策を共有する取り組みも重要になってくる。

 気になるのは、強権的な姿勢が目立ち始めた点だ。新型コロナ特措法に基づく休業要請に応じない事業者に罰則を設けるよう、法改正を求める声が出ている。

 支援策が不十分なまま、従わないのが悪い、と決め付ける雰囲気を社会に醸成するような対応が良い方向に向かうとは思えない。

 やむにやまれず営業する事業者がいれば、その声に耳を傾け、実効性ある対策を探っていくのが知事の役割ではないか。私権の制限には慎重であるべきだ。

 ここにきて知事の間で急速に盛り上がってきたのが、小中高校や大学の休校長期化を受けた9月入学制の導入論議である。

 長野県を含む17県の知事でつくる「日本創世のための将来世代応援知事同盟」などで賛成が相次いだ。休校する地域とそうでない地域で学力差が生じる懸念があり、この機に9月入学の欧米に合わせるべきだとの意見がある。

 一方、社会的な影響の大きさを考えて慎重な意見もある。

 一石を投じた意義はある。重要なのは現場に即して考える視点だろう。学校や家庭は子どもたちの学習機会を保障しようと努力を続けている。飛び越えて議論が進むことがあってはならない。



コロナ便乗商法 不安に付け入らせない(2020年4月29日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大とともに、各地の消費者相談窓口に悪質商法に関する相談が増えてきた。消費者庁や自治体が注意を呼び掛けている。

 国民に一律10万円を配る特別定額給付金の申請受け付けが、長野県内でもあすから始まる。国や自治体の緊急経済支援策に便乗した商法による金銭トラブル、特殊詐欺被害の増加が懸念される。

 感染や暮らしへの不安が広がっている上に、外出自粛で在宅する人が多く、被害につながりやすいとの見方もある。被害を増やさないための対策が急務だ。

 「マスクがインターネットで買える」という広告を見て注文したが不審なのでキャンセルしたい。保健所の依頼と名乗る人物が家に来て新型コロナが検査できる商品を安く売ると言われた―。

 国民生活センターに集まった全国各地の相談事例だ。息子を名乗る男からの電話で「会社の上司から新型コロナで困っているので金を返してほしいと頼まれた」と言われ、現金を渡してしまったという内容もあった。

 定額給付金の代理申請を委託されている団体を名乗る電話で口座番号などを聞かれた例もある。

 長野県内でも、注文した覚えのない使い捨てマスクが自宅に何十枚も送られてきたという相談が4月半ば以降、警察署などに相次いでいる。後で代金を請求する送り付け商法だとすれば、不安に付け入る悪質な手口だ。

 不審な物が届いた場合、2週間を過ぎて業者が引き取らなければ処分して構わない。定額給付金についても、窓口の市町村が住民に個人情報を問い合わせるようなことは一切ない。消費者庁や自治体はこうした情報をウェブサイトに掲示し注意を促している。

 いきなり物が届き、勧誘の電話やメールが来れば確かに不安だ。一般の人はどう対処すればよいのか戸惑うだろう。仕組みを分かりやすく周知し、相談窓口にすぐ連絡できる態勢も工夫したい。

 生計に不安を覚え、お金や物が不足して困れば警戒心も薄れがちになる。高齢者に多い特殊詐欺の被害が若い世代にも広がりかねない。状況は切迫している。

 身に覚えのない品物やメールが届いても慌てない、個人情報を聞き出す電話には応じない、金を無心する電話はまず疑う。被害を防ぐための基本を確認したい。

 親族間や知人同士の日常的な情報交換も大切だ。不安に付け入らせない手だてを地域や家族ぐるみで備えておきたい。



スーパー混雑対策 自粛効果を下げぬために(2020年4月29日配信『北国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛要請の影響でスーパーや商店街の混雑ぶりが目立ち始めたのを受け、石川県は関係企業や団体へ文書を通知し、対策を打つよう求めた。生活必需品を扱い休業要請の対象になっていないスーパーなどに人が集中するのは巣ごもり需要に加え、外出先が減って数少ない息抜きの機会になっている面もあるのだろう。

 だが、大勢の人が同一スペースに集まる状態はウイルスの感染リスクが高まり、できる限り避けなければならない。自治体が緊急事態宣言を発出し、休業要請や在宅勤務などを求めているのは人との接触8割削減を目指すための手段である。これを受けて自宅にとどまり、なるべく家族以外の人と会わないよう我慢して努めている一方で、混雑した店に出向き密集、密接の環境に身を置いては元も子もない。外出自粛の効果が下がってしまう。混雑するスーパーや商店側は回避策を速やかに実施し、消費者側は混まない時間帯に少人数で済ますことを心掛けたい。

 北陸のスーパーでは、店頭に消毒液を備えたり、間隔をあけてレジ待ちするよう床に立ち位置の印を施したりして感染防止策に取り組んでいる。中には客が集中しやすい特売日をやめ、ポイント付与率を平準化するスーパーもでてきた。各企業が知恵を出し合い、混雑解消策をもう一歩踏み込んで講じてほしい。例えば、ホームページなどで店の混み具合が分かる情報が開示できないだろうか。折り込みチラシは事前に購入品を決める参考になるため買い物時間の短縮につながるとの声もあり、有効に活用できるよう工夫したい。

 東京や大阪などでは高齢者や身体障害者、妊婦を対象に優先時間帯を設けるところもある。閉店時間を早める店もみられるが、混雑する店は逆効果でないか。それより営業時間を延長し、臨時措置とはいえ、アルバイトやパート先がなくなり生活に窮する人たちを雇えないか。多くの企業が休業を強いられ、経営難が深刻化する中で、地域貢献に取り組む店の真摯な姿勢は地元から得る信頼をより高めることになるだろう。



日銀追加緩和/「禁じ手」と認識した上で(2020年4月29日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大による経済の落ち込みに対応し、日銀が追加金融緩和策を決めた。

 国債買い入れ枠の上限を撤廃し、企業が発行する社債の購入枠も拡大する。金融機関への支援も強化する。資金需要の急増による金利上昇を抑え込むとともに、民間企業の資金繰りを支える狙いがある。

 コロナ禍による中小企業の破綻は100社に達した。政府の支援策は手続きなどに時間を要し、資金繰りに窮した企業は金融機関が支えるしかない。それだけ見れば、中央銀行として必要な危機対応といえる。

 国民1人当たり10万円の支給などを盛り込んだ政府の2020年度補正予算案は、総額25・7兆円の9割を赤字国債の発行で賄う。今回の緩和策により、政府は今後も日銀の国債買い入れをあてにして追加施策を講じることが可能になる。

 ただ政府の資金繰りを中央銀行が支える形は本来、禁じ手であることを忘れてはならない。

 金融緩和の長期化で日銀はすでに国債発行残高の半数近くを抱え込む。さらに増えれば金利上昇時に含み損が膨れ上がるリスクもある。日銀の経営の健全性が損なわれ、円の価値にも響きかねない。

 今回はあくまで緊急策であり、恒常化すべきではない。そのことを認識した上で、日銀は資金繰り支援に全力を注がねばならない。

 追加金融緩和により、世の中に出回るお金の量は大幅に増える。そうなれば物価が上がり、連動して景気も良くなる。それがこれまでの日銀の政策理念だった。安倍政権の経済政策とも合致していた。

 日銀はコロナ禍により20年度の日本経済が大幅なマイナス成長に陥り、物価が下落すると予測する。しかし経済活動が収縮する中でお金の量が増えれば、投機資金として商品市場に流れ込み、賃金が上がらないのに物価を押し上げる可能性も否めない。そうなれば、国民は感染拡大と二重の痛みを強いられる。

 追加緩和が資金繰り支援に十分な効果を上げているか。実体経済に予期せぬ副作用をもたらしていないか。こうした点に注視して、日銀は適切な金融政策を打つ必要がある。

 黒田総裁は13年の就任以来、2%の物価上昇目標を掲げてきた。しかしいまだ達成はかなわず、任期を迎える23年4月までの実現は難しくなっている。

 1920年代の世界恐慌に匹敵する景気低迷も予測される中で、2%目標達成の可否にどれだけの意味があるだろう。それよりも金融面から経済の底割れを回避することを、任期終盤の最大の使命ととらえてもらいたい。



日銀の金融緩和 有効な支援で危機しのげ(2020年4月29日配信『山陽新聞』-「社説」)

 日銀は金融政策決定会合を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて国債の無制限購入などを軸とする追加金融緩和策を決めた。3月の会合に続く2回連続の追加緩和措置で、経済活動の停滞が長期化することへの強い危機感の表れと言えよう。

 世界に広がるコロナ禍が、日々の生活や経済活動に深刻な影を落とす。内外需とも大きな打撃を受け、企業倒産も相次いでいる。政府が発表した4月の月例経済報告は、国内の景気判断を3月の「大幅に下押しされ厳しい状況」から「急速な悪化で、極めて厳しい状況」に引き下げた。

 終息の見通せないコロナ危機をしのぐ有効な支援策が欠かせない。こうした中で日銀が打ち出した今回の金融緩和策の柱の一つが、企業の資金繰り支援の強化だ。

 具体的には、大企業などが発行する社債やコマーシャルペーパー(CP)の購入枠を、従来の計7兆4千億円から計約20兆円へと大幅に引き上げる。中小企業の資金繰り支援のため、金融機関への新たな資金供給策を検討する方針も表明した。地方の企業にネットワークを持つ地方銀行や信用金庫などは積極的に活用して、地域経済を守ってもらいたい。

 日銀が積極的な支援に打って出たのは大量の企業倒産や失業者が相次げば、新型コロナの感染が終息した後も経済のV字回復は難しいとの判断からだ。急速に悪化する事業環境の中で不安を抱え、手元資金の確保に躍起の企業には朗報と言える。

 金融緩和策のもう一つの柱が、国債の買い入れ枠の撤廃である。国債が値下がりすると金利が上昇して経済にブレーキがかかるため、日銀が国債を買って金利上昇の抑制を図っている。今回の措置は「年80兆円をめど」としてきた買い入れの上限をなくし、市場に潤沢な資金を低い金利で供給するのが狙いだ。

 現在の国債購入額は、年80兆円を大きく下回っている。今回の日銀が打ち出した措置は、政府の経済対策に活用されなければ意味はない。二の矢、三の矢の準備を急がなければならない。

 日銀による積極的な国債買い入れは、危うさもはらんでいる。国の借金を事実上肩代わりする“禁じ手”の「財政ファイナンス」と市場に受け止められかねない。さらに景気が悪化する局面で社債などを購入すれば、企業倒産で損失を負うリスクも抱え込む。日銀には、中央銀行としての信認維持への目配りも求められる。

 財政規律の緩みを招く危険性が拭えないとはいえ、直面する最重要課題は新型コロナの終息と、厳しい状況に置かれている暮らしや経済活動などへの支援である。非常事態の中では巨額の赤字国債の発行は避けられないが、経済を守り、再生する対策に政府と日銀が一体で取り組んでもらいたい。



≪新型コロナ≫困窮する学生 国と大学は支援策急げ(2020年4月29日配信『中国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、大学生や専門学校生が苦境にあえいでいる。仕送りを受ける親の収入が減ったり、アルバイト先の休業で収入が途絶えたり…。学費や家賃が払えない状況に陥っている。

 このまま休業や外出自粛による経済活動の停滞が長引けば、学業を諦める学生が続出しかねず、看過できない。

 大学生や専門学校生の2割が退学を検討している―。きのうまとまった学生団体の調査で浮かび上がった。1週間前に比べ倍以上になっている。しかも回答した約1200人のうち、2人は既に退学を決めたという。事態は深刻さを増していると言わざるを得ない。

 この調査では、親など家計を支える人の収入が「減少」「ゼロ」になった学生が半数を占めた。バイト代の「減少」「ゼロ」は合わせて7割近くに上った。長期化すればさらに困窮する学生が増えるのではないか。

 コロナ禍の前から、バイト収入への依存度が高まる傾向があった。親からの仕送りは伸び悩み、返済の不安から奨学金の借り入れをためらっていることが背景にあるようだ。

 全国大学生協連の昨年秋の調査では、下宿生の月平均バイト代は過去最高の3万3600円だった。収入全体の4分の1を占め、こちらも過去最高だった。そのバイト代が失われたのである。ショックと先行き不安は相当だろう。

 大学も手をこまねいているわけではない。広島大は困窮した学生に1人当たり月3万円を返済不要で支給する方針だ。帰国できず収入源のバイト先が相次ぎ休業し、窮状を訴える外国人留学生の要望に応えた。

 広島修道大は学部生全員に1人8万円、大学院生には4万円を給付する。広島工業大も全学生に5万円を支給する。両大学とも、パソコンなど端末を使ったオンライン授業の費用に充ててもらうという。

 全国でも早稲田大が困窮学生への1人10万円給付など総額5億円の緊急支援策をまとめた。

 学生たちも声を上げ始めた。授業料の減額を求めている。関東の学生が取り組み始め、約100校の学生が参加している。

 休校中でキャンパス立ち入りが禁止されているなら、施設費や設備費の支払いが必要か、疑問に思うのも無理はなかろう。大学は学生の声に真剣に向き合わなければならない。

 文部科学省によると、全国ほぼ全ての大学に前期授業料の納付を猶予する制度が設けられたという。だが今、必要なのは猶予ではなく、免除ではないか。

 国は授業料補填(ほてん)について「現段階で考えていない」と消極的だ。これでは困窮学生の救済は難しかろう。そもそも日本は国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合が先進国で最低レベルだ。教育の機会均等を進めるため国がすべきことは多いはずだ。

 立憲民主党など野党4党はきのう、学生を支援する法案を作成する方針で一致した。学費の減免と生活援助を柱に作業を始めるという。与党や政府にも協力が求められる。

 学生が退学に追い込まれないよう大学はあらゆる手だてを講じる必要がある。給付型奨学金の一層の対象拡大など国もさらなる支援策拡充が急がれる。 



≪新型コロナ≫困窮する学生 国と大学は支援策急げ(2020年4月29日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、大学生や専門学校生が苦境にあえいでいる。仕送りを受ける親の収入が減ったり、アルバイト先の休業で収入が途絶えたり…。学費や家賃が払えない状況に陥っている。

 このまま休業や外出自粛による経済活動の停滞が長引けば、学業を諦める学生が続出しかねず、看過できない。

 大学生や専門学校生の2割が退学を検討している―。きのうまとまった学生団体の調査で浮かび上がった。1週間前に比べ倍以上になっている。しかも回答した約1200人のうち、2人は既に退学を決めたという。事態は深刻さを増していると言わざるを得ない。

 この調査では、親など家計を支える人の収入が「減少」「ゼロ」になった学生が半数を占めた。バイト代の「減少」「ゼロ」は合わせて7割近くに上った。長期化すればさらに困窮する学生が増えるのではないか。

 コロナ禍の前から、バイト収入への依存度が高まる傾向があった。親からの仕送りは伸び悩み、返済の不安から奨学金の借り入れをためらっていることが背景にあるようだ。

 全国大学生協連の昨年秋の調査では、下宿生の月平均バイト代は過去最高の3万3600円だった。収入全体の4分の1を占め、こちらも過去最高だった。そのバイト代が失われたのである。ショックと先行き不安は相当だろう。

 大学も手をこまねいているわけではない。広島大は困窮した学生に1人当たり月3万円を返済不要で支給する方針だ。帰国できず収入源のバイト先が相次ぎ休業し、窮状を訴える外国人留学生の要望に応えた。

 広島修道大は学部生全員に1人8万円、大学院生には4万円を給付する。広島工業大も全学生に5万円を支給する。両大学とも、パソコンなど端末を使ったオンライン授業の費用に充ててもらうという。

 全国でも早稲田大が困窮学生への1人10万円給付など総額5億円の緊急支援策をまとめた。

 学生たちも声を上げ始めた。授業料の減額を求めている。関東の学生が取り組み始め、約100校の学生が参加している。

 休校中でキャンパス立ち入りが禁止されているなら、施設費や設備費の支払いが必要か、疑問に思うのも無理はなかろう。大学は学生の声に真剣に向き合わなければならない。

 文部科学省によると、全国ほぼ全ての大学に前期授業料の納付を猶予する制度が設けられたという。だが今、必要なのは猶予ではなく、免除ではないか。

 国は授業料補填(ほてん)について「現段階で考えていない」と消極的だ。これでは困窮学生の救済は難しかろう。そもそも日本は国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合が先進国で最低レベルだ。教育の機会均等を進めるため国がすべきことは多いはずだ。

 立憲民主党など野党4党はきのう、学生を支援する法案を作成する方針で一致した。学費の減免と生活援助を柱に作業を始めるという。与党や政府にも協力が求められる。

 学生が退学に追い込まれないよう大学はあらゆる手だてを講じる必要がある。給付型奨学金の一層の対象拡大など国もさらなる支援策拡充が急がれる。 



【「コロナうつ」】相談窓口の設置を早急に(2020年4月29日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、憂鬱(ゆううつ)な気分が続いたり、不安、焦りといったうつ病の症状を訴えたりする人が増えている。いわゆる「コロナうつ」である。

 これまで普通の生活を営んできた市民から、「外に出るのが怖い」「息苦しい」「眠れない」などの症状の訴えが、東京や大阪など都市部で急増している。高知県など地方も例外ではない。

 このような症例は、阪神大震災、東日本大震災などでも起きた。仮設住宅で引きこもりになったり、仕事を失ったりした結果、憂鬱が高じてうつ病と診断され、症状が悪化した人も少なくない。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、この大型連休は全都道府県に緊急事態宣言が発令中だ。自治体による外出自粛や休業の要請で、国民の大半が身動きできない状態は、うつ病の入り口になりやすい。

 感染者の拡大を封じ込めると同時に、いま大切なことは、うつ病のリスクが小さいうちに、相談体制を万全にし、支援の仕組みを充実させることだろう。

 普段、健康に過ごしている人でも、家に長時間、閉じこもっていればストレスがたまるはずだ。さらに失業や収入減で生活不安が高まれば、心はむしばまれてゆく。

 アルコールなどの依存症になる人も増える。心の病は家族の絆にもひびを入れ、イライラが爆発し、ドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待も引き起こしかねない。

 そうなる前の予防措置として、有効なのが相談体制の充実だ。

「心の相談」を巡っては現在でも各自治体や民間の診療所などが、電話相談も含めて受け付けている。ただDVや虐待など、窓口が分散し、どこに相談したらいいのか分からないという人も多い。

 自分自身でコロナうつを疑っても確信が持てず、相談をためらう人もいよう。早めに、気軽に相談できるよう、自治体に一本化した総合窓口を設けてはどうか。

 その場合、縦割り行政の弊害で相談がたらい回しにならないように注意したい。県内の精神科の医師や心理カウンセラーら専門家のネットワークをつくり、迅速に相談者とつなぐ仕組みも必要だ。

 高知県ではこれまでコロナ禍対応に手いっぱいで、メンタルヘルスの分野は感染者やその家族らが中心だったが、近く県立精神保健福祉センターを中心に、一般への総合窓口を設ける方針という。今後「うつの問題」が県全体で起こり得るという認識からだ。

 大型連休後もウイルスとの闘いは長期戦が予想される。県民は家族や知人も含め、誰 うつ病は症状が悪化すると、最悪の場合、自殺に至る病気だ。景気の悪化に比例して働き盛りの自殺が増えることや、長期休暇明けには子どもの自殺が多いことなどが統計上、明らかになっている。

かに相談することで少しでも心に余裕を持ちたい。



「おまち」の声(2020年4月29日配信『高知新聞』-「小社会」)

 「コロナでコロリよ」「うちも5日前から店閉めとる」。大型連休本番のきのう、人影もまばらな高知市の帯屋町商店街で、そんな会話が聞こえてきた。飲食店関係のお二人とお見受けした。
 
 街を歩くと「夜の営業は当分、見合わせます」「テークアウトのみの営業となります」。そんな張り紙が目立つ。こんな「おまち」の光景は見たことがない。教訓として目に焼き付けておかなければなるまい。
 
 例年、この季節の小社周辺といえば、まず「ひろめ市場」近くの駐車場へ県外ナンバーの車が列をなす。長い商店街は人波でごった返し、高知城の天守閣は観光客で鈴なりだ。その景色が、あっという間に「蒸発」したことに驚く。
 
 城下町の高知市はいまや県人口の4割以上を抱える。その真骨頂は県都として人々が集うおまち。言い換えれば商店街のにぎわいと、冒頭の飲食店主らが支える「お客」の文化に支えられているのではないだろうか。
 
 作家で食通でも知られる獅子文六に、戦後の食事情を書いた一文がある。「政府や政治家や評論家や学者がいろいろのことをいっているが、私は豆腐屋とそば屋が市中に現れる時が、日本の復興のメドになると、心ひそかに考えている」(「続・飲み食い書く」)。
 階級の上下など関係なく、庶民の食を支える中小や個人の事業者を指す。いま資金繰りにも切羽詰まっている彼らの切実な声は、政府に届いているか。



新型コロナ関連融資(2020年4月29日配信『佐賀新聞』-「論説」)

十分な周知で有効活用を

 新型コロナウイルスで影響を受けた小規模事業者や中小企業を対象にした金融支援制度の申請が日を追うごとに急増している。飲食店や旅館・宿泊業をはじめ、小売や製造、建設業など申請者は幅広い業種に及ぶ。ただ、利用者側には「制度が分かりにくい」との声があるのに加え、鳥栖商工会議所が今月半ばに開いた行政や金融機関との意見交換会では、事業者の情報源でもある金融機関が全ての取引先を回りきれていない実態も報告された。事業者への支援が喫緊の課題となる中、制度を広く周知し、有効な活用を図っていくことが重要だ。

 鳥栖商工会議所が4月に入って管内の事業所230件を回って実態調査をしたところ、飲食店や美容室などのサービス業のうち、消費者の自粛の影響を受けている事業所は8割に上った。3月の売り上げは前年同月に比べて20~30%減少したとする回答が多かったが、4月は50~80%減少という事業所が多くなり、時間の経過とともに経営の厳しさは増している。

 金融支援のうち、新型コロナの影響で経営に支障が出た中小企業を支援するため、通常の保証限度額とは別枠で保証する「セーフティネット保証」などの利用は、佐賀市で701件(4月23日現在)に上る。鳥栖市は190件(同24日現在)で、このうち104件が最近2週間に集中するなど、4月に入って急増しているという。

 その一方、現場の金融機関は窓口に訪れる融資相談などの業務に追われている。意見交換会では「取引先のまだ半数程度の案内しかできていない」「もっと周知していかなければならないが、マンパワーが足りない」といった報告が多く聞かれ、周知が思うように進まない実態もうかがわれた。

 また、本店が福岡県内にある銀行は、7日の政府の緊急事態宣言を受け、県内よりも先に時差出勤やテレワークを行い、外回りの職員を減らしていると報告した。県内の金融機関は既に残業を増やし、休日を返上して業務に当たっているが、佐賀も緊急事態宣言の対象地域になり、さらに限られた人員での対応を余儀なくされているだろう。「制度を知らなかった、分からなかった」という事業者が出ないよう、内部連携や関係機関との協力に一層知恵を絞ってもらいたい。

 セーフティネット保証は、最近の売上高が一定割合減少しているなどの利用条件があり、本店所在地の市町による認定が必要になる。ただ、市町の認定も即日のところと数日かかるところがあり、金融機関からはスピードアップを求める声も上がる。鳥栖市の場合、申請増で3日ほど待たせる状況になったため担当者を増やし、翌営業日に出せる態勢に改善したという。申請者は資金繰りがひっ迫しており、市町も対応の迅速化を図って制度の効果を高めてほしい。

 金融支援制度は次々に新たなものが打ち出され、実際の利用者からは「毎日情報が変わる」という戸惑いも聞かれる。そんな状況を受け、鳥栖市などは、新型コロナ関連のあらゆる相談を受け付ける相談窓口を設置し、担当課につなげる取り組みも始めている。事業者の経営状況は深刻化しており、活用しやすく、迅速な融資が受けられる環境づくりに向け、関係者の努力や知恵が求められる。



コロナと雇用悪化 非正規守る支援が必要だ(2020年4月29日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響が鮮明になってきた。28日に発表された3月の有効求人倍率は1・39倍。前月より0・06ポイント下がり、3年半ぶりの低水準だった。完全失業率は0・1ポイント上昇の2・5%で、2カ月ぶりに悪化した。

 4月には政府が緊急事態宣言を出し、各都道府県が外出や営業の自粛を求めたことで、消費や生産に一層ブレーキがかかった。失業者は年内に100万人以上増えるとの予測もある。そうした事態に陥らないよう、政府は雇用維持に全力を挙げるべきだ。

 3月の新規求人は前年同月比12・1%減。業種別では、製造業が22・8%減、宿泊・飲食サービス業が19・9%減だった。2008年9月のリーマン・ショック時は製造業を中心に雇い止めが発生したが、サービス業で一部を吸収することができた。ともに落ち込む今回の方が、より深刻と言える。

 こうした状況で真っ先にしわ寄せを受けるのは、契約社員やパートといった非正規雇用で働く人たちだ。安易な解雇は正規、非正規にかかわらず許されるものではないが、社会的、経済的に、より弱い立場にある非正規を守るという視点に立つ必要があろう。

 政府は、業績が悪化した企業が従業員を解雇せずに休ませた場合、休業手当の一部を国が負担する「雇用調整助成金」を4~6月に限定して拡充し、非正規も対象に加えた。助成率も引き上げる。臨時休校で従業員に特別な有給休暇を取得させた企業向けに、新たな助成金も設けた。

 しかし、実効性には疑問の声が出ている。窓口の対応が遅く、支給まで時間がかかっている。国の助成額に上限があり、超過分の負担を嫌って解雇するケースも生じているという。雇用維持につながらないようでは意味がない。運用面を含めた見直しが必要だろう。

 厚生労働省によると、新型コロナ禍絡みで解雇や雇い止めに遭った人は、27日時点で見込みも含め3391人。2カ月前の20倍以上に増えた。ただ、これらは各地の労働局やハローワークからの報告を基にした数字で、「氷山の一角」とみられる。

 リーマン・ショックの際、職や住まいを失った非正規労働者が東京・日比谷公園に開設された「年越し派遣村」に、支援を求めて殺到した。同じことが再び起きるのでは、という危機感が支援の現場にはある。

 北九州市の認定NPO法人「抱樸[ほうぼく]」は、新型コロナで生活に困窮した人の支援に充てる寄付を募るクラウドファンディングを始めた。奥田知志理事長は「『ステイホーム』と言われる中で、ホームを失いつつある人がいる。全力で支えたい」と訴える。

 こうした最前線の声に、政府は耳を傾けるべきだ。家賃補助や持続化給付金、小口融資などの支援を総動員し、企業に雇用維持を根気強く促す必要がある。企業側も全ての従業員とともに難局を乗り切る道を探ってほしい。



心を寄せ合いたい(2020年4月29日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 仕事と巣ごもりの合間を縫って、実家の老母に食料を届けた。車で十数分の道すがら、家々の生け垣ではツツジが見事に咲き誇っていた。美しさがことさら心に染みるのは、窮屈で不安な日々が続いているからか

▼帰りの車窓から見た夜の熊本城天守閣にも目を奪われた。コロナ禍と闘う医療従事者に感謝の気持ちを伝える青色のライトアップ。同様の取り組みは、熊本市内の大型商業施設などでも続いている

▼とはいえ、休日返上で最前線に立ち続けている医療従事者の方々には、ツツジや夜景を楽しむ余裕などないのかも。相談窓口で対応に追われる保健師や看護師、介護や保育など福祉施設の職員、生活必需品を販売するスーパーの従業員、物流の担い手もそうだろう

▼終息が見通せない中で繰り返される外出自粛要請を「あなたたちは働き続けて、ということか」と複雑な思いで受け止めている方もおられるはずだ。社会はそうした人々の支えによって辛うじて維持されている。巣ごもりしている側も現実を直視し、心を寄せ合いたい

▼どれほどストレスがあっても、懸命に働いている人々に八つ当たりしたり、不用意な言動で傷つけたりしてよいはずがない。敬意と感謝を形にするのにふさわしい行動は、やはり不要不急の外出を控えて感染の拡大を防ぐ、ということになろうか

▼休校続きで家にいる子どもたちにも、今の社会を支えているのは誰なのか伝えよう。いつか来る災厄の終わりが、思いやりに満ちた未来をつくる始まりとなるように。



日銀のコロナ経済対策(2020年4月29日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆政府の放漫財政進む恐れも◆

 日銀は、新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化に対応するため、国債買い入れの上限額を撤廃して長期金利を抑制しやすくする追加の金融緩和策を決定した。中小をはじめとした企業への資金繰り支援の強化も併せて決めた。

 コロナ危機に伴う経済対策で政府の大規模な財政出動が見込まれる一方、その財源は借金である国債発行で賄わざるを得ない。大量発行で長期金利が上昇(国債価格は下落)すれば景気に悪影響となるため、それを防ぐ狙いが込められている。

 金融安定へ同様の大胆な緩和策を米欧の中央銀行が打ち出しており、日銀の決定は妥当と言える。政府が4月の月例経済報告で約11年ぶりに景気を「悪化」と表現するなど、事態の深刻化が予想されるからだ。

 日銀は国債購入のめどを年80兆円としていた。ただ、長期金利を0%程度に維持する方針により、購入額がめどを大幅に下回っている。このため上限撤廃は「日銀による緩和姿勢のアピール」とも受け止められる。

 問題は、コロナ危機後にどのように無制限の国債買い入れを正常化していくかである。

 黒田東彦総裁の下、日銀はデフレ脱却を旗印に大規模な金融緩和を実施。その中核をなしてきたのが国債の大量購入による資金供給と金利押し下げだ。8年目に入ったこの緩和策にはさまざまな負の作用があるが、深刻なのは借金に対する政府の抵抗感が薄れ、財政規律が大きく損なわれてしまった点だ。

 国債の発行残高は2019年末で約987兆円。金融緩和による国債購入の結果、日銀が約481兆円と半分近くを保有するのだから緩みが生じて当然である。今回の決定が政府の放漫財政に拍車を掛ける恐れがある一方で、将来の購入縮小には強い抵抗が予想される。それを防ぐために日銀は正常化の道筋をしっかりと示す必要がある。

 一方、資金繰り支援では、企業が発行する社債やコマーシャルペーパー(CP)の購入枠を20兆円へ大幅に増やした。緊急事態宣言の全国への拡大で景気は強い下押し圧力を受けており、大企業といえども資金繰りに危機感をおぼえる現状だ。日銀が社債やCPを積極的に購入することで企業の資金調達をしやすくし、倒産や失業を抑えることを目指している。

 日銀は四半期に1度の経済と物価についての展望を公表。物価では、事実上、黒田総裁の任期最終年度となる22年度について0・4~1・0%上昇の見通しを初めて示した。掲げた物価目標2%を2期10年でも達成できない形であり、この間の金融政策の妥当性が改めて検証されなければならない。



疑惑とコロナ 会期延長もろ刃の剣(2020年4月30日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★29日、昭和の日で祝日ながら国会は補正予算審議のため衆院予算委員会を開き質疑を行った。注目すべきは国民民主党代表・玉木雄一郎の質問だ。財務官僚出身の玉木は手続きの仕組みを熟知し運用の改善策や税法上の取り扱い、予算枠の拡大など多岐にわたり補正予算の在り方とスピード運用への知恵を出しながら、政府与党の取り組みに協力するとエールを送りながら建設的な意見を述べた。

★また、日本維新の会を含む野党5党でまとめて共同提出した「事業者家賃支払い支援法案」などを例に閣僚との議論というよりも、国民民主党の政策案を述べたようにも聞こえるが、今は使える知恵を出し合うときとするなら、玉木は政府与党にも影響を与えたであろう。共産党委員長・志位和夫も質問に立ち、「日本の補償は世界に誇る休業補償なのか」とただすと首相・安倍晋三は「手厚さ」を自慢したが、志位から「1回こっきりではないか」と切り返された。結果、補正予算案は全会一致で可決された。

★自民党は6月17日までの国会会期の延長を模索し始めた。政府は、このまま国民にいくら払い続けていけばいいのかと不安だろうが、予定通りに国会を閉じたら新たな補正予算や措置法は審議できない。国会は閉じてはいけないのだ。会期幅などの詳細はこれからだろうが、今後の財政出動など考えれば、政府と国会には覚悟が必要だろう。ただ、アベノマスク転じてムシノマスク、カビノマスクとやゆされた国からのマスク配布の業者に不可思議な部分があるなど、コロナ禍でも政府に疑惑が噴出、既に疑義がある桜を見る会、森友学園事件、検察官定年延長法案など、政府の弱点となるテーマも多くあり、官邸としては大幅会期延長はもろ刃の剣ともなりかねない。また、政局の動向次第では政権が揺らぐ場合もあり、与党は大幅延長、官邸は慎重にという運びになるのではないか。しかしコロナ対策に停滞は許されない。



「コロナ危機」質疑(2020年4月30日配信『しんぶん赤旗」-「主張」)

現場の悲鳴 真剣に受け止めよ

 新型コロナウイルス感染拡大の対策を盛り込んだ2020年度補正予算案について、日本共産党の志位和夫委員長が衆院予算委員会で質問に立ちました。少なすぎるPCR検査、危機に直面する医療機関、苦境に陥っている暮らしと営業、大ダメージのイベント・文化―。各分野で上がる切実な声に根ざして具体的な提案をした志位氏の質問は、コロナ禍の中で政治が何をなすべきかという基本姿勢を大本から問うものです。安倍晋三政権は、国民の悲鳴を真剣に受け止め、切迫した事態に見合った対策を本格的に実行すべきです。

本気で支援する姿勢示せ

 PCR検査体制の抜本的な改善・強化は焦眉の課題です。感染を疑われる人が保健所を通さず迅速に検査できる仕組みのPCR検査センターの設置推進が不可欠です。首相もようやく設置を表明し、全国の自治体で同センターをつくる動きが始まりました。同センターには1カ所平均5000万円がかかるとされます。

 ところが補正予算案は同センターのための予算を含んでいません。政府は1490億円の「緊急包括支援交付金」などで対応するとしますが、同センターを全国数百カ所つくるとなれば、新たに200億円必要なのに手だてがありません。志位氏は、センター設置という新方針を首相が表明した以上、既存予算の枠内にとどめるのでなく、新たな措置をとるべきだと迫りました。国が「本気度」を示さなければ、設置は前進しません。

 コロナ患者受け入れなど献身的に奮闘する病院に大きな財政的負担がかかることは大問題です。感染患者に備えベッドを空けたり、医師・看護師の特別体制をとったりして減収になる病院からは、夏までに資金が尽きると悲痛な声が上がっています。減収を補てんする自治体も生まれていますが、本来は国がやるべきことです。

 志位氏が「コロナ対策にかかる費用は国が全額補償する」と明言すべきだとただすと、首相は「緊急包括支援交付金」での対応に固執しつつも、「医療提供体制の機能は国として責任を持って守る」と述べました。ならば医療に数兆円規模の予算を投じるべきです。

 暮らしと営業を守る対策はどうか。「1人10万円給付金」だけでなく、生活が持ちこたえられる補償が欠かせません。生活を支える収入補償には、現在の雇用調整助成金の仕組みでは対応できず、中小事業者の多くは救えません。煩雑で時間がかかる手続きを簡素化し、先に給付し審査を事後にすることや賃金の8割補償への引き上げなど「コロナ特例」にすべきです。非常事態に、従来の延長線上の対応では間に合いません。

抜本的組み替えと加速を

 毎月支払う家賃など固定費の補償には、事業者が限られ1回だけの「持続化給付金」では足りません。志位氏の指摘に、首相は、東京では金額が不十分と認め「長引けばさらなる対策等も考える」と述べました。要件の緩和と継続的な補償に踏み切る時です。首相が名指しでイベント自粛を要請した文化・芸術・スポーツへの補償はいよいよ必要です。

 感染爆発と医療崩壊を止め、暮らしと営業を守り抜くため、補正予算案の内容の抜本的拡充・組み替えと諸施策のスピードアップをはかることが政治の責任です。



政治は何をなすべきか(2020年4月30日配信『しんぶん赤旗」-「潮流」)

道路わきのツツジが満開の花を咲かせています。白、薄紅、赤、紫。変化に富んだ色合いの花々は万葉集にも詠まれたように古くから親しまれてきました

▼漢字の躑躅(つつじ)には「行っては止まり、行っては止まり」という意味があり、見る人の足を引き止める美しさから、この字が使われたといわれます。異様な世界に身を置くと、ふだんと変わらぬものがいとおしい

▼大型連休が始まりました。いつもは人が激しく移動する時期ですが、今年は様変わり。交通機関や観光、宿泊施設はどこも閑散とし、街中の人影もまばら。空港には旅客機、JRの車両基地には新幹線がずらりと並ぶ光景が世のありさまを際立たせています

▼国や自治体は「ステイホーム週間」などと呼びかけますが、生活苦や行き場を失い、家にいたくてもいられない人たちも。コロナ禍によって社会の仕組みが根底から崩れようとしています

▼そんなとき、政治は何をなすべきか。国会で共産党の志位委員長が政府に訴えました。医療現場や市井の痛切な叫びをぶつけ、具体的な数字をあげながら。苦しんでいる人びとを助ける、安心できるように減収を補償する。なぜ、それをすぐにやらないのかと

▼一律10万円給付をはじめ、この間の野党の提案は国民の命とくらしを守る視点が定まっています。しかし、この危機に際して、のんきに収束後のキャンペーンを語る政府からは、目の前の対策も必死さも伝わってきません。こちらは花とちがい、異常時にみえる政治の本気度です。









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