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9月入学制 今は「学びの確保」急いで(2020年5月4日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

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休校中の登校日にオンライン学習の事前設定をする産山学園の児童ら=4月22日、産山村

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校の長期化を受けて、入学や進級の時期を9月に変更する案が浮上している。緊急事態を転機と捉え、教育のスケジュールを海外に合わせてしまおうという考えだ。政府も9月入学制を来年度導入するかどうかの検討に入った。論点を整理して6月下旬にも方向性をまとめるという。

 国際化が進む中で4月入学の独自ルールを守り抜くのは限界もあろう。9月入学制には他の利点もあり、検討すること自体に異論はない。ただ、それは混乱の最中に優先して進めるべきことだろうか。力を尽くすべきは、長引く休校で我慢を強いられ、不安を抱えている児童生徒らの「学びの確保」を急ぐことのはずだ。恒久的な変更と、喫緊の課題を解消する取り組みは分けて考えるべきだ。

慎重な議論が必要

 9月入学制を巡っては、全国知事会でも賛否が分かれた。「社会変革の一つとして検討していくべきだ」「混乱状況の中でしか実現できない」という推進派に対し、「どさくさに紛れて社会システムに関わる制度を導入すべきではない」「コロナ対策の一環として議論する話ではない」と慎重論も相次いだ。

 9月入学制には、休校の長期化による学習の遅れを仕切り直しできるという利点がある。秋入学が主流の海外に合わせることで留学がしやすくなり、優秀な留学生も呼べる。インフルエンザが流行する冬の受験も避けられる。

 一方で、入学時期を変えれば教育界だけでなく社会全体に大きな影響を及ぼす。法改正を伴う大きな制度変更も必要となる。これまでも長年検討されながら実現していないのもそのためだ。

 国の会計年度の開始や企業の入社は4月。こちらを変更しなければ、卒業後の約半年が空白となり新社会人のスタートは遅れる。小学1年生が入学する前の保育期間も延長が必要になる。子どもたちへの影響も大きいだけに慎重な議論が必要だ。

混乱重ねる恐れも

 確かに、一斉休校が今後も続けば、ネットで遠隔教育をする私立や進学校などと、何の対応もない学校との教育機会の格差は開く一方だ。文科省によると、休校措置を取る教育委員会のうち、双方向のオンライン学習をしているのは5%。経済力による家庭の格差も大きく反映される。

 さらに、政府は今後、学校活動について「地域の感染状況に応じて段階的に再開する」との方針も打ち出すという。そうなれば、教育の地域格差も拡大しかねない。

 だが、そうした問題は別の手段で解決できないか。必要な段取りを踏まず、一足飛びに入学時期を変えるのはあまりに飛躍が過ぎる。混乱の中で拙速に大きな制度変更をすれば、新たな混乱も生みかねない。

 大学受験を控えた高校生らからは9月入学制に賛同する声が広がり、インターネットで署名活動も行われている。学習が遅れている受験生らの焦りは理解できるが、受験生の救済策としては入試の出題範囲から3年生が習う部分を外したり、選択制にしたりする方法が現実的ではないか。秋入学を部分的に実施している大学もある。その枠を広げる方法もあろう。

知恵と予算結集を

 今は多くの児童生徒らが教育の機会を確保できるよう、知恵と予算を結集させるべき時期だ。例えば、オンライン学習の普及拡大などに予算を集中的に投入し、ノウハウの積み上げを急ぎたい。分散登校や時差登校などの実施基準も明確にしておく必要がある。

 8月末までにコロナ禍が終息する保証がない以上、児童生徒や保護者ら、学校現場に安心材料を提供する取り組みを丁寧に積み重ねるほかあるまい。




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gogotamu2019

Author:gogotamu2019
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