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脳性まひで障害室蘭の今佐和子さんと母美幸さん 本紙投稿きっかけ 手作り「じてん」書籍に(2019年6月9日配信『北海道新聞』)

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自分の「さわこのじてん」(右)と、そっくりの装丁になっている書籍を見比べて喜ぶ佐和子さんと母の美幸さん

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書籍を受け取った佐和子さんは、現在使っている「さわこのじてん」の中から「うれしい」を何度も指さした

 本紙の投稿欄「いずみ」に昨年1月21日、掲載されたのをきっかけに、1冊の本ができた。投稿も本もタイトルは「さわこのじてん」。室蘭市在住の今美幸さん(59)が、聞こえない、話せない、体を動かすのも不自由という重い障害がある長女、佐和子さん(28)の思いが伝えられるよう、娘が覚えた言葉を手作りの本に書き足して増やしていった「じてん」にまつわる実話だ。投稿はたくさんの読者の心を動かし、反響が寄せられたため、翌週には記事として生活面(現在のくらし面)で親子の道のりを詳しく紹介した。投稿と記事は北海道新聞出版センターの編集者の心を揺さぶり、投稿から1年半で出版が実現した。

■言葉指さし紡ぐ思い 親子の2000語そのまま掲載

 「うれしい」「ありがとうございます」―。書籍の発売直前の5日、出来たての本を持ち、ご自宅を訪ねると佐和子さんは、自分で使う「さわこのじてん」に載る2千以上の言葉から、この二つを何度も指さし、にっこりしてくれた。

 佐和子さんは脳性まひのため上下肢の運動機能に重い障害があり、右腕の肘から先が動く程度。耳もほとんど聞こえない聴覚障害に知的障害も伴う。両親の故郷・根室市で生まれたが、両親は仕事を変えてまで大きな病院と通える学校のある場所を求め、2歳10カ月から室蘭で暮らしてきた。

 母は願った。「重い障害のある娘と、どうにかして言葉を交わしたい」。娘は6歳で地元の聾学校に入り、「自分にも、ものにも名前がある」ことに気付いた。

 「1年生の3学期。いつものように夜、布団の中で仰向けになって、もう何度も読んでくたびれた絵本のページをめくって見せていると、さわこが絵本の中にある『さ』の文字に人さし指を伸ばした。私の胸がドクンと鳴った。そしてさわこは、自分の顔を指した。次に、『お』の文字を指し、私を指した。ドクン、ドクンと私の胸が鳴った。私は布団の中で、娘の頭をぎゅーっと抱いた」(書籍「さわこのじてん」から)

 「佐和子さんの言葉」は一つずつ増えていった。最初はカード、それから画用紙にまとめ、さらに増えたので本のようにとじることになった。それは佐和子さんの頭の中にある言葉が網羅された「じてん」であり、周囲と佐和子さんをつなぐ大切なものになった。

 学年が進んで環境が変わったり、使い古してヨレヨレになったりする度に作り替え、現在の「さわこのじてん」は15冊目になった。
 母の美幸さんは「私と娘が使う以外のなにかになるとは考えもしなかった『さわこのじてん』が、本になって世に出ることになるなんてすごい」と話す。

 出版された「さわこのじてん」はA5変型判159ページ。1620円。佐和子さんが現在、使っている「じてん」をカラーでそのまま掲載しているほか、佐和子さんの日常の写真、美幸さんのエッセー、かかわってきた主治医や言語聴覚士の寄稿で構成されている。



2018年1月21日掲載「さわこのじてん」(今美幸さん)

 娘が使っている手作りの「じてん」がぼろぼろになったので、丈夫な製本の方法などをネットで検索した。すると、「世界で一冊だけの本展・函館」というイベントを知った。市民の手作りの本を募集し、展示する試みらしい。娘の「じてん」を送ってみた。

 娘は26歳。聴覚、知的、肢体に障害がある。小さい頃、自分に名前がある事も物に名前がある事も知らない娘となんとか話がしたくて、障害児教育の大学の先生に相談の手紙を出した。「耳が聞こえていなくて、知的に障害があるなら、コミュニケーションは難しい」という返事だった。

 それでも、喉が渇いた娘が「水」と伝えられるように、と聾学校へ入学させてもらった。担任の先生が毎日毎日、「さわこ」と書いた厚紙のカードで名前を伝え続ける、「せんせい」と「おかあさん」との3人の授業が始まった。

 1年がたつころ、「さ」のカードは私だと自分を指さした。次の1年で、学校裏の牧場で馬に向かって「うま」と書かれたカードを掲げ、顔を光らせる娘がいた。どんどん物の名前を覚えていく。覚えた言葉のカードをつづり「じてん」と名付けた。娘は「じてん」の言葉を指さし、周囲と会話できるようになった。今の「じてん」は15冊目だ。

 本展が終わり、来場者8人の感想文が送られてきた。最初の1枚に「ぼくは、『さわこのじてん』が一ばんすきです」と書かれていた。



出版担当編集者・撮影者に聞く

 出版を進めた編集者の北海道新聞出版センターの仮屋志郎部次長(51)と、本の写真撮影を担当した北海道新聞写真部の国政崇記者(49)に、本に込めた思い、何度も接して紡いできた今さん親子との交流を聞いた。2人の姓は「さわこのじてん」にあり、訪ねると「じてん」の名前部分を指さし、覚えていることを伝えて歓迎してくれるという。

■仮屋志郎・部次長 絵本のように読んで

 いずみを読んでまず、「どんなものなんだろう」と興味を持ちました。生活面の反響記事を見て「本にしたい」という思いがわき起こり、すぐに電話で訪問を打診しました。

 「じてん」の実物を見て、佐和子さんの頭の中にある言葉が全て入っているんだと思いました。誰もが共通して持つ言葉とコミュニケーションという普遍的なテーマが、手作りの「じてん」という具体的でユニークな形になっていました。

 今使っている「さわこのじてん」をそのままカラーで掲載しています。子育て中の家庭で、絵本のように読んでもらえたらうれしい。

■国政崇記者 母と娘の愛情感じた
 初めて訪ねたとき、春の柔らかな日差しが差し込む自宅で、佐和子さんはお気に入りのピンクの服を着て少し緊張気味でした。
 「じてん」を使う場面の撮影に入ると、美幸さんは「さわちゃんはプールに行きたいの?」「犬ぞりも?」と、聞こえない佐和子さんに普通に話しかけながら、指先を進めていました。母と娘は笑ったり、困った表情になったり…。写真で声は伝えられませんが、そんな2人の雰囲気がわかる写真を撮ったつもりです。

 歴代の「じてん」を並べると、よく使って手になじんだ1冊1冊から、母娘が一緒に過ごしてきた時間と愛情が伝わってきました。



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内容紹介

母は願った。重い障害を持つ娘と、
どうにかして言葉を交わしたい——

脳性まひによる肢体不自由のほか知的・聴覚障害のある娘の成長に合わせて改良を重ねた世界に一冊の「じてん」。
日常生活で使う単語から、「好き」「つまらない」など感情を表すものまで、伝わるよろこびをのせた言葉が詰まっています。


平日の朝、通所施設の車がさわこを迎えに来ます。
車を待つ間のほんの数分間、玄関で車いすに座ったさわこは、「じてん」をめくりながら、
そこに書かれた「ことば」を指差していろいろな話をします。
たいていは夕食の話です。大好きな「すし」を指すときは本当にうれしそうな顔で。
あくまでも希望なので、それがかなうかどうかは別ですが。
私が「おかあさん」、「今日の予定」と指すと、さわこが「〇〇スーパー」(へ行って)と言います。
時には「おとうさん」、「ビール」(おとうさんにはビールを買って来て)と、夫が喜びそうなことも言います。
出かける前には話したいことがたくさんあります。私もさわこの話をなるべくたくさん聞いてあげようと思います。
そして、夕方帰ってくると、私はじてんの中の「ざんねん」ということばを指し、テーブルの上の焼き魚を見せることもあります。
さわこも「ざんねん」と指します。

娘の通う通所施設へ行ってみると、ある一人の女の子が私に、
「おばさん、さわちゃんがさー、私のこと“好き"っていうんだー」と言います。
またある日には、別の女の子が、
「おばさん、さわちゃんがさー、私のこと“いちばん好き"っていうんだー」と言います。
二人の女の子はとてもうれしそうです。
声がなくても、さわこはじてんを指差して、だれかに「好き」を伝えることができます。
さわこのことばは、耳から自然に覚えたものではなく、周りの人が一つひとつ意味を伝え、
形を伝えながら覚えていったものです。数は少なくても、どのことばも一つひとつが大事なことばです。
そして、さわこのことばを本のようにして綴じた「じてん」は、さわこと人をつなぐ大事なものです。
さわこの心であり、頭の中そのものです。

きっと明日も、さわこはことばを使って生きて


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