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成年後見制度20年 需要の増加見据え運用を(2020年5月10日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 認知症や障害により判断能力が衰えた人を支える成年後見制度が導入されて20年が過ぎた。介護保険とともに「高齢化社会を支える両輪」と期待されたが、国内の認知症の人が厚生労働省推計で現在602万~631万人に上るのに対し、利用者数は22万人程度と伸び悩んでいる。

 団塊の世代が75歳以上になる2025年には、認知症患者は最大で730万人に達する見込みだ。特殊詐欺被害や虐待を防ぐためにも、これまでに浮かび上がった課題を整理し、需要の増加を見据えた柔軟な運用を図る必要がある。

 この制度では、親族や弁護士、司法書士、社会福祉士らの中から家庭裁判所に選任された後見人が本人に代わり財産管理をする。本人の希望や健康状態に配慮し、必要な医療や介護を受けられるようにする「身上監護」も行う。

 当初は後見人の約9割が親族だったが、着服が続発したため弁護士などが選任されることが増え、現在は専門職が約8割を占めている。

 不正件数は減少傾向だが、専門職が不正事件を起こすケースも後を絶たない。このため同居親族を中心に第三者に財産管理を委ねることへの抵抗感が強く、選任申し立てにブレーキがかかっている。

 専門職が選ばれた場合、利用者の財産額に応じた報酬が財産の中から毎月支払われる。ただ、身上監護の取り組み姿勢には個人差があるため、親族からは「仕事の割に報酬が高い」との不満も聞かれる。

 後見人は預金の解約や不動産売買など強い権限を持つ。認知症の悪化などで本人の意思確認が難しくなることも想定しなければなるまい。親族か専門職かを問わず、後見人は周囲の意見を取り入れながら公正さを保ってもらいたい。

 17年に閣議決定された利用促進基本計画は、地域の連携によって権利擁護や不正防止の網をかける狙いから、後見人や親族だけでなく、介護・医療の関係者なども組み入れた「チーム」で利用者を見守る方針を明示。チームを支援する法律・福祉の専門職団体などの「協議会」や、事務局となる「中核機関」を21年度までに全国の市区町村に設置し、誰を後見人とするかの調整役とするよう求めた。

 制度を運用する裁判所も、利用者の意向や生活状況の変化に応じて後見人の交代を柔軟に認める方針に転じたほか、後見人らに支払う報酬の算出方式を見直し、生活支援により多くの報酬を支払う考えを示している。

 ただ、人手不足が続いている介護現場に成年後見に協力する余力はどれほどあるのか。弁護士や司法書士の人数にも限りがある。需要増に応えるには、制度に関し一定の知識を身に付けた「市民後見人」の選任を増やすなど、人材を有効に活用すべきだ。信頼できる親族がいる場合は親族に後見を任せ、身寄りのないときには専門職でしっかり利用者を守るなど、メリハリのある運用も目指してほしい。




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Author:gogotamu2019
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