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「9月入学」導入は愚の骨頂。文科省の検討が混乱しか生まない訳(2020年5月13日配信『MAG2ニュース』)

阿部泰尚『伝説の探偵』

未だ多くの地域で小中高の休校が続き、児童生徒の学習の機会が大きく侵害され、またその公平性の担保も危うくなっている今、にわかに注目を浴びているのが「9月入学制度」。その導入を巡っては各所でさまざまな議論がなされていますが、教育行政と現場双方を知り尽くす現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんは、絶対反対の立場を取っています。なぜそのような判断をするに至ったのでしょうか。阿部さんは今回、自身のメルマガ『伝説の探偵』にその理由を記すとともに、どんな状況にあっても学びを止めない仕組みを作ることが重要であるとして、オンライン授業の導入を強く訴えています。

2月27日の首相の要請で、春休みごろから始まった臨時休校。

4月16日の緊急事態宣言を受けて各地域の教育委員会などは臨時休校是非の判断をさらに迫られた。4月22日の段階では、全体として91%の学校が休校にしている。

学校教育は同じ空間に生徒をまとめて授業を行う方式である以上、新型コロナ予防で重要な「三密を避ける」ことは極めて困難である。

それでも、文科省は2020年3月24日に「学校再開ガイドライン」を公表している。ここでは、「家庭と連携し検温などをして感染源を避ける」「手洗いや咳エチケットをして感染経路を避ける」「免疫力を高める」「窓を開けて換気する」「マスクを装着する」などを挙げているが、そもそも発症しない段階で感染するウイルスであるのにこれら対策はあまりに学校現場に対して無責任といえるものであった。

簡単に言ってしまえば、「根性で感染するな」である。

富山では初のクラスター感染が起きたり、他県でも教員が感染していたというニュースが連日報道された。

5月4日に緊急事態宣言延長が首相から発表されたが、青森県と鳥取県は7日から小中学校の再開を決めている。

教育の計画は各教育委員会の管轄だ。地域差はあるにしても、次の夏休みは大幅に削られることだろう。

追いつかないオンライン授業

ほとんどの学校が休校している中、リモート授業による対策が注目を浴びるが、5月現在はほとんどが話題になっていない。そもそも2019年11月の消費税増税の枠組みとして、教育無償化と共に、全国の小中学校の通信環境を大型高速化したうえで、児童生徒1人1人に1台のタブレットパソコンなどを無償で配布するとされていた。

予算案としては4,000億円から5,000億円規模というものであったが、パソコンなどは性能が日々更新されるという問題やそもそも必要なのかと経済識者などの批判の対象となっていた。

ただ、このリモート授業はいじめなどによる不登校問題にも有効な対策であった。日本式の学校教育制度はそれこそ明治時代から大きな変化もなかろう。いつまで日本人は、自分たちが素晴らしい最先端をいくアジア人だと思い込んでいるのだろうか。

もはや時代遅れで、グローバルな世界では全く歯が立たない教育しかできていないことをいつになったら理解できるのだろうか。

それにしても、予算規模全体を見れば莫大なものではあるが、その見積もりは杜撰極まりない 。各報道によれば、1人1台を実現した地域では1台当たり25万円以上の費用がかかる計算となったというが、この消費税増税の際に見積もられた予算は1台4万5,000円であった。この4万5,000円の根拠は後付けで今では綿密な分析によってとされているが、当初出たのは文科省の役人が家電量販店を回って、必要なスペックを満たすパソコンの価格を調べたところ、大体4万5,000円だったからだとされていた。

現状、日本全国でみると、学校にある端末は5人に1台の計算になるのだという。つまり、現実としての達成率は低く、まだ導入されていない状態の中で、コロナ禍となってしまった。このままいけば、リモート授業などのオンライン化はいつの間にか有耶無耶となってしまうだろう。

「9月入学」が混乱しか生まぬ訳

「9月入学」に飛びつく無策と教育格差

そして、ここきて飛び出てきたのが、「9月入学」だ。

このまま、コロナが収束の目途すら立たなければ、機能的に三密が避けられない学校教育を再開することは困難であろう。

ノーベル賞で有名な山中教授によれば、コロナ収束は1年以上かかるといわれているし、欧米諸国でも専門家は収束までに2年はかかるだろうという話もある。

現状、いくら感染者数が減ったとしても、仮に1人が感染しており、クラスに入れば30人のうち複数人が感染し、さらに帰宅して家族間で感染者が増え、家族が会社に行くなどして、結果感染拡大が再発することも考えられるだろう。

であれば、受験期の学生も当然いることから、いっそのこと、入学時期を9月にして、制度をかえてしまおうというわけだ。

こうした議論に対して、政府は何の興味もなかったのだろう。検討すらしていなかったからこそ、現役高校生が提案したことが発端となったこの「9月入学」になんか良さそうだと乗っかってしまうのである。

例えば、現在は4月入学となっている。学年は4月2日生まれからとなっており、現行の学年を一体どうするのかという議論がなされていない。

つまり、9月入学となれば、9月生まれからの学年となることが想定されよう。ともすれば、今の学年はどうするのだ。

その他にも、教科書問題や学習計画の作り直し、奨学金と連動するような確定申告期との問題や国家試験や就職期の変更など、単に苦し紛れの策を講じれば、そのほかのシステムを変更しなければならなくなる。

いじめ問題であっても、命にかかわる緊急な事態が生じても対策が遅れている教育行政に迅速な対応を求めても無理だろう。現場は混乱し、教職員はさらに疲弊、それに伴って児童生徒は学習を進めるどころではない。

一方で休校をしていない地域とオンライン授業が進んでいる学校は教育が続いているが、全く対策が後手になっている地域では教育の進みに大きな格差が生じる。

オンライン授業の対応ができている私立校は、すでに受験の準備に取り掛かっていることだろう。

もはや格差は生じているのだ。

生徒を無視し続けてきた教育行政

但し、その格差が生じても、「9月入学」を進め根本的システムを変更すれば、取り返しのつかない混乱を生じさせることになるだろう。その決断は英断ではなく、愚の骨頂であり、今の学生を含め、一般市民を切り捨てたことを意味しよう。

ただ、私はきっとこの決断はあり得るかも知れないと思っている。なぜなら、政府も教育行政も、児童や生徒を今まで無視してきたからだ。

いじめ問題を主に扱ってわかったことがある 。仕組みや法は穴だらけ、その後の改正もしていない。そして、法やガイドラインに違反してもほとんどは謝罪で済む。まるで、治外法権のように行為自体は犯罪だというものが起きても、有耶無耶にされてしまうのだ。

政治家は身内にも甘い。

例えば、女性団体の活動視察に出た 馳元文科大臣は、この女性団体にいる十代の女性にセクハラ行為を働いたとして団体代表から抗議を受けている。

ところが、馳参議はブログで釈明をしたに過ぎず、直接の謝罪はしていないし、軽い注意で処分ということまでにはなっていない。

さらに、馳参議はもうこの問題には対応しないと表明している。

私の周囲では、馳参議のセクハラ行為については、彼方此方からその評判の悪さが耳に入ってくる。この団体の問題を耳にしたときも、やはりやっているんだなというように思ったくらいだ。

結局、有耶無耶にしてマスコミをもコントロールしてしまえば、世間の注目も一時凌ぎで逃げ切れると考えているのだ。

役目を終えた寺子屋式の教育制度

休校解除の基準を作れ


そもそも現状の格差休校によって、学校現場は混乱している。児童生徒のみならず、その保護者も出口が見えないトンネルにいるようなもので、いつ休校が解除されるのかの基準も示されていなければ、現状でどのように単位や学習を進めるのかも示されていないのである。

大阪府の吉村知事が言うように、現状で基準を作っているようでは、国民は大いに不安を感じるのであり、見えない暗闇の中、生活を強いられている状態なのだ。

これも無責任と言わずしてなんと評価すればよいのだろうか 。

もはや、自分たちで動くしかないだろう。「9月入学」という混乱の種を検討するより、今すぐリモート教育、オンライン授業の導入を強力に推し進めるべきだ。

予算はかき集めればよい。PTA会費などはほぼ貯蓄状態になっているケースが多い。こういう無駄な内部留保はすべて使ってしまえばいい。すでに端末を持っている家庭はそれを使い、YouTubeやSNSを代用してもよいだろう。

例えばスマートフォンでもオンラインには接続ができる。スマートフォン端末を暫定的に導入するとか、ドコモやソフトバンクなどの大手キャリアに端末を格安でレンタルしてもらうように交渉するでもいいだろう。

休校によって格差が生じてしまった分に関しては教育の柔軟性でカバーできるところはカバーし、現行の受験期にある学生については、試験範囲に配慮すれば、「9月入学」のような多重な整備や調整、収拾不能な混乱に学生を巻き込むよりはるかに整備は容易となる。

この新型コロナによる混乱の中、教育行政には自粛ではなく行動がなければ、児童生徒のみならずその保護者も学校現場もさらに不安と混乱にまみれてしまう。

全く期待はしていないところはあるが、「9月入学」という混乱トピックスに飛びつくような愚行は今すぐやめて、これ以上の混乱を防ぐためにも、根性論を排除した休校解除の明確な基準とオンライン授業の推進、受験期や学習の進みについての具体的な対策を示すべきだろう。

もう寺子屋式の教育制度は必要ない。一か所に一同集めて、よーいドン!の時代は終わらせなければならない。

重要なことは、どんな状況にあっても学びを止めないという仕組みを作ることだ。

編集後記

私は探偵学校を運営しています。今、オンライン講義をするためカリキュラムなどを変更しているところです。一方で私の探偵学校では、パソコン端末を授業で製作します。予算としては1万円もかかりません。シングルコンピュータとなる格安の基盤を使って、OSには無料のLinuxを使います。同時にプログラミング教育を行うため、この端末を作ると同時プログラミングの基礎や通信の基礎も学びます。

この端末を使い、遠隔地からスマホでカメラを操作するなどを基本講座で学ぶのです。

探偵学校卒業時には、古いパソコンなどを応用し、wifi等の通信を使ってどこにでもカメラを仕掛け、それを遠隔で操作することも可能なだけの技術が身に付くわけです。

日本はモノづくり大国でした。経済産業省もものづくり補助金なるものを用意しています。今すぐ導入しなければならない緊急のときですから、そこまでしろとは言いませんが、今、学校教育がオンライン授業の推進のために考えているのは、すでに端末があってのイチからの教育であり、同時に新カリキュラムとして導入されるプログラミングについては、その先の話ではないでしょうか。しかし、ものづくりを推すのであれば、端末自体の機能を知りながら作るゼロからの教育が理想でしょう。

端末自体が1万円以下、モニターは今どきのテレビで十分代用できますし、キーボードなどは1,000円もあれば用意できます。つまり、私の探偵学校では、教材費を徹底的に抑えつつも、ゼロから教育によって身につくスキルは最大限にまで伸ばすことができるのです。

工夫をする民間と税収に甘えればなんとかなってしまう官との差ではないでしょうか。

もっと考えろ、もっと生徒の身になれ、いじめの対応の時も同じですが、なんでこんなに関心がないのか不思議でたまりません。それこそ、人員を大幅に削減してAIでも採用したらどうか、そう思えてしまうほどです。

阿部泰尚
社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。




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