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アイヌ新法1年 民族参画の仕組み急務(2020年5月29日配信『北海道新聞』-「社説」)

 アイヌ民族の誇りを尊重し、共生社会の実現を目指すアイヌ施策推進法施行から1年が過ぎた。

 法律に初めてアイヌ民族を「先住民族」と明記し、差別の禁止を盛り込んだ意義は大きい。

 ただ、今なお差別は解消されず、権利回復の議論も置き去りにされたままだ。

 国が創設したアイヌ政策推進交付金の関連事業を巡っても、アイヌ民族の意向が十分反映されていないとの批判が少なくない。

 「アイヌの人々の自発的意思の尊重」という基本理念の実現には程遠い。アイヌ民族が施策に主体的に参画できる仕組みの形成を急ぎ、不断の改善を図るべきだ。

 先住民族は単に「先に住んでいた人々」ではなく、独自の文化や言語を否定され、土地や資源を奪われるなど抑圧された人々を指す概念だ。明治政府は同化政策を進め、これらの権利を奪ってきた。

 差別禁止の明記は私たちが差別を根絶するという強い決意の表れだ。だが今なおヘイトスピーチ(憎悪表現)は後を絶たない。

 政府はアイヌ民族と共に差別の具体例や対策を考え、周知徹底するべきだ。加害の未然防止や被害の救済策も欠かせない。

 創設された交付金は、福祉、文化施策から地域振興を含めた総合施策に転換する狙いがある。

 2020年度は24市町に計15億6千万円が交付され、最大7億円まで追加決定もある。

 ただ、認定基準は曖昧だ。それゆえ、アイヌ文化の継承者を育てる事業が対象から外れ、観光色の濃い事業が認められるなど当事者から不満も出ている。

 各自治体はアイヌ民族が多数加わる審議会の設置や、アイヌ民族との協議の有無を交付金の審査基準にするなど対策が不可欠だ。

 法律の付帯決議は、07年に国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」の趣旨を踏まえ、施策のさらなる検討に努めるよう求めた。

 国連宣言はサケなど自然資源の利用権や教育権、自治権などを含み、日本も賛成票を投じた。なのに、議論は進まず、国連人種差別撤廃委員会から権利を十分保障するよう勧告を受けている。

 胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」も間もなく開業する。

 これを機に、政府や道は権利回復の議論を始めるべきだ。私たち一人一人も理解を深め、より多様で誰もが生きやすい北海道を築かなければならない。




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