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憲法審査会 社会変化も踏まえ議論を(2020年5月31日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 今国会で初めての憲法審査会が衆院で開かれ、国民投票法の改正を巡る討議が行われた。自民党などは2年前に提出した改正案の早期採決を要求。立憲民主党などはインターネットが投票に与える影響など、新たに浮上した課題を指摘した。議論は平行線に終わり、会期中の法改正は見送られる見通しとなった。

 国民投票法は、憲法改正が国会で発議された際、賛否を呼び掛ける運動の規則を定める重要な法律である。制度の問題点を洗い出し、対処策を講じる作業を進めておくべきだ。だが、そのためには社会状況の変化も踏まえた丁寧な議論が不可欠だろう。与党内には、改正案を衆院採決までは持ち込みたいとする声もあるようだが、数の力に任せた強引な議事進行は改憲論議にふさわしくない。

 自民党の改正案は、期日前投票時間の弾力化など、公選法に合わせて有権者の利便性を高めるものだ。ただ、見直しが必要な課題はそれだけではない。

 現行法は、投票日の14日前以降に限って、改憲案への賛否を呼び掛けるテレビCMを禁じている。しかし、ネット上の広告は規制の対象外だ。国内のネット広告は昨年、テレビを上回り媒体別広告費の首位に立った。2010年5月に施行された現行法が社会の変化に対応していないのは明白だ。

 審査会で、立民党は資金量の差が投票結果に影響を与えるとして「公正さを担保する議論が必要」と強調。国民民主党は、政党CMをネットも含め全面禁止する同党案を並行審議するよう求めた。共産党は、CM規制などの問題に触れずに改正案を成立させようとするのは許されないと訴えた。

 他にも他国の勢力がネットを通じて憲法改正に干渉することを防ぐ制度や、一定の投票率を改憲成立の条件とする「最低投票率」制度の導入など、検討すべき課題は数多くある。

 野党が課題を次々と列挙し、採決に予防線を張った背景には、自民党が安倍晋三首相(党総裁)の主導でまとめた9条への自衛隊明記など4項目の改憲条文案への懸念がある。改正案が採決されれば、自民がCM規制の議論を置き去りにして4項目の審議を強行するのでは、との警戒感は強い。

 改憲の議論には、与野党間の一定の信頼関係が不可欠である。自民党は4項目にこだわらず、速やかに取り組むべき課題と向き合うべきだ。野党も、掲げた論点にどう対処すべきか明示し、「遅延戦術」との批判を打ち消したい。

 審査会では、新型コロナウイルス対策に関する憲法上の課題を指摘する声も上がった。自民党や日本維新の会は、政府の権限を強める「緊急事態条項」を憲法に盛り込むよう主張。立民党は法律で対応できると反論した。地方自治体の権限や、国との役割分担を憲法にどう明記するのか、との問題提起もあった。

 本当に改憲が必要な条項は何なのか。それを徹底的に議論した上で絞り込むべきだ。




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Author:gogotamu2019
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