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進学の夢、なぜ壁だらけ…「望みは大学無償化」 支援塾に通う高校生(2020年5月31日配信『琉球新報』)

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講師のアドバイスを受けながら学習に励む女子生徒=28日、那覇市内の学習支援塾

 沖縄県が29日に発表した2019年高校生調査を見ると、経済的な困窮で自身の夢や希望を諦める生徒の姿が浮かび上がる。日頃の食生活も困窮世帯と非困窮世帯で違いが見られ、健康もむしばまれている状態だ。電子辞書や自分の部屋などを持てない割合も東京と沖縄で格差がある。理想の道を歩もうとする高校生の前に、自分の努力ではどうにもできない、大きな壁が立ちはだかっている。

 5月下旬、那覇市内にある無料の学習支援塾で学校帰りの高校生が勉強をしたり、絵を描いたりと思い思いの時間を過ごしていた。同市内の高校に通う女子生徒(17)は県外の国公立大学を目指して数学の課題に取り組む。「中学校の頃からの夢のために大学に行きたい。でも、経済的にも時間的にも不安だ」。将来の目標へ進むため、乗り越えるべき壁は多いと感じている。

 女子生徒の家庭は経済的に厳しく、新型コロナウイルス感染防止のためのマスクを買う費用も惜しいという。大学進学のための費用を考えるとアルバイトをしたいが、通っている高校では禁止だ。進学に向けて給付型の奨学金を受給したいと願うが「(奨学金の)種類が少ないように思う」。大学など高等教育の無償化制度の利用を視野に入れ、望みを託す。

 「県外の大学のオープンキャンパスに行ってみたい」と夢を抱くが、旅費の工面が難しい。「奨学金の選択肢がもっとほしい。県外への進学希望者のための支援があれば少しは心配がなくなるのに」と唇をかんだ。

 毎日、本を1冊以上読むほどの読書家だが、将来の夢のために好きな読書を我慢して勉強に打ち込む。「とにかく時間が足りない。今は頑張るしかない」とまっすぐ前を見つめた。

 那覇市内の別の高校に通う女子生徒(16)は、中学校の頃からこの支援塾に通う。通学の交通費の半額は県の補助制度でまかなっているが、通塾などその他の移動には交通費がかさむ。「モノレールなら往復で500円がすぐに消える」とため息を漏らす。

 新型コロナの感染が収まり飲食店が本格的に再開したら、高校卒業後の生活のためにアルバイトを始めるつもりだ。就職する予定で進学は考えていない。「高校にいる間に資格を取って安定した職業に就きたい」と将来を見据えた。



進学阻む経済状態 困窮層に届かない支援情報 高校生76.1%と保護者69.5%、大学無償化「知らない」 2019年度沖縄県調査(2020年5月31日配信『沖縄タイムス』)

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 沖縄県は29日、2019年度県高校生調査報告書を公表した。高校生の進路に経済状況が深く影響する実態が浮き彫りになった一方、4月に始まった大学無償化は困窮層の生徒76・1%、保護者69・5%が「知らない」と回答。県が学習塾授業料を全額負担する「無料塾」も周知が不十分で、必要な層に支援の情報が行き届いていない状況がうかがえた。

 今回初めて東京都の高校生(16年度)と比較。パソコンや電子辞書など学びに関連するものを「持ちたいが持てない」県内生徒の割合(非困窮層含む)は東京の約2倍多かった。

 手取り収入などを世帯人数で調整した等価可処分所得が122万円未満の「困窮世帯」の割合は20・4%。前回16年度調査の算定基準だと24・6%で、前回から4・7ポイント改善した。

 無料塾は困窮層の生徒75・9%、保護者66・2%が「知らない」と答えた。

 困窮層の保護者で、市町村や福祉事務所の相談窓口に「抵抗感があった」「時間や場所が使いづらかった」「窓口や方法が分からなかった」と答えた割合は合わせて25・8%を占めた。支援制度の周知とともに、相談支援の抵抗感をどう解消できるか課題も浮かんだ。

調査の方法 2019年11月5~25日に県立高校の生徒、保護者を対象にアンケートを実施。有効回答数は生徒が4386人(有効回答率64%)、保護者が4305人(同62・8%)。高校生調査は16年に続き2度目。

 狭い家 学ぶ環境整わず 新型コロナの影響も懸念

 県高校生調査について29日に県庁であった記者発表。調査に協力した山野良一教授ら沖縄大学の研究者は、3年前の前回調査以降の学習・通学支援が一定の成果を生んだ一方、子育て世帯の生活状況は依然厳しいと強調した。新型コロナウイルス感染症が社会問題化する前の昨年11月の調査だったことを踏まえ「アフターコロナの状況はどうなのか。早急な調査が必要ではないか」と投げ掛けた。

 島村聡教授は沖縄の持ち家率が全国最低の水準にある中、困窮層の持ち家率は24・5%で全体の約半分とさらに低い上、部屋数が少なく狭いことに着目。「家賃が家計収入に占める割合が高く、そこに対する助成は考えないといけない」「狭あいな住宅は学習環境が整いにくい」と、住環境を充実させる施策が必要と提起した。

 調査報告書では、困窮層の高校生が家計や学校生活の費用のためにアルバイトをしている割合が高いことや、バイト先で学業優先の主張がしにくい状況がある恐れに触れている。島村教授は、新型コロナの影響で高校生がさらに弱い立場に置かれているとみて「自分が雇った子どもたちの未来を考えてほしい。労使双方が働き方を考える機会を県が主導していかないといけない」と注文した。

 バスの通学定期券については、ひとり親世帯の利用が前回調査より13・1ポイント増の40・3%となった。山野教授は県が始めたひとり親家庭への通学支援事業の効果だと指摘。子どもが成績上位の場合、進学を望む保護者の割合が困窮層でも増加し、非困窮層との差が縮まったことにも「困窮世帯も進学させようと考えられるようになった、積極的なデータだ」と評価した。

 我那覇ゆりか講師は、困窮層の保護者で肥満の割合が高い調査結果から、安価で空腹を満たせるインスタント食品などの摂取量が影響している可能性を説明。「経済格差が食や健康格差につながっていることが推察される。高校生の時からの対策が必要だ」と課題を挙げた。

 ひとり親「自殺を考えた」 ふたり親の2倍に

 県の高校生調査で子どもが生まれてからの経験を保護者に尋ねると、「自殺を考えたことがある」と答えた割合は、ひとり親世帯の非困窮層が16・2%、困窮層が20・9%に上り、ふたり親世帯と比べていずれも2倍以上高かった。「配偶者から暴力を振るわれたことがある」と答えた割合も、ふたり親世帯(非困窮)の5・4%に対し、ひとり親世帯(同)が23・4%と突出して高く、約4倍の差が開いた。

 「経験したことがない」を除き、「夫婦間で頻繁な口げんかがあった」「わが子を虐待しているのではと思い悩んだ」など全ての項目でひとり親世帯の回答割合が高かった。

 ふたり親世帯に比べてさまざまな困難に直面し、精神面にも影響を及ぼしていることが読み取れる。

 健康に関する質問では、中等度以上の抑うつ・不安感を示した保護者は困窮層が36・1%で非困窮層の約2倍だった。また、ふたり親世帯よりも、ひとり親世帯の抑うつ傾向が強かった。

 報告書は「経済的困窮を緩和する政策と同時に、地域での居場所や支え合うことのできるコミュニティーづくりが、健康感の改善に役立つ」と提言している。

 県内困窮層の高校生 受診を抑制 東京の5倍

 調査は初めて東京、全国との比較も実施。高校生が経済的な理由で必要な時に病院を受診できないとしたのは県内困窮層が8・1%で東京の1・7%の5倍、県内非困窮層も3・3%で東京の約2倍だった。「学校が楽しい」と答えたのは県内が64・5%で東京の75・6%を下回った。

 全国データの「子供の貧困対策大綱」との比較ではひとり親世帯で「重要な事柄を相談できる人がいない」は県内10・9%、全国8・9%。「いざという時のお金の援助の相談ができる人がいない」も県内25・6%、全国25・9%で似た傾向に。識者は「親族関係が濃密と言われる沖縄でも地域のつながりがうまくいっていない」と指摘した。




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