FC2ブログ

記事一覧

衆院審査会 議論の前提を欠いている(2020年6月1日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 自民党が早期成立を目指す国民投票法の改正案は、国会への提出から2年近くを経てなお成立が見込めない。改憲論議の呼び水にしようとする意図があからさまに見て取れるからだ。

 改正案は、駅や商業施設への共通投票所の設置など7項目。公職選挙法の改正を、憲法改定の手続きを定める国民投票法に反映させるものだ。それ自体、与野党が対立するような内容ではない。

 改正案を審議する憲法審査会は与野党の合意による運営を重視してきた。改憲ありきで野党を議論に引き込もうとする姿勢がその前提を壊している。

 今国会では、会期末まで半月余になって衆院の憲法審が開かれたものの、法案審議ではない自由討議だった。自民党は採決を求めたが、野党側は応じていない。

 国民投票法は欠陥が目につく。SNSの普及やメディアの多様化に伴う課題も見えてきた。法制度全体の見直しが必要になる。改憲の議論を急ぐ状況にはない。

 第一に、投票が成立する最低投票率や、改憲の承認に必要な絶対得票率(有権者総数に占める割合)を定めるべきだ。あまり低い投票率、得票率では、主権者の意思と認めにくい。

 賛否を呼びかける運動の資金に制限がないことも公正さを損なう恐れがある。資金力のある組織がテレビCMなどに多額の費用を投じ、世論が誘導されかねない。

 インターネットの放送や広告も影響力を増している。SNSでのデマや誤った情報の拡散といった課題も見落とせない。言論・報道の自由を最大限尊重しつつ、投票の公正さをどう確保するか。丁寧な議論が欠かせない。

 改憲論は新型コロナウイルスの感染拡大に乗じるように頭をもたげている。政府に権限を集中する緊急事態条項のほか、国会を維持する観点から議論を求める声もある。どちらも憲法を改めなくてはならない理由は見つからない。

 緊急事態条項は憲法の根幹である人権の保障や三権分立を無効化し、全体主義に道を開いてきた歴史がある。出席できる議員が減って国会が開けなくなる心配については、オンラインでの遠隔審議や採決を検討するのが先だ。

 必ずや私の手で成し遂げたい―。安倍晋三首相は改憲に強い意欲を示してきた。政権党の力を頼んで無理押しをしないか。引き続き厳しく見ていく必要がある。




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ