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9月入学制 拙速な導入は無理がある(2020年6月1日配信『京都新聞』-「社説」)

<明日を考える>

 新型コロナウイルスの影響による休校長期化を受けて政府が是非を検討している9月入学制は、来年の導入を見送る方向となった。

 自民、公明両党が見送りを求める提言をまとめたほか、緊急事態宣言の解除による学校再開の動きもあり、消極論が広がった。

 9月入学制はグローバル対応を背景にかねて取りざたされてきた。

 だが、社会を大きく変える問題だけに拙速な導入は避けなくてはならない。

 コロナ対策に追われる中で議論を進めるのは、無理があるといえるのではないか。

 そもそも学習の遅れをいかに取り戻すかという問題と、9月入学は次元の違う話である。

 政府が検討に着手したのは4月下旬だった。

 9月入学制は一部の知事の積極論に押される形で、安倍晋三首相が有力な選択肢とした。

 官邸と関係省庁は課題を整理し、文部科学省は来年9月の一斉実施と、5年かける段階実施の2案を示した。

 一斉実施案は17カ月分の子どもが新1年生として小学校に入学し、人数は通常の1・4倍となる。

 段階実施案も、現行制度であれば1学年下の子どもの一部が同学年になる。

 増員した学年は受験や就職の競争が激しくなり、教員や教室の確保も必要になるなど、子どもへの影響も大きくなることが心配される。

 さらに文科省の試算では、移行経費は少なくとも5兆円に上った。子どもを持つ家庭への負担も2兆5千億円増えるとしている。

 日本教育学会も、学力格差を是正する効果にも疑問があると主張している。

 それに加えて全国市長会からは市区長の約8割が慎重か反対とする調査結果が示された。

 入学時期を9月にずらすことよりも、学習の遅れを少しでも解消するよう具体策に取り組む方が良いのではないか。

 文科省は、地域の感染状況に応じて公立小中学校に教員3100人を追加することを決めた。

 現場の実情に応じて、さらに教員を増やすなど、きめ細かい対応を求めたい。

 受験生への配慮も求められる。国立大学協会は推薦型などの入試の繰り下げを検討している。

 再び感染拡大した場合に備えて、オンライン教育を充実させることも重要だ。

 休校が長引き、受験生や保護者からは待望論を含めてさまざまな声が上がっている。

 政府や各自治体は、そうした不安にしっかり向き合い、「学び」の保障のために、やれることを尽くしてほしい。

 海外で主流の9月入学に移行すれば留学などでメリットがあるとの意見は根強い。

 とはいえ、まず今の子どもたちへの対応を急ぐべきだ。

 その上で国民的議論を丁寧に積み上げていくことが欠かせない。



【産経・FNN合同世論調査】(2020年6月1日配信『産経新聞』)

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は5月30、31両日に合同世論調査を実施した。

 学校の休校措置の長期化に伴って政府が検討している「9月入学」について聞いたところ、「賛成」が38.0%で、「反対」は50.5%だった。

 前回調査では、賛成(52.2%)が反対(33.9%)を上回っていたが、9月入学の課題が明らかになるにつれて反対意見が増えたとみられる。



安倍首相、9月入学を断念 与党反対で環境整わず(2020年6月1日配信『時事通信』)

9月入学に関する公明党PTの浮島智子座長(右から2人目)から提言書を受け取る安倍晋三首相(中央)=1日午後、首相官邸

 安倍晋三首相は1日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う学校休校の長期化を受けて検討していた「9月入学」について、来年度からの導入を事実上断念した。

 複数の政府関係者が明らかにした。自民、公明両党が早期導入に反対する見解をそれぞれまとめたことを受け、大掛かりな制度改正の環境は整っていないと判断した。

 ただ、政府は新型コロナの感染が再拡大し、大規模な休校要請を改めて行わざるを得なくなる懸念もあるとみており、その場合の選択肢の一つとしては9月入学を排除していない。このため、万が一の展開に備え、導入時の問題点に関する事務レベルの精査は続ける方針だ。



安倍首相、求心力低下浮き彫り 「9月入学」構想頓挫で(2020年6月1日配信『時事通信』)

 政府は「9月入学」の来年度導入を見送る方向だ。新型コロナウイルス感染拡大による休校長期化で検討を進めてきたが、与党内で反対論が強まり頓挫した形。「1強」を誇ってきた安倍晋三首相の求心力低下を指摘する声も漏れている。

 首相はかねて大学の9月入学を提唱。小泉政権の官房長官だった2006年に著書「美しい国へ」に記し、第1次政権でも政府の教育再生会議で国公立大への9月入学枠設置などを打ち出した。

 今年3月、感染防止のため全国の小中高校で臨時休校が始まると、文部科学省はひそかに始業時期を9月に遅らせるシミュレーションに着手。同省幹部が4月上旬に首相に報告し、「検討を進めておいてほしい」と承諾を得た。

 9月入学について、首相は4月29日の衆院予算委員会で「前広にさまざまな選択肢を検討したい」と表明、今月14日の記者会見では「有力な選択肢の一つ」と踏み込んだ。政権内では6月上旬に首相が導入方針を示すことも検討されていた。

 ところが、首相官邸と関係府省の調整が進み、構想が具体化するにつれ、自民、公明両党内で「現場や家庭の負担が大きい」などと反対する声が強まった。

 政府が緊急事態宣言の解除を決めた25日。「党内は反対意見が多い」と側近から耳打ちされた首相は「そうなのか」と驚いた様子だったという。首相はこの後の会見で「私自身は有力な選択肢の一つと考えてはいるが、与党に極めて慎重な議論もある」と語り、発言を後退させた。

 「9月入学は憲法改正と一緒。機運が盛り上がったかと思えば、下がりもする」。政府高官はこう語り、議論継続の余地を残す。しかし、新型コロナ対応が批判されて安倍政権の基盤は大きく揺らいでいる。

 自民党中堅は「布マスク配布も9月入学も、官邸がポピュリズムに走った結果だ」と酷評。公明党幹部は「9月入学は体力のある政権でないとできないが、安倍政権ではもう無理だ」と突き放した。



首相 9月入学「拙速に行わず」 公明幹部に(2020年6月1日配信『日本経済新聞』)

 安倍晋三首相は1日、首相官邸で公明党の石田祝稔政調会長らから学校の始業や入学の時期を変える「9月入学」に関する提言を受け取った。

 同党が「現時点で拙速に検討を進めるべきではない」と申し入れ、首相は「9月入学は選択肢の1つだが、拙速に行うことはない」と述べた。出席者が明らかにした。

 首相は「政府を挙げて学びの格差が生じないよう全力を尽くす。広く国民を巻き込んで検討したことによって課題が明らかになって良かった」とも語ったという。

 公明党は9月入学について「メリットを大きく上回るデメリットやコストが生じる」と結論づける提言を手渡した。



学校の再開(2020年6月1日配信『京都新聞』-「凡語」)

 山田洋次監督による1993年公開の映画「学校」の舞台は夜間中学だった。働きづめで文字が読めない中年、不登校だった優等生、職場になじめない中国人…。さまざまな背景がある生徒の交流から物語を紡ぎ出す。人のつながりが学び場にあることを教えてくれた

▼コロナ禍による長い休みが明け、多くの学校がきょうから再開する。子どもたちは家にこもり、ひとりで課題に取り組む日々だった。やっと友達と勉強できる。仲間と一緒に学ぶ学校の意義を改めてかみしめるのではないか

▼休校中、多くの学習塾は遠隔講義でオンライン授業を導入した。大学での採用が広がり、小中学校でも導入の可能性が出てきたようにもみえる

▼ただ、学校は学力を高めるだけではない。クラスメートと過ごす何気ないひとときがつくり出す淡い思い出。ネットで代えられない部分はまだ多い

▼「学校」の終盤で、中年生徒の病死をきっかけに生徒たちは幸福の意味をクラスで語り合う。顔を突き合わせ、悩みながら答えを導き出す議論は、リモートの液晶画面越しでは決してできないシーンだろう

▼学習の遅れを取り戻そうと学校には学業だけを詰め込んでほしくない。失った時間は大きいが、これから子どもの思い出があふれるように新たなスタートを切ってほしい。




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