FC2ブログ

記事一覧

パワハラ規制法施行 被害者目線での運用欠かせない(2020年6月3日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 大企業にパワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法が1日施行された。中小企業は努力義務として始まり、2022年4月に義務化される。

 上司から暴言を浴びせられ、暴力を振るわれる―。18年度に各地の労働局に寄せられた相談のうち、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」は、過去最多の8万2千件に上った。心身に深い傷を残し、離職や自殺に追い込む言動は、重大な人権侵害だと社会全体で認識を強める必要がある。国や企業は被害者救済の視点で運用し、パワハラ根絶に向けた確かな一歩にしなければならない。

 施行に伴い、就業規則などでパワハラ禁止を周知するほか、相談窓口の設置、発生後の被害者のケアなどが義務化された。取り組まない企業には、行政機関が指導や勧告を行うことが可能となり、悪質な場合は企業名が公表される。

 法整備の段階で議論になったのは、何がパワハラに当たるのかを示した指針づくりだった。指針はパワハラを①優越的な関係を背景に②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により③就業環境を害する―と定義。具体的には侮辱や暴言の「精神的な攻撃」や、意に沿わない部下を仕事から外す「人間関係の切り離し」など六つの類型があると明示した。

 しかし事例には曖昧な表現が多く、業務指導とパワハラとの線引きは不明確なままだ。たとえば「精神的な攻撃」では「社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意しても改善されない労働者を一定程度強く注意すること」は該当しないとした。一定程度がどの程度か明確でなく、当事者の恣意(しい)的な解釈を許し、救済範囲を狭めかねない。

 該当しない例示は、パワハラと認定しない逃げ道に使われる恐れもあり、立場の弱い労働者が不利にならないよう配慮が欠かせない。調査を人事や労務管理の担当者だけに任せるのではなく、外部の識者を交えるなど公平性を確保する対応が求められる。

 今回、保護の対象が企業の社員に限定されたことも看過できない。就職活動中の学生や社外労働者のフリーランスに対するパワハラ防止は義務ではなく、「望ましい取り組み」にとどめた。雇われている人にはある権利や保護がないのはおかしい。雇用契約の有無にかかわらず、誰もが平等にハラスメントから守られるべきだ。

 国際労働機関(ILO)が昨年採択した条約は、暴力とハラスメントを法的に禁じ、保護の対象にフリーや実習生、ボランティアなど幅広く含めた。批准国は刑事罰などの制裁を設けることが求められる。日本も批准に向け、国内の環境を整えていくべきだ。国際水準に追い付くために、政府は職場環境の改善を後押しし、対策の実効性を高めるための法整備を一層進めていかなければならない。




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ