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【9月入学制】「主役」抜きに断念は当然(2020年6月4日配信『高知新聞』-「社説」)

 さまざまな問題がある中、国民的議論も経ずに教育の大きな仕組みを拙速に変更するのは許されない。

 新型コロナウイルスの感染拡大による休校に伴い検討されていた「9月入学制」について安倍晋三首相は事実上導入を見送った。
 9月入学制は高知県の浜田省司知事ら有志の知事17人が政府に検討を要請した経緯がある。3月上旬、安倍首相の要請による一斉休校が全国で始まり、「学ぶ機会」が損なわれたり、学力格差が生じたりする懸念が出てきたからだ。

 安倍首相は4月下旬、「前広にさまざまな選択肢を検討したい」と国会で答弁するなど前向きな姿勢を示し、自民党もワーキングチーム(WT)で検討してきた。

 しかし、長く続く4月入学の変更はさまざまな課題がある。

 たとえば9月入学で卒業の時期がその手前の夏になると、多くの企業や官公庁で新卒者を春に一括採用している現在の雇用慣行と合わなくなる。政府や自治体の今の会計年度ともずれが生じる。

 問題は児童や生徒の人数だ。仮に来秋始めた場合、新小学1年生は前後の学年に比べて1・4倍の140万人になると文部科学省は想定する。新小1以外の小中高、大学などの在校生は現在の在籍学年が延びることになる。

 影響は社会全体に及び、学校教育法や地方自治法など改正が必要な法律は30本以上になるという。社会全体の変革に加え、大きな財政支出を伴うことも分かっている。

 さまざまな課題を検討してきた自民党ワーキングチームは「直近の導入は困難」と安倍首相に提言し、首相もそれを受け入れた格好だ。

 春先以降、導入の是非を巡って教育現場は混乱した。そもそも国民的な幅広い議論が必要な9月入学制を政治主導で短時間で結論を出そうとするような方法は正しかったのか。

 コロナ禍での「学ぶ機会」保障は、オンライン授業がどの地域でも可能な環境整備など急ぐべきことはたくさんあったはずだ。
 本年度から始まる大学入学共通テストでも同じように教育現場は混乱した。

 文科省は国語と数学への記述式問題を、英語には民間検定試験をそれぞれ導入しようとした。だが、採点の公平性や受験機会の問題を巡って受験生や教員らから反対の声が上がり結局見送りになった。

 共通テストも9月入学制も、「主役」は学生や児童生徒である。教員や保護者らもむろん関係している。そうした主役らの意見抜きに制度設計や導入は決められないはずだ。現場を混乱させた政府の責任は重い。

 欧米などでは秋入学が一般的に行われている。留学生受け入れや、日本から海外に留学する場合に都合がいいという指摘も以前からある。

 9月入学制のさまざま課題や利点を国民に分かりやすく示し、時間をかけて議論する。絶対欠かしてはいけない教育のプロセスだ。 




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