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遺族給付金訴訟 差別をまだ放置するのか(2020年6月6日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 差別容認につながる看過できない判決だ。

 犯罪被害者給付金を巡る訴訟だ。同性パートナーを殺害されたのに、給付金が不支給となった名古屋市の男性が、愛知県公安委員会の裁定取り消しを求めていた。

 名古屋地裁が「同性同士は(支給対象になる)事実婚と認められない」として請求を棄却した。

 問題が多い。まず、法の趣旨をないがしろにしている。

 故意の犯罪で死亡した被害者の遺族は、十分な被害弁償を受けられないケースが少なくない。給付金は遺族らの経済的、精神的負担を緩和することが目的だ。

 そのため、受け取ることができる配偶者を法律婚に限定せず、「事実上、婚姻関係と同様の事情にあった者」を含むと、幅広く規定している。異性同士という限定はない。裁判では、同性同士も該当するかが争われた。

 不支給とされた男性は、パートナーと約20年間同居していた。判決後「男女間のパートナーと同じように暮らしてきた。パートナーを失うつらさは何ら変わらない」とコメントしている。胸中の悲しみを察するに余りある。

 どの性を好きになるかという性的指向は人の個性だ。個人の意志で変えられない性質によって、法的に国に救済される遺族と、救済されない遺族がいることは、給付金の目的に反する。差別であり、人権を侵害している。

 もう一つの問題は、社会通念を判断基準としたことである。

 「(同性同士は)婚姻と同視できるとの社会通念が形成されていたとはいえない」ことを棄却の理由にした。多数派が差別を容認するなら、裁判所も肯定するのか。

 重視すべきは、憲法に定められた基本的人権の尊重である。それに反する社会制度を改めるのが、司法の役割のはずだ。

 社会通念は裁判所の判断でも形成されていく。人権にかかわる判断基準を、裁判所が社会通念に求めるのは責任放棄ではないか。

 同性同士の事実婚は、昨年9月の宇都宮地裁の判決などで認められるなど、司法の理解が広がってきていた。今回の判決は、社会に残る偏見を助長しかねない。

 全国の自治体では、同性同士のパートナーを認定する制度や条例が広がっている。それでも遺産の相続権や税制上の優遇措置などが認められていないのが実情だ。

 原告側は判決を不服として控訴する方針だ。控訴審は、法の下の平等が問われていると認識し、慎重に判断するべきである。



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