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内部告発職員の「隔離」 報復パワハラ許されぬ(2020年6月10日配信『中国新聞』-「社説」)

 「独居房のよう」「まさに報復人事」…。そんな声が地元から上がるのも当然ではないか。

 山口県田布施町が4月、新しく設けた部署に特定の職員を異動させた。同僚も部下もおらず、他の職員とも切り離された畳部屋で、これまでとは全く違う業務に従事させている。

 この職員は2年前、固定資産税の徴収を巡る長年のミスに気づき、上司に指摘したり町議に内部告発したりした。本来なら称賛されるべき行動だろう。

 にもかかわらず、町は1年間ミスを放置。さらに、この職員の業務評価を最低の0点としたり、2年間に3度も異動させたりして、冷遇し続けている。

 いずれも明確なパワハラであり、決して許されない。内部告発に対する報復の手段にしたのであれば、言語道断である。

 ところが、東浩二町長は独り職場への異動について「パワハラとの認識はない」「隔離のつもりはない」との説明に終始している。公平で公正な町政をつかさどる立場にあるとは思えない。人権はおろか、働く人の心身を守る意識はないのか。役場にはきのう、苦情電話が相次いだという。無理もなかろう。

 今月1日からパワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法が施行された。まず大企業に相談窓口の設置などを求めている。

 法によるパワハラ規制は初めてで、前進したのは間違いあるまい。しかし社会にはパワハラがまだ根深くはびこっている。田布施町の「隔離」問題は、それをあらためて突き付けたのではないか。

 実際、各地の労働局に寄せられた相談で、パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」は2018年度は約8万2千件に上った。7年続けて内容別のトップという。根絶には一層の取り組みが必要なことを示している。

 ようやく施行されたが、法律の足りない点も考えなければならない。労働者側が強く求めていた罰則規定は盛り込まれなかったことである。業務上必要な指導とパワハラとの線引きが曖昧だとして、罰則に後ろ向きな経営側の意向が反映された格好だ。罰則なしで実効性があるのか、疑問は拭えない。

 国際労働機関(ILO)は昨年、ハラスメントを禁じる条約を採択した。日本の法律にはない罰則規定や被害者救済措置も盛り込まれ、根底には人権を守る意識があるという。そうした国際的な水準から日本は大きく遅れている。対応が急がれる。

 私たちの意識も鍵を握る。主要110社を対象に共同通信が実施したアンケートが参考になる。課題として83%に当たる会社が挙げたのは「管理職や社員の意識向上」だった。「周知、研修の継続」や「相談窓口の活用促進」が続いた。職場、ひいては社会の意識を変えるため、政府の後押しも不可欠だろう。

 広告代理店大手電通の新入社員だった高橋まつりさんが、長時間労働やパワハラで過労自殺して4年余り。この事件などを機にパワハラが社会問題化して対策は進んできた。

 しかし田布施の問題が示すように、パワハラは人権問題であるとの意識の浸透や、罰則の設定、救済策の拡充といった課題が残されている。根絶への道を開くためにも、防止法を機に、解決に努めなければならない。



内部告発した職員を「隔離」か、山口県田布施町 1人だけ別施設の畳部屋、2年で3回異動➡ここをクリック



パワハラ規制法 「指導のつもり」許されぬ(2020年6月10日配信『西日本新聞』-「社説」)

 職場からパワハラやセクハラを根絶する確かな一歩としなければならない。

 大企業にパワハラ防止対策を義務付けた「女性活躍・ハラスメント規制法」が今月施行された。従業員への啓発、相談窓口の設置などが求められる。2022年4月には中小企業も対象に加わる。

 実効性ある防止対策が経営の重要課題に位置付けられた、と受け止めるべきだろう。この問題への取り組みは企業の社会的評価に直結し、営業成績や新卒採用にも影響が出る時代だ。

 都道府県の労働局などに寄せられる職場のいじめや嫌がらせの相談は増加傾向にある。陰湿なパワハラが長期に及び、心の病を患う人や自殺に追い込まれる人が後を絶たない。一般企業に限らず、団体や学校など多くの職場で油断はできない。

 九州でこんな事例があった。今年4月、門司海上保安部(北九州市)がパワハラを理由に男性職員を懲戒処分した。男性は部下に「いつでも辞職できるから準備しておけ」などと暴言を吐き、座っている椅子を蹴るといった行為を加えたという。

 規制法のパワハラの定義にも当たる行為だ。定義は「優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されるもの」となっている。

 この海保職員は「指導のつもりだった」と話したという。パワハラが顕在化するたびに繰り返される釈明である。指導という名目やその延長線上で、過酷ないじめや嫌がらせが行われたケースは枚挙にいとまがない。

 一方、指導とパワハラの線引きは難しいという声があるのも事実だ。どのように分ければよいのか。厚生労働省は六つの類型を示し、該当する事例と該当しない事例を説明している。だが曖昧な印象は拭えない。

 例えば、能力や経験からみて程度の低い仕事を与える「過小な要求」という類型がある。「能力に応じ、一定程度、業務の内容や量を軽減すること」はパワハラに当たらないという。上司が恣意(しい)的に部下の能力を判断することが可能で、「一定程度」の範囲も明確ではない。

 厚労省は今後も関連の司法判断の分析などを急ぎ、適宜、指針を見直すべきだ。

 企業側では、職場ごとに上司と部下の日常的なコミュニケーションの積み重ねが大切だ。経営者には被害認定を不当に狭めることなく、被害者の声に寄り添う姿勢を求めたい。

 パワハラは企業の業績が落ちると増える傾向がある。新型コロナウイルス感染拡大による景気の冷え込みは深刻であり、パワハラ対策は待ったなしだ。






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