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マイナンバー連結 一律給付、迅速化優先を(2020年6月12日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 マイナンバーと個人の持つ預金口座を連結する「ひも付け」について、高市早苗総務相は1口座に限定して国への登録を義務化する方針を示した。政府は関連法案を来年の通常国会に提出する考えだ。

 背景には、新型コロナウイルス対策として一律10万円を全国民に配る特別定額給付金事業の遅れがある。総務省の最新集計では、全世帯の約3割にしか給付されていない。

 マイナンバーと1口座をひも付けすれば自治体は口座把握の手間が省け、災害時などに現金給付する場合も迅速化できる。将来に備えて義務化が必要というのが政府の考えのようだ。

 マイナンバー制度は運用から4年半近くが経過した。個人番号カードは普及が進まず、交付率も約16%にすぎない。内閣府調査では取得予定なしが半数を超え、その理由として6割近くが「必要性が感じられない」を挙げている。

 理解が進まない現状を見れば、義務化には慎重な検討が必要だろう。性急な議論で強引に実現すれば、制度そのものへの不信感を増幅しかねない。

 制度上のトラブルや安全対策の不備はこれまで、たびたび発生。自治体でつくる管理法人ではシステム障害が続発、マイナンバーを含む個人情報の誤送信や記載ファイルの紛失なども自治体で起きている。

 それだけに国や自治体が取り組むべきなのは、個人情報の安全管理徹底と一層の制度周知だ。それを十分に行わないままでひも付け義務化への理解を得ようとするのは無理がある。迅速な給付のためというが、本当に必要なのかとの疑問も残る。

 一律給付に当たり兵庫県加古川市は、市民への郵送書類に記載した独自の世帯番号でオンライン受け付けを開始。マイナンバー以外でも、手続きを簡素化して支給している。政府はこうした工夫例を収集、マイナンバーに頼らない方法を検討することも視野に入れるべきだ。

 一律給付では、生活困窮者の存在を忘れてはならない。銀行口座や身分証明書がないという人もいる。最も必要な人の手にいつまでたっても届かないのであれば、事業は本来の役割を果たさない。将来に備えてひも付けの義務化を考えるよりも、目の前の生活困窮者対策にもっと力を入れるべきだ。

 義務化に関しては、個人情報を強制的に把握されることに抵抗を覚える人もいるはずだ。必要な人が任意で口座を登録するだけで十分ではないのか。1口座の登録義務化が将来、個人の全口座への拡大と国による監視強化につながるようなことはないのか。そうした疑念も払拭(ふっしょく)できない。

 政府と自治体が今取り組むべきは一律給付の迅速化を図る改善策だ。将来に備えたひも付けの義務化についてはまず、その利点と問題点をじっくり検討することから始めるべきだ。



マイナンバーの利用拡大 監視への不安、拭えない(2020年6月12日配信『中国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの緊急対策をきっかけに、マイナンバーの利用拡大へ向けた動きがにわかに出ている。

 マイナンバーは住民票がある全ての人に割り当てられた12桁の番号で、行政が識別に使う。2016年に運用が始まった。政府はこのマイナンバーのシステムに、全ての人が一つの預貯金口座の情報をひも付けて登録することを義務化する方針を打ち出した。

 実現すれば、国の給付金などの速やかな支給につながるとしている。だがマイナンバーの取り扱いは、個人情報の流出リスクもあって、プライバシー保護の観点から慎重を期す必要がある。性急に議論を進めてはならない。

 制度見直しのきっかけは、国民への一律10万円の給付を巡り、マイナンバーカードを使った電子申請が混乱したことだ。

 システムに負荷が掛かってトラブルが続出し、途中で電子申請を取りやめる自治体が相次いだ。振込先となる預貯金口座が事前に登録されていなかったため、自治体の職員が手作業で入力したり確認作業に手間がかかったりした。

 入力の誤りも多く、2重給付も発生した。結局、多くの自治体が振り込みまでかなりの時間を要している。給付金を手にした人は今月上旬で、3割ほどにとどまっている。

 自治体の事務業務について、政府の認識が足りなかったと言わざるを得ない。カードの普及に前のめりになったようにも映り、見切り発車だったと言われても仕方あるまい。給付の遅れの責任は重い。

 速やかな支給に向けた制度の改善や法整備は必要だろう。ただ懸念される問題点も多い。

 今回は見送られたものの、政府は全ての預貯金口座へのひも付けの義務化を念頭に検討を進めていた。1口座の登録義務化を先行した形だが、希望者には任意で複数の口座の登録を認めており、全口座を対象にする構えを崩していない。

 国や自治体が資産状況を把握し、本当に生活に困っている人に絞った支援をしたり、税金も公平に徴収できたりする効果を狙っているという。しかし、うのみにはできまい。

 マイナンバー制度は、もともと個人情報を管理しようとする性格が強い。全口座がひも付けされることで、どこまで所得や資産の情報を把握され、どう活用されるのか、不安は大きい。

 1人1口座の登録についても、どうやって義務化するのか道筋が見えない。幼児や生活困窮者の中には、金融機関に口座を持っていない人もいるのではないか。登録したくない人には罰則を設けるのだろうか。

 マイナンバーカードは導入から4年たっても、普及率は16%にとどまる。利便性が乏しく、個人情報保護への不安が根強いためだ。本当に便利で安全だと国民が認識すれば、カードを持つ人は増え、任意でも口座を登録するはずだ。

 来春からは健康保険証としてカードが使えるようになる。ただ、ひも付けされる個人情報が増えれば、流出リスクや監視強化の恐れも増す。

 政府には、国民にどんなメリットや懸念があるのか丁寧な説明が求められる。安易な利用拡大は慎むべきだ。





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