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種苗法改正 懸念の声に耳を傾けたい(2020年6月12日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 農業、食料の将来に関わる問題だ。懸念の声をしっかり受け止めながら考えたい。

 種苗法改正案に対して「農家の負担が増える」といった批判が集まり、政府・与党は今国会での成立を事実上見送った。

 ブランド果樹など日本の品種が海外に流出して勝手に生産されるのを防ぐため、開発者の権利を強化するための改正である。

 批判は、個々の農家が収穫した作物から種を採取して次回の栽培に使う「自家増殖」を制限し、開発者の許諾制にする改正内容に焦点が当たっている。これまでは原則、農家の自由だった。

 許諾料の徴収が増えれば農家への影響は大きい。女優の柴咲コウさんがSNSで懸念を発信したこともあり、一般の市民や農家の間でも関心が高まった。

 品種登録された作物が対象で、未登録の一般品種に許諾は必要ない。現在普及している9割は一般品種のため、農水省は、大きな負担にはならないと説明する。

 すぐに影響するケースは少ないかもしれない。だが将来はどうか。種苗の知的財産への関心は高く、登録は今後増える。農家負担は増えていく可能性がある。

 一方、中国や韓国で日本の高級ブドウ「シャインマスカット」が無断栽培されるなど、海外流出は近年、深刻化している。コストと時間をかけて開発した成果が奪われるのは放置できない。

 法改正によらなくてもできることはある。効果的なのは海外での品種登録の推進だろう。改正を待つことなく力を入れたい。

 種苗法を巡る議論の根底には、種子やその遺伝資源について、開発者側の権利と、栽培する農家側の権利のバランスをどう取っていくか、という課題がある。

 技術や資金を投入して開発した私的財産としての性格に重きを置くか。多くの人がアクセスできる公的側面を重視するか。それによって改正案への評価も変わる。

 政府は2018年、都道府県にそれぞれの地域の風土に適したコメや麦の品種開発を義務付けていた種子法を廃止した。民間参入を妨げているとの理由からだ。

 種苗法改正に反対する農家や市民の多くが、今回の改正も種子法廃止の延長にあるとみている。

 やがて大規模な育種が可能なグローバル企業が種子の主な開発者となり、農業の多様性が失われると危ぶむ声が聞かれる。

 地域農業をどう支えるかという視点が政策に希薄なままでは、懸念が現実になりかねない。




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Author:gogotamu2019
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