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成年後見制度20年 本人の意思を尊重し生活支援を(2020年6月12日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 認知症や知的、精神障害などで判断力が十分でない人を支援する成年後見制度が始まって20年がたった。同年に導入された介護保険とともに高齢化社会を支える「車の両輪」と期待されたが、利用は2018年末時点で約22万人と伸び悩んでいる。

 成年後見制度では弁護士や社会福祉士、親族など家庭裁判所に選任された後見人が、本人に代わり不動産や預貯金の管理、福祉の利用手続きを行い、生活の見守りも担う。後見人に選ばれた人の約8割を親族以外が占める。

 高齢化が進み認知症の人や家族の援助が得られない独居高齢者らが増加する中、制度を必要とする人は数百万人いるとみられている。一方、内閣府の調査では制度の内容を知っているとした人は半数に届かなかった。財産管理ばかりが重視され、本人の意思の尊重や生活支援など福祉的視点が不足しているとの指摘もある。制度の周知とともに、利用者本位の信頼される制度にしていかねばならない。

 利用が進まないのは後見人の力が強いことが一因とされる。原則、財産に関する全ての法律行為を代理できるため後見人によっては本人の意思に反して物事が決められ、生活に大きな支障を来す恐れもある。実際、自宅での生活を望んでいるのに施設に入所させられたといったような事例も起きている。

 こういった状況を踏まえ厚生労働省の有識者会議は3月、利用者本人の意思を尊重するよう運用の改善を求める報告書をまとめた。ガイドライン作成のほか後見人の研修、不正防止の取り組みの徹底、関連機関の調整役を担う「中核機関」の早期整備を盛り込んだ。厚労省は22年3月までに中核機関か、それに準じる「権利擁護センター」の設置を全1741市区町村で目指すが19年10月時点で中核機関160、権利擁護センター429にとどまる。中核機関は利用者や親族の相談を受けたり、後見人の候補者を家裁に推薦したりするなど制度利用促進の鍵を握るとされ、設置が急がれる。

 生活支援を確実に実施するため最高裁は今年2月、後見人の報酬算定方法の考え方をまとめた。見守りといった日々の生活支援に対する報酬を手厚くする方向で、支援の実施状況に応じて増減させる。実際の導入は各家裁の判断だが、「終わりがない」支援業務の質や量が適正に反映されるかどうか疑問の声もある。また、厚労省は後見人のニーズ増加を見込み一定の知識を身に付けた「市民後見人」の養成を図るが、進んでいるとは言えない。後見人を必要とする人は複雑な背景があることも多く、市民後見人個人での対応には限界もあるとされる。

 制度普及へ課題は山積していると言わざるを得ない。安心して本人が望む暮らしができるよう、国や自治体は後見人となる人材の育成や、多職種で連携して支援する仕組みづくりへ火急に取り組まねばならない。




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