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優生政策の調査 立法府の責任を果たせ(2020年6月22日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 障害者らに不妊手術を強いた旧優生保護法は戦後の現憲法の下で半世紀近く存続した。その重大な人権侵害は法の改定後も20年余にわたって省みられなかった。何がそれを許したのか。

 国会は立法府として徹底して検証する責任がある。過ちに正面から向き合うことなしに、根深く残る差別意識や優生思想を克服する手がかりはつかめない。

 衆参両院が旧法の成立過程や被害状況の調査を始めた。各院の調査部門が国立国会図書館とも協力して調べ、報告書をまとめる。3年ほどかかる見通しだという。

 昨年4月に議員立法で成立した被害者の救済法は「国は、優生手術等に関する調査その他の措置を講ずる」と明記した。1年余を経て、政府が調査を本格化させる構えは見えない。遅きに失した面があるとはいえ、国会が自ら動いたことは意義がある。

 ただ、どこまで踏み込むかは不透明だ。調査に関して救済法の立案段階で、法的な責任に絡む検証の体裁は取らないと方向づけられていたことが気にかかる。

 救済法そのものが旧法の違憲性に触れず、「反省とおわび」の主体をあえてぼやかして、責任の所在を明確にしなかった。調査でも核心を曖昧にすれば、国会としての責務は果たせない。

 「不良な子孫」の出生防止を掲げた旧法は1948年に議員立法で全会一致で成立した。政府は都道府県別の実績を示して「成績向上」を促し、手術件数を競い合う状況を生んでいく。兵庫県が60年代に始めた「不幸な子どもの生まれない運動」は各地に広がり、優生政策を後押しした。

 旧法が96年に改められた際、実質的な審議はなく、責任も問われていない。その後、補償を求める訴えを、政府は「当時は適法だった」としてはねつけてきた。

 状況を動かしたのは、当事者が初めて起こした裁判だ。宮城の女性が一昨年、国に賠償を求めて提訴したことをきっかけに各地で被害に目が向けられ、実態の一端が明らかになってきた。

 子宮の全摘出など、法が認めていない手術が横行していたことも分かっている。年月を経て記録や資料の散逸、廃棄が進み、調査は困難を伴うものの、人権と尊厳が幾重にも踏みにじられた被害を埋もれさせてはならない。

 優生政策を担った都道府県の責任も重い。全体像の解明には、国会の調査とともに、都道府県が自ら、手だてを尽くして資料や証言を掘り起こすことが欠かせない。




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