FC2ブログ

記事一覧

マイナンバーが漏洩しても…政府は「さあ?」 筆者が絶望した無能ぶり(2020年6月23日配信『AERA.com』)


斎藤貴男

キャプチャ
高市早苗総務相は、1人1口座の国への登録義務化を検討する考えを明らかにした(写真:総務省)

キャプチャ0
AERA (アエラ) 2020年 6/29 号【表紙:浜辺美波】 [雑誌]

 特別定額給付金の手続きで、注目を集めるマイナンバーカード。政府は口座のひも付けを義務化したい考えだが、国民には様々なリスクがある。AERA 2020年6月29日号の記事を紹介する。
*  *  *
 熟慮されるべきは、「人間中心の社会」という言葉の真意なのである。ビッグデータやAI(人工知能)を駆使する国策「ソサエティー5.0」のキャッチフレーズだ。狩猟、農耕、工業、情報……と進んできた社会ステージを次の段階に引き上げ、<サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立>(内閣府HPより)できる近未来を構築するという。

 いきなり何のことだと思われるかもしれないが、これは重大な問題提起であるはずだ。新型コロナ禍のただ中にある現在を、さらにはアフターコロナを生き抜いていくために。

 政府は住民票があるすべての人に割り当てた12桁の“マイナンバー”と、預貯金口座のひも付けを義務化したい意向だ。来年の通常国会に関連法案の提出を目指すと、高市早苗総務相が9日、閣議後の記者会見で明らかにした。

 当面は1人につき1口座。従来は全口座へのひも付けこそ「国民の負担軽減につながる」と強調していた高市氏だが、プライバシー権の侵害や、情報漏洩の恐れを懸念する声が大きいのに配慮した形らしい。

 とはいえ全口座に網をかけたい政府の姿勢に変わりはない。2013年5月に可決・成立したマイナンバー法が、施行前の15年9月に改正された際に盛り込まれた通りの既定路線だ。問題は、それが今回、まるで今後のコロナ対策の一環でもあるかのように語られ、実行が急がれている点である。

 高市発言の前提には、一律10万円の特別定額給付金をめぐる混乱がある。オンライン申請で暗証番号を忘れたり、入力を間違えてハネられた人々が全国の市区町村窓口に殺到。連日のシステムダウン、振り込みも大幅に遅れた惨状は記憶に新しい。

 政府があらかじめ振込先を承知していたら、こんなことにはならない。全口座をひも付けて、各人の所得や資産の全容を把握できれば、本当に困窮している人だけへの、無駄のない支給が可能。社会保障番号制度が整備されている米国が、条件を絞って、最大1200ドルを直ちに振り込んだように、というのが、高市発言の趣旨だった。

 だが、この論法には飛躍がありすぎる。あの混乱の原因は、オンライン申請に取得率わずか16%の、要は社会的に受容されていないマイナンバーカードを無理やり噛ませた愚挙に他ならない。この機に乗じてカードの浸透を企てたスケベ心が卑しい。

 政府の個人情報保護委員会(PPC)の報告によれば、18年度におけるマイナンバー法違反またはその恐れのある情報漏洩などの事案は、134機関(地方自治体80、国の行政機関9、民間事業者45)で279件。もちろん氷山の一角だ。制度がスタートする直前、内閣府のフリーダイヤルに相談電話をかけてみた時の絶望を思い出す。

──私はフリーの物書きで、100社近い相手に番号を知らせることになります。取引先が多いと、情報漏洩のリスクも高くなる。怖いのですが。

「情報を不正に提供すれば、厳しい罰則があるので、漏れないことになっています」

──悪意がなくても漏れて、なりすましの被害に遭い、でも漏洩元は不明という場合は? 制度自体に欠陥があるわけだから、当然、政府の責任で、弁償してくれますよね

「さあ?」

 マイナンバーが国民に強いる負の部分を顧みる発想など、政府にはハナからない。そして今回の騒動で明白になったのは、人間を番号として扱うという大事業とはおよそ釣り合わぬ、彼らの恐るべき無能ぶりである。(ジャーナリスト・斎藤貴男)

※AERA 2020年6月29日号より抜粋






スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ