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「女性や障害者など幅広く意見聞いて」 新型出生前新指針に倫理学者ら「拙速な結論危惧」提言(2020年6月24日配信『毎日新聞』)

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日本産科婦人科学会の新指針について記者会見で意見を述べる「NIPTのよりよいあり方を考える有志」の柘植あづみ・明治学院大教授(中央)ら=東京都千代田区で2020年6月24日午後1時30分

 妊婦の血液から胎児の染色体異常を推定する新型出生前診断(NIPT)を巡り、実施施設を診療所など小規模な医療機関にも広げる日本産科婦人科学会(日産婦)の新たな指針に関連学会が合意したことを受け、産科医療や生命倫理の専門家らでつくる「NIPTのよりよいあり方を考える有志」は24日、東京都内で記者会見し、「女性や障害者などの幅広い声を取り入れるべきだ」と慎重な議論を求めた。

 メンバーの斎藤有紀子・北里大准教授(生命倫理学)は「学会の合意のみで決まったかのようなあり方は残念。妊婦の不安や葛藤に寄り添える体制をどう作っていくかが重要だ」と訴えた。

 日産婦の新たな指針は、日本小児科学会が認定した小児科医と連携して妊婦を支援することなどを条件に、小規模な医療機関にも実施を認めている。これまで日本小児科学会や日本人類遺伝学会は安易な拡大を懸念して反対してきたが、こうした条件に同意して容認に転じた。

 日産婦は今後、厚生労働省に新指針を報告し、運用するかを正式に決める。運用されれば、NIPTの実施認定施設は現在の109カ所から70カ所ほど増える可能性があるという。

 この日の記者会見には、学者やダウン症児の親ら6人が参加した。有志メンバーの一人、白井千晶・静岡大教授(社会学)は「経済的な問題を抱えた人やシングルマザーなど、さまざまな事情で妊娠に葛藤を抱える人は少なくない。検査の入り口だけではなく、検査後の支援をどう継続していけるかを社会全体で話し合うべきだ」と提言した。

 柘植あづみ・明治学院大教授(医療人類学)は「NIPTを受ける妊婦は、検査前後に相談できる場所や支援先を求めている」と指摘。「今回の新指針がどのように作られたのか、プロセスが不透明。医療界だけではなく、妊婦や障害者、福祉の専門家などさまざまな立場の意見を取り入れていくべきだ」と訴えた。

 有志は17日、「拙速な結論が出されかねない状況を危惧する」としてNIPTのあり方に関する提言をまとめ、国や日産婦などの関連学会に提出。指針を決める議論に妊婦や障害者など当事者を参加させる▽妊婦に情報提供する際は医師の価値観を反映させない▽妊婦の心理や障害者の生活を学ぶ医師研修を充実させる▽検査で異常が見つかった際に妊婦の意思決定を支援する体制を充実させる——ことなどを求めている。

 NIPTは、胎児のダウン症など3疾患の可能性が、母親からの採血だけで妊娠早期に比較的高い精度で分かる。ただし、胎児の異常を理由とした中絶につながる懸念もあり、国内では2013年、専門家のカウンセリングを行うなど施設の認定に厳しい条件を付けて始まった。

 ところが、相談体制が不十分なままに検査結果だけを伝えるなどの認定外施設が急増。高齢出産の増加に伴いNIPTの需要が高まる中、検査の質を保ちながら、希望する妊婦の受け皿をどう確保していくか、日産婦などが話し合いを続けていた。



新型出生前診断の指針改定に「待った」。有志の会が日産婦などに提言書を提出「妊婦のケア、充実を」(2020年6月25日配信ハフポスト』)

日産婦が新型出生前診断(NIPT)の指針改定を発表。産婦人科医などでつくる有志の会が、「拙速な方針決定はすべきではない」として提言をまとめ、日産婦や国などへ提出した。

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会見する呼びかけ人の柘植あづみ・明治学院大教授(左から2人目)ら有志のメンバー

妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断(NIPT)のあり方をめぐり、医師や専門家などの「有志の会」が、実施施設の拡大などについて拙速な結論を出さないよう求める提言書を国や指針を定める日本産科婦人科学会(日産婦)などに提出した。有志の会は6月24日記者会見を開き、「妊婦や障害のある子どもの家族など、様々な立場の人から実態を聞かず、医師だけで指針をまとめることは問題」などと訴えた。

NIPTについては、日産婦が6月20日、実施を小規模な医療機関にも広げるよう指針を改定したと発表している。その背景には、認定を受けず独自に検査する施設が増加する実態があった。非認可の施設では、妊婦に対して十分な説明を行わなかったり、診断前後の相談に応じなかったりする問題が確認されていた。
そのため、日産婦は質を担保しながらも認定施設を増やす必要があるとして、2019年3月、小規模な医療機関も認定を受けられるよう要件を緩和する指針案を公表していた経緯がある。

■提言のポイントは?

提言書を作成したのは、産婦人科医や生命倫理の専門家、妊婦の支援者など有志16人でつくる「NIPTのよりよいあり方を考える有志」。

有志の会が作成した提言の主な内容をまとめた。

・NIPTなど出生前検査・診断の施策・指針の策定に、検査の対象となる妊婦や家族らの支援者、病気や障害のある子どもの親など当事者の参加を求める

・医師など医療従事者は、NIPTの情報提供の際、自らの価値観を押し付けないよう留意し、女性の意思決定を尊重する

・実施施設は、妊婦へのカウンセリングや相談体制の質を確保するため、関係者への研修を充実させる。流産や中絶などで胎児を失った人へのグリーフケアの研修も求める

・行政機関は、母子保健や障害者福祉、子育て支援などに関わる情報を、医療従事者や妊婦がアクセスできるように環境整備する

・診断の結果が陽性と判明し、意思決定の支援が必要な女性へのケアを充実させる

・検査を取り巻く社会的問題は妊婦やパートナーだけに負わせない。病気や障害を持つ人への偏見や差別の解消と支援の拡充を継続していくべき

・検査を受けた女性がその後の選択について必要以上に葛藤する現状を改善するため、女性のリプロダクティブ・ヘルス(ライツ)の実現を重視する

■「世の中全体で考えるべき」

有志の会は昨年6月、NIPTの実施施設の要件緩和などを盛り込んだ日産婦の指針見直しの方針を受けて発足。呼び掛け人で明治学院大の柘植あづみ教授(医療人類学・生命倫理学)は「改定のプロセスを公表せずに指針が決まってはいけない」と、設立の目的を説明した。有志の会はこれまで6回にわたり勉強会を開き、今回の提言書をまとめたという。

会見では、妊婦の支援者や専門家など、それぞれの立場から現状報告があった。

脳性麻痺の長女とダウン症の長男を持つ母で、NPO法人親子の未来を支える会で理事・ピアサポーターを務める水戸川真由美さんは「これは夫婦だけの問題ではない」と指摘。障害者が社会でどう生きていくかなど、背景には様々な課題があるとし「NIPTについてだけでなく、様々な面から世の中全体で考えていかなければいけない」と話していた。

認定遺伝カウンセラーの田村智英子さんは、妊婦が産科医にNIPTについて尋ねた時に「命の選別です、調べてどうするんですか?」という否定的な対応をされたり、NIPTに関して長い間説明を受けられず、質問した際に「今更言われても遅い」と言われたりといった事例を紹介。「現場で何が起こっているかが伝わらないまま、指針の改定が進められている」と懸念を示した。さらに、「現在、検査を実施している認定施設の(相談支援の)質もばらつきがある」と課題を述べた。

■新指針では小規模な医療機関でも実施可能に

NIPTは、妊婦の血液に含まれる胎児のDNAから胎児の染色体異常を推定する検査で、日本では2013年に導入された。確定診断には羊水検査などが必要だが、流産や感染症の危険がない。

ただ、命の選別につながりかねないなどの指摘もあり、朝日新聞デジタルなどによると、日産婦が産科医や小児科医ら複数の専門医による相談体制が整っていることなど厳しい指針を策定。日本医学会が主に大学病院や総合病院を認定し、原則35歳以上の妊婦を対象に行ってきた。実施施設は全国に109カ所ある(2019年度末)。

一方で、認定を受けず独自に検査する施設が増加。妊婦に対して十分な説明を行わなかったり、診断前後の相談に応じなかったりする問題が確認されていた。

日産婦は質を担保しながらも認定施設を増やす必要があるとして、2019年3月、小規模な医療機関も認定を受けられるよう要件を緩和する指針案を公表。これに対し、日本小児科学会や日本人類遺伝学会が慎重な扱いを求めていたため、現場で指針案の運用はしていなかった。

毎日新聞などによると、両学会が、妊婦の支援強化などを条件に実施施設の拡大容認に転じたことから日産婦は指針改定に踏み切った。 厚生労働省の了承を得られれば、新指針の運用を始めるという。

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新出生前診断 開かれた議論の場が要る(2020年6月25日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 議論の経過が全く見えないままの方針転換である。新出生前診断が、なし崩しに一般化することにつながらないか、心配になる。

 日本産科婦人科学会(日産婦)が、開業医などの小規模な医療機関でも検査ができるように指針を改定した。反対していた日本小児科学会と日本人類遺伝学会の合意を得たという。厚生労働省の判断を待って運用する。

 妊婦の血液に含まれる胎児のDNAから3種類の染色体異常を調べる検査だ。2013年に臨床研究として始まり、遺伝の専門医らによるカウンセリングをはじめ厳格な条件を課してきた。

 認定を受けた医療機関は大学病院など100余にとどまる。日産婦は昨年、実施施設の拡大を図る方針を示したが、小児科学会や遺伝学会から、不十分な体制の下で安易に広がりかねないと批判が出て、見送っていた。

 それがどういうやりとりを経て合意に至ったのか。水面下での協議の過程はうかがい知れない。厚労省が設けた有識者会議の議論も中途だ。見極めるまで凍結するとしていた日産婦が動きを先行させた理由も釈然としない。

 新たな指針は小規模施設での検査について、小児科学会が認めた小児科医との連携や、陽性だった場合に遺伝の専門医がカウンセリングをする仕組みを条件とした。それで当事者を支えられるのか、肝心の点が心もとない。

 実施施設の拡大を図る背景にあるのは、無認可で検査を行う施設が増えたことだ。検査結果を知らせるだけのところも目に留まり、野放図に広がりかねない実態がある。ただ、現状に引きずられるように実施施設の枠を拡大することが解決になるのか疑問だ。

 胎児の異常を見つける出生前診断は「命の選別」につながる危うさをはらむ。陽性が確定した人の9割が中絶を選んでいる現実も踏まえておかなくてはならない。

 何より重要なのは、当事者を交えて話し合う場だろう。透明性を欠く学会の判断に委ねられない。診断が確定して産む、産まないの選択をした人、障害がある人や出産と子育てを経験した親…。幅広く意見を出し合って、方向づけをしていく必要がある。

 障害者らに不妊手術を強いた優生政策は改められたが、国家による強制ではなく個人の選択に基づく形で新たな優生社会が姿を現す恐れも指摘されている。問題の根は深い。一人一人が向き合って考えるための開かれた議論の場を社会に広げたい。




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