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新出生前診断 開かれた議論の場が要る(2020年6月25日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 議論の経過が全く見えないままの方針転換である。新出生前診断が、なし崩しに一般化することにつながらないか、心配になる。

 日本産科婦人科学会(日産婦)が、開業医などの小規模な医療機関でも検査ができるように指針を改定した。反対していた日本小児科学会と日本人類遺伝学会の合意を得たという。厚生労働省の判断を待って運用する。

 妊婦の血液に含まれる胎児のDNAから3種類の染色体異常を調べる検査だ。2013年に臨床研究として始まり、遺伝の専門医らによるカウンセリングをはじめ厳格な条件を課してきた。

 認定を受けた医療機関は大学病院など100余にとどまる。日産婦は昨年、実施施設の拡大を図る方針を示したが、小児科学会や遺伝学会から、不十分な体制の下で安易に広がりかねないと批判が出て、見送っていた。

 それがどういうやりとりを経て合意に至ったのか。水面下での協議の過程はうかがい知れない。厚労省が設けた有識者会議の議論も中途だ。見極めるまで凍結するとしていた日産婦が動きを先行させた理由も釈然としない。

 新たな指針は小規模施設での検査について、小児科学会が認めた小児科医との連携や、陽性だった場合に遺伝の専門医がカウンセリングをする仕組みを条件とした。それで当事者を支えられるのか、肝心の点が心もとない。

 実施施設の拡大を図る背景にあるのは、無認可で検査を行う施設が増えたことだ。検査結果を知らせるだけのところも目に留まり、野放図に広がりかねない実態がある。ただ、現状に引きずられるように実施施設の枠を拡大することが解決になるのか疑問だ。

 胎児の異常を見つける出生前診断は「命の選別」につながる危うさをはらむ。陽性が確定した人の9割が中絶を選んでいる現実も踏まえておかなくてはならない。

 何より重要なのは、当事者を交えて話し合う場だろう。透明性を欠く学会の判断に委ねられない。診断が確定して産む、産まないの選択をした人、障害がある人や出産と子育てを経験した親…。幅広く意見を出し合って、方向づけをしていく必要がある。

 障害者らに不妊手術を強いた優生政策は改められたが、国家による強制ではなく個人の選択に基づく形で新たな優生社会が姿を現す恐れも指摘されている。問題の根は深い。一人一人が向き合って考えるための開かれた議論の場を社会に広げたい。





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Author:gogotamu2019
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