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もやウィン炎上(2020年6月27日配信『中国新聞』-「天風録」)

 「パブロフの犬」で知られる生理学者パブロフがノーベル賞を受けたのは条件反射を発見したからだと最近まで思っていた。実際には消化の研究への受賞で、条件反射は研究の副産物なのだそうだ。米国の神経科学者が編んだ本に教わった

▲思い込みや勘違いは、誰にでもある。だが誤った情報を拡散すれば大問題になる。それが政権を握る人たちならなおさら。自民党が、ネット上に公開した4こま漫画が「炎上」している

▲「もやウィン」なるキャラクターが改憲の必要性を訴えている。「ダーウィンの進化論ではこういわれておる」「唯一生き残ることが出来るのは変化できる者」と。大真面目に主張するが、ダーウィンはそんなことを述べてはいない。早速、科学者たちから批判を浴びる

▲生物が環境に合わせて変わるのではない。多様な生物の一部が結果的に残る。それが進化論の考え方だ。ナチスドイツは優生思想とこじ付け、ユダヤ人や障害者の虐殺を正当化した。そんな歴史を知らないのだろうか

▲当の自民党は、誤りを認めないばかりか、重鎮が「ダーウィンも喜んでいる」と開き直っている。進化どころか、退化を疑いたくなるようなありさまである。



進化(2020年6月27日配信『高知新聞』-「小社会」)

 ダーウィンが1859年に発表した「種の起源」は当初、宗教界などから強く批判されたという。無理もない。あらゆる生物は神が創造したのではなく、進化がもたらしたと唱えた。

 ではダーウィンのいう進化とは。東京農工大名誉教授の小原嘉明さんが三つにまとめている。(1)生物には変異がある(2)生存と生殖に有利な変異は維持され、不利な変異は排除される(3)変異は親から子へ受け継がれる。

 この進化論は後に遺伝学とともに発展し、生物学の基礎になっていく。変異はDNAの複製ミスなどで偶然起きることも分かってきた。環境に適合する変異をした生物が結果的に生き残る。決して意図的に変化するのではないという。

 憲法改正を目指す自民党がホームページに掲載した4こま漫画が物議を醸している。進化論を取り上げ、「唯一生き残ることができるのは、変化できる者」だとして、日本の発展に「憲法改正が必要」だと呼び掛けた。

 生物学者は「ダーウィンはそんなことは述べていない」と批判。地球上には、ほとんど変化せずに存続してきた生物もいるから、進化は「良いも悪いもない」との指摘も無理はない。

 日本国憲法は「不磨の大典」ではない。国民が必要と判断すれば、改正もあり得る。とはいえ為政者が「進化」と誘導するのはどうか。改正のための改正、つまり意図的な変異になりはしないか。ダーウィンにも聞いてみたいものだ。



自民党広報の進化論誤用やめて(2020年6月28日配信『共同通信』)

学会が反対の声明


 自民党がダーウィンの進化論を誤用する形で憲法改正を主張したことに、日本人間行動進化学会(会長・長谷川真理子総合研究大学院大学長)は28日までに「生物進化がどのように進むのかの事実から『人間社会も同様の進み方をするべきである』とする議論は間違いだ」と反対する声明を出した。

 問題となったのは自民党広報がインターネットに投稿した4こま漫画。進化論では「生き残ることができるのは最も強い者でも最も賢い者でもなく、変化できる者だ」として、憲法改正を主張した。

 声明は「ダーウィンの進化論は思想家や為政者に誤用されてきた苦い歴史がある」としている。



「ダーウィンの進化論」に関して流布する⾔説についての声明
2020 年 6 ⽉ 27 ⽇
⽇本⼈間⾏動進化学会 会⻑
⻑⾕川眞理⼦
⽇本⼈間⾏動進化学会 理事会
(副会⻑) ⽵澤正哲
(常務理事)⼤槻久、⼤坪庸介 、⼩⽥亮、中⻄⼤輔、平⽯界
(理事)⻲⽥達也、佐倉統、⾼橋伸幸、瀧本彩加、中丸⿇由⼦、橋本敬橋彌和秀、三船恒裕、明和政⼦、⼭本真也、他 4 名

 インターネット上の⾃由⺠主党広報ページに、ダーウィンの進化論が誤った形で引⽤されて議論になっています。この件に関連して⽇本⼈間⾏動進化学会理事会からの⾒解を述べます。

 本学会は、現代⽣物学の成果を踏まえて、進化という観点から⼈間の⾏動や社会を理論的・実証的に理解することを⽬指して設⽴された集まりです。

 歴史を振り返るとダーウィンの進化論には、思想家や時の為政者によって誤⽤されてきた苦い歴史があります。⽣物進化がどのように進むのかという事実の記述を踏まえて、「⼈間社会も同様の進み⽅をするべきである」もしくは「そのように進むのが望ましい」とする議論は「⾃然主義」と呼ばれてきました。これは「⾃然の状態」を、「あるべき状態だ」もしくは「望ましい状態だ」とする⾃然主義的誤謬と呼ばれる「間違い」です。論理的には成⽴しないはずの議論であるにもかかわらず、進化論と⾃然主義が結びつくことによって、肌の⾊、⺠族、性別、能⼒の有無などによる差別や抑圧が正当化されてきた歴史が厳然と存在します。そして現代においても、⾃然主義の⽴場から差別や暴⼒を正当化する⾔論は失われていないのです。科学という権威を利⽤して政治的な主張を展開しようとする中で、そもそもダーウィンが主張したことのない⾔説が編み出され流布されるような事態まで起きています。

 ダーウィン的進化とはランダムに⽣じた変異の中から、環境に適さないものが淘汰されていくプロセスです。現代の⽣物学では、この進化というプロセスから、いかに⽣命の多様性が⽣み出されてきたのか研究され明らかになってきました。私たちの先⼈たる科学者たちは、ダーウィンの進化論が誤⽤され、政治的に利⽤されることに警鐘を鳴らし、その問題を解決しようと努⼒してきました。しかし現代においてもなお、特定の政治的主張に権威を与えるために、進化を含む科学的知識が誤⽤される事例がしばしばみられます。このような誤⽤がいまだに流布し続けていることは、私たち科学に携わる者の努⼒不⾜だと⾔わざるを得ません。進化の視点から⼈間⾏動と社会を理解しようとする専⾨家の集団として、⾮⼒を痛感し、深く反省しています。そして私たちには、進化のありようを、安直に社会の望ましいあり⽅として提⽰することの危険性について、社会に警鐘を鳴らす責任があると信じています。

 インターネット上の⾃由⺠主党の広報ページ「憲法改正ってなあに ⾝近に感じる憲法のおはなし」内における4コママンガ「教えて!もやウィン」第 1 話「進化論」(引⽤ 1)は、こうした誤⽤の⼀例です。

 ダーウィンの進化論ではこういわれておる

 最も強い者が⽣き残るのではなく 最も賢い者が⽣き延びるのでもない。

 唯⼀⽣き残ることが出来るのは 変化できる者である。


 このようにダーウィンの進化論を「引⽤」した上で、特定の政治的主張が⽀持されています。

 しかしダーウィンの著した⽂献にこのような記述はなく、メギンソン(Leon C. Megginson) が⾃⾝の解釈として述べた⽂章が、あたかもダーウィンが主張したかのように誤って流布したものだと指摘されています(引⽤ 2、3)。また、進化論は変化できる者のみが⽣存できるとは主張していないのです。進化は「集団中の遺伝⼦頻度の変化」のことであり、個体の変容に関する⾔及ではありません。さらに、すでに述べたように、⽣物の進化のありようから、⼈間の⾏動や社会がいかにあるべきかを主張することは、論理的な誤りです。

 私たちはここで、特定の政治的意⾒を主張するものではありません。いかなる⽅向性・内容であっても、ダーウィンの進化論という科学的知識が、社会的影響⼒を持つ団体や個⼈によって(それが意図されたものであるかどうかにかかわらず)誤⽤されることについて、反対を表明するものです。「変化できる者だけが⽣き残れる」と信ずるのであれば、誤った科学を根拠にするのではなく、個⼈や団体の信念として表明するべきだと考えます。

以上

引⽤
1. https://www.jimin.jp/kenpou/manga/first/
2. https://www.darwinproject.ac.uk/people/about-darwin/six-things-darwin-neversaid/evolution-misquotation
3. http://oasis.andrew.ac.jp/~matunaga/history.html


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