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鳥居の誘導効果(2020年6月28日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 トイレットペーパーのロールを手で押して、形を三角に変えてみる。3分の1回転する度、手にはロールから心地よい振動が伝わってくる。元の形と比べて、紙の使用量は三角形の方が約3割も少なかったという。

 ▼紙の無駄遣いを抑えるのに、複雑な装置は要らない。大切なのは強要ではなく、行動を誘うちょっとした工夫だ、と大阪大学大学院の松村真宏(なおひろ)教授は説いている(『仕掛学』東洋経済新報社)。紙の引き出しにくさを、そうとは思わせないのが仕掛けの肝らしい。

 ▼それに比べ、今度の社会実験は工夫より腕力が目につく。まもなく原則有料化となる、スーパーやコンビニのレジ袋である。海洋生物を脅かすプラスチックごみの削減に向け避けて通れない道とは言われるものの、1枚当たり数円の加算は消費者の懐に大きく響く。

 ▼ウミガメの顔に刺さったプラ製のストローやクジラの胃から大量に見つかったレジ袋は、海洋汚染の主犯に仕立てやすい。これらはしかし、海に流れ出るプラごみのごく一部である。中国や開発途上国といった大口排出元の栓を閉めなければ、問題の解決には遠い。

 ▼海洋汚染も元をたどれば、不届きなポイ捨てに行き着く。松村教授によると、不法投棄の多い場所に小さな鳥居を置くだけで、ごみは捨てられなくなるという。罰当たりな行為を慎ませる、鳥居の誘導効果である。環境への負荷を下げる「仕掛け」は他にもあろう。

 ▼以前、小紙に載った川柳を思い出す。〈レジ袋から生活が透けて見え〉吉田健声。暮らしぶりが露見するレジ袋は恥ずかしくも便利な代物である。雑貨の仕分け、家庭のごみ袋に気兼ねなく使っていた日々のうらめしいことよ。エコバッグが時代の要請だと分かってはいるけれど。




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