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「砂の器」(2020年6月28日配信『南日本新聞』-「南風録」)

 1974年公開の映画「砂の器」はハンセン病がテーマだ。北九州出身の作家松本清張の推理小説が原作で、差別と偏見に翻弄(ほんろう)される男性患者とその息子を描いた。

 音楽家になった息子が、昔を回想するラストシーンが切ない。村八分にされ故郷を追われた父子は嫌がらせを受けながらも、手を取り合い遍路の旅を続ける。随所にちりばめられた山里や海辺の美しい風景が、父子の孤独を際立たせた。

 旅のシーンは戦前の設定だった。当時、ハンセン病への知識の乏しさが人々の心に恐怖を植え付け、強制隔離など激しい迫害を生んだ。時代は下ったが、昨今の新型コロナを巡る差別や中傷と重なって見えてならない。

 「北九州に住んでいると知られたくない」。福岡市の職場に通う知人の悩みは深刻だ。九州で唯一感染が再拡大し、風評だけが飛び交っているという。日常を取り戻そうとした矢先だけに落胆も大きい。

 コロナ禍で起きている差別的な行動に、ハンセン病療養所入所者らの思いも複雑だ。共同通信のアンケートでは「ハンセン病回復者や家族への差別につながるところがある」「啓発が進んでいないと感じる」などと失望の言葉が並んだ。

 「砂の器」の原作が新聞に掲載されて今年でちょうど60年になる。あらためて読み返しても、人目を忍んで生きていくつらさが身に染みる。作品が訴える社会への警鐘は色あせない。




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Author:gogotamu2019
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