FC2ブログ

記事一覧

東京和楽器」廃業(2020年6月30日配信『東京新聞』ー「筆洗」)

 劇作家、永井愛さんの『鴎外の怪談』に登場する永井荷風の様子が良い。鴎外の推薦で慶応義塾の教授になったころの荷風である

▼どこに行くにも妙なものを抱えている。三味線である。おそらくは細棹(ざお)だろう。荷風の三味線が玄人はだしだったことはよく知られているが、あんなふうに毎日、持ち歩いていたおかげか

▼「打水(うちみず)の乾かぬ小庭を眺め、隣の2階の三味線を簾越(すだれご)しに聴く心持…東京という町の生活を最も美しくさせるものは夏であろう」(『夏の町』)。荷風が東京の夏を美しくするものに数えた三味線の音だが、この夏はさらにか細くなりそうだ。三味線最大手の「東京和楽器」(東京都八王子市)が8月で廃業するという

▼近年の需要低迷に加え、コロナが打撃となったらしい。4、5月の注文はゼロだったと聞けば、胸が痛い。前身が1885(明治18)年、深川で創業した老舗の糸もここで切れてしまうのか

▼邦楽の邦とは無論、わが国のことだが、明治以降の西洋音楽の普及によって日本人には邦楽も三味線の音も耳慣れぬものになってしまった。今、荷風のように三味線を抱えて歩いていれば、かなり人目を集めるだろう

▼三味線を教わりだして6年になる。糸を押さえる勘所が違うと師匠にしょっちゅう叱られるが、長く日本人を慰め、喜ばせてきた音を守れぬ世の中というのも、どこか勘所がずれている気がする。



キャプチャ2

キャプチャ

公式サイト➡ここをクリック



キャプチャ

アマゾン➡ここをクリック

内容(「BOOK」データベースより)
 日本近代文学興隆期の巨人・森鴎外は、同時代のヨーロッパで書かれた怪異奇想小説の逸品を、誰よりも早く、達意の訳文でわが国の読者に紹介するとともに、みずからも好んで怪談奇談の筆を執った。死霊の復讐、旧家に蟠る怨念、分身譚、神仏の祟りなど多彩な創作怪談と翻訳怪奇小説を集大成した本書は、文豪鴎外による「独り百物語」もしくは鴎外版「世界怪談名作集」ともいうべき試みである。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

森/鴎外
1862~1922。津和野の藩医の長男として生れる。本名、林太郎。藩校で漢籍・蘭学を学んだ後、東京医学校(東大医学部)予科を卒業。陸軍軍医となり、ドイツへ留学する。帰国後、軍医学校長、軍医総監等を歴任するかたわら、文学者としても創作、翻訳、評論に巨大な足跡を残す

東/雅夫
1958年神奈川県生まれ。アンソロジスト、文芸評論家。元「幻想文学」編集長、現「幽」編集長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ