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強制不妊判決に関する論説(2020年7月3日)

強制不妊 賠償認めず/被害の実情顧みない判決だ(2020年7月3日配信『河北新報』-「社説」)

強制不妊手術を強いられた被害者の実情を顧みない判決と言わざるを得ない。

 旧優生保護法の下で不妊手術を強制されたとして、東京都の男性(77)が国に3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は「憲法で保護された、子を持つかどうか決める自由を侵害した」と指摘しながらも請求を退けた。

 壁となったのは、不法行為から20年で損害賠償請求権が消えるという民法の「除斥期間」だ。

 男性は仙台市出身で、手術を受けたのは1957年、14歳ごろだった。東京地裁は除斥期間の起算点を手術時とし、仮に後ろにずらす余地があったとしても「どんなに遅くとも、旧法改正で優生条項が削除された96年まで」と判断した。

 男性が提訴したのは2018年。2年遅かったことになる。

 しかし、被害者を取り巻く環境を考えれば、弁護団も指摘するように、この判断は酷と言うべきだろう。

 手術は国策により本人をだましたり、気付かれないようにしたりして行われた。加えて旧法は「不良な子孫の出生防止」を掲げていた。偏見を恐れ、裁判を起こすことができなかったであろうことは想像に難くない。

 男性も子どもが持てなくなる手術だったことを後から知った。妻が亡くなる2013年の直前まで打ち明けられなかったという。

 判決は旧法に関する社会情勢を考慮するばかりで、男性固有の事情に向き合う姿勢が見られない。

 強制不妊を強制された宮城県の女性2人の損害賠償を認めなかった昨年5月の仙台地裁判決は、除斥期間の起算点を優生手術の時点としていた。

 東京地裁が起算点を遅らせる可能性を検討したことは、今後を考えれば一筋の光明となる。旧法を巡り全国7地裁で係争中の一連の訴訟にも影響を与えよう。

 今回の判決は旧法自体の違憲性について踏み込まなかった。昨年5月の仙台地裁判決は同様に請求を棄却しながら、旧法は違憲と断じていた。この点は明らかに後退しており、しっかり言及するべきだったろう。

 不妊手術強制の問題では昨年4月、被害者に一時金320万円を一律支給する救済法が議員立法で成立し施行された。しかし、認定を受けた被害者は今年3月末で529人にすぎない。厚生労働省が当初見込んだ3400人を大きく下回っている。被害者が名乗り出にくい社会は変わっていない。

 国会は旧法の立法経緯の調査や被害者団体の聞き取りを6月に始めた。資料の散逸や時間の経過という障害はあるが、被害状況や国の責任を明らかにし幅広い救済につなげてほしい。



今も高い強制不妊救済の壁(2020年7月3日配信『日本経済新聞』-「社説」)

 旧優生保護法のもとで不妊手術を強制された男性が国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は男性の訴えを退けた。

 旧優生保護法は「不良な子孫の出生防止」をかかげ、1948年に施行された。障害者への差別にあたるとして手術の規定が削除されたのは、96年になってからだ。

 判決は、この男性は法律の対象ではなく、誤った判断で手術を受けさせられたと指摘。憲法が保護する「子どもを持つかどうかを決める自由」を侵害されたと述べた。ただ、時間の経過とともに賠償請求権は消えたとして、訴えを退けた。遅くとも旧法が改正された96年には提訴が可能な状態になっていた、という判断だ。

 政府や国会が長年、救済や被害回復措置をとらなかったことについても責任を認めなかった。優生思想自体は国がつくったものではない、などが理由だ。

 手術を巡る裁判は18年以降、各地で起きている。最初の判決となった19年の仙台地裁判決は原告の訴えを退けつつも、旧優生保護法を違憲とした。今回の判決は、個別の手術の違憲性にとどめ、旧法そのものには言及していない。

 被害の重さや差別・偏見の実情を思えば、被害者にはとうてい納得できない判断だろう。仙台地裁判決に比べても、厳しい内容だ。

 一連の裁判を機に、被害者に一時金を払う法律が19年4月に成立した。手術を受けた人は、同意があったケースを含め約2万5千人に及ぶ。政府はうち約1万2千人が存命しているとみる。

 ただ申請は低調で、支給が認められた人は6月末時点で621人にとどまる。救済は時間との闘いだ。プライバシーに配慮しつつ、申請につなげる方策にもっと知恵を絞るべきだ。

 旧優生保護法は、長年、障害者らへの差別、偏見の温床となってきた。国会は6月、立法過程や被害実態についての調査を始めた。同じ過ちを繰り返さず、被害者を救済していくためにも、なお課題は多い。



強制不妊判決 被害実態踏まえていない(2020年7月3日配信『新潟日報』-「社説」)

 人としての尊厳を傷つけられた被害者に向き合わず、人権救済を軽んじた判決といわざるを得ない。

 旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして、東京都の男性が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は請求を棄却した。

 判決は、手術が「憲法13条で保護された、子を持つかどうか決める自由を侵害した」と指摘する一方、手術から20年以上が経過し、民法の規定で賠償請求権は消滅したと判断した。

 旧優生保護法を巡っては、全国8地裁で一連の訴訟が起こされ、今回は昨年5月の仙台地裁に次ぐ2件目の判決だ。

 男性は1957年、宮城県の児童福祉施設に入所していた14歳ごろ、説明がないまま病院で不妊手術を受けた。

 2018年1月の仙台地裁提訴で国が障害者らに手術を強制していた事実を初めて知り、その年の5月に提訴した。

 手術から60年余り悩み続け、亡くなった妻にも長い間過去を打ち明けられなかったという。

 裁判の焦点は、20年で損害賠償権が消滅する除斥期間が適用されるかどうかだった。

 原告側は、子どもを持てない状態は続いており、除斥期間が適用されるとしても起算点は仙台地裁の提訴時だと訴えた。

 これに対し判決は、起算点を手術時点とした上で、仮に起算点をずらす余地があるとしても「どんなに遅くても1996年の旧法改正時まで」と退けた。

 これでは除斥期間を厳格に当てはめただけで、被害実態を考慮したものとはいえない。

 旧法は「不良な子孫の出生防止」を目的に48年に制定された。これを根拠に、国は強制手術により人権を侵害してきた。

 国が法改正したとはいえ、男性は差別を恐れ、被害を訴えられなかった事情がある。

 判決が旧法の違憲性に踏み込まなかったことも看過できない。仙台地裁は、国の損害賠償は棄却したものの、旧法は「個人の尊厳を踏みにじる」として憲法13条に違反すると断じた。

 今回は明らかに後退している。民法の範囲ではなく、憲法レベルで人権を救済する判断をすべきではなかったか。

 原告側は控訴する方針だ。今後続く他の地裁判決では、こうした点をしっかり踏まえた結論を出すのか注視したい。

 国は損害賠償を拒む一方、昨年4月には議員立法で一時金320万円を支給する救済法が成立し、施行された。

 だが、一時金が少な過ぎるとの批判が被害者側から出ている。請求期間も施行後5年間と限られている。

 約2万5千人が手術を受けたとされるが、支給が認められたのは6月末で600人余りにすぎない。周知不足が一因だ。

 衆参両院は先月、旧法が議員立法で制定されたことを反省し、立法の経緯や被害状況の調査を始めた。

 調査がアリバイづくりで終わってはならない。救済法の改正などで真の救済を図るべきだ。



強制不妊判決 被害救済にはほど遠い(2020年7月3日配信『京都新聞』-「社説」)

 旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして、東京都の男性が国に3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は請求を棄却した。

 強制不妊手術を「憲法で保護された自由を侵害」「正当化の余地のない違法な行為」と断じながら、不法行為に対する損害賠償請求権が20年で消滅する「除斥期間」を適用した。

 男性は1957年に手術を受けた。国の法律に基づく手術でありながら内容も知らされず、記録も残っていなかった。

 手術内容を把握した後も、差別や偏見を恐れ、家族にすら打ち明けられなかった。

 判決は除斥期間の起算点を手術の時点とし、遅らせたとしても「96年の旧法改正時点で提訴が可能だった」と判断した。

 除斥期間規定を適用しないことが認められたケースはほとんどないというが、そもそも国策による被害に一律に適用することが妥当なのか疑問が残る。

 提訴できなかった被害者の実情が反映されていない。子どもを生み育てるかどうかを決める権利を奪われた無念さに寄り添った判断とはいえない。

 手術を受けた男女24人が全国8地裁に起こした一連の裁判で、判決は2件目になる。昨年5月の仙台地裁判決も同様に原告が敗訴しており、司法による救済の壁の高さを印象づけた。

 仙台地裁判決は旧法自体は違憲としているが、違憲性に言及しなかった今回の判決はそれよりも後退している。

 国会の責任についても、補償などの被害回復措置を取る立法が必要不可欠だったとは言えないと、原告の訴えを退けた。

 立法や行政の逸脱や怠慢をチェックする司法の役割を果たしているとは言いがたい。

 昨年施行された救済法は一律320万円の給付を定めたが、不十分だと批判されている。

 支給も進んでいない。被害者の多くは手術されたことさえ認識しておらず、全国被害弁護団は法改正による運用改善や検証を求めた。

 衆参両院の事務局は6月、支給法に基づき、人権侵害を容認してきた旧優生保護法の立法経緯や被害状況の調査を開始した。だが制定から70年以上が経過し、検証の難航も予想される。

 このままでは真の救済は遠いと言わざるを得ない。国も司法も、改めて被害者の実態に真摯(しんし)に向き合うべきだ。



強制不妊訴訟判決 実態と乖離してないか(2020年7月3日配信『佐賀新聞』-「論説」)

 旧優生保護法により不妊手術を強制されたとして、77歳男性が国に3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は手術について「憲法で保護された、子を持つかどうか決める自由を侵害した」としながらも、請求を退けた。最大の争点となったのは、不法行為から20年経過すると賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適否だった。

 手術は1957年、14歳ごろに施された。男性が訴訟を提起したのは2018年。男性側は「差別を受ける可能性が高く、手術を受けた事実を公表して賠償を求めるのは困難だった」と特殊事情を訴えたが、地裁判決は損害が手術時に発生したととらえ、除斥期間が適用されると判断した。

 しかし96年まで、ほぼ半世紀にわたり存続した旧法が社会に残した爪痕は深い。周囲の差別や偏見を恐れ、いまだに声を上げられない被害者が多数いると支援団体などはみている。被害者に一時金320万円を支給する救済法が昨年4月に議員立法で成立、施行されたが、申請と支給が遅々として進まないのもそのためという見方が強い。

 判決はそのような実態と乖離(かいり)していないか。被害者に寄り添う姿勢に欠けると言わざるを得ない。衆参両院の事務局は6月に旧法の立法経緯や被害状況の調査を始めたが、国と国会は速やかに結果をまとめ、救済拡大に取り組む必要がある。

 強制不妊手術を巡っては、男女24人が国を相手取り全国8地裁に訴訟を起こした。今回は2件目の判決。昨年5月の仙台地裁判決は旧法を違憲と断じたが、国の賠償責任は認めず、請求を棄却した。東京地裁判決は旧法自体の違憲性には言及していない。ただ除斥期間の適用について詳細に検討しており、他の訴訟に与える影響は大きい。

 判決などによると、男性は問題行動を理由に入所させられていた教護院から何の説明もないまま病院に連れて行かれ、手術を受けさせられた。しばらくして不妊手術と知らされたが、誰にも言えず、20代後半で結婚。妻に不妊手術のことを打ち明けたのは7年前。妻が亡くなる直前だった。

 判決は「旧法が定める疾患などに該当しないのに、誤った審査で手術を受けた」と指摘。国に賠償責任が生じたとした。旧法は「不良な子孫の出生防止」を掲げ、知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に手術を認めた。だが、ここで除斥期間が立ちはだかる。

 期間を形式的に進行させるのは酷との男性側の主張に、判決は時代を追って社会情勢を検討。70年代初めについて「意に反し優生手術がされたと認識しても、国に訴訟を提起することには、極めて強い心理的抵抗を感じたであろうことは十分推認される」と述べた。

 その後は旧法改正議論や社会的理解が進んだとした上で「どんなに遅くとも、96年時点で提訴が困難だったとは認められない」と結論付けた。

 つまり仮に除斥期間の起算点を遅らせる余地があるとしても96年までで、期間経過に変わりはないということだ。ただ男性を取り巻く状況には触れておらず、説得力に乏しいというほかない。

 さらに付言で、疾病や障害による差別のない社会の実現に言及しているが、そのためには国と国会、そして司法が、被害者らが置かれている厳しい実態と真摯(しんし)に向き合うことが求められよう。




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