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鯖江・宿泊施設を避難所に(2020年7月6日配信『福井新聞』-「論説」)

関連死や3密対策に効果

 鯖江市は、災害時に宿泊施設を避難所として提供してもらう協定を、県旅館ホテル生活衛生同業組合鯖江支部と結んだ。通常の避難所では災害関連死のリスクが高かったり、安心して過ごせなかったりする高齢者や障害者、妊婦らの利用を想定している。こうした要配慮者に安心安全な避難生活を提供したいという元々の狙いに加え、新型コロナウイルス感染症が拡大する今、避難所の「3密(密閉、密集、密接)」を避ける効果も期待できそうだ。

 市によると、県内市町がこのような協定を民間宿泊施設団体と結ぶのは初という。きっかけとなった一つが近年、問題視される災害関連死だ。災害による直接の死亡ではなく、避難生活のストレスや不衛生な環境による体調の悪化など間接的な原因による死亡のことで、2016年の熊本地震では直接死を上回った。

 避難場所が清潔なホテルの個室であれば、災害関連死のリスクは確実に軽減するだろう。特に高齢者や障害者には安心なはずだ。妊婦や、乳児と一緒の親らにとっても、避難所での集団生活より、宿泊施設で過ごす方が体調面などの安心につながると考えられる。

 さらに今回、新型コロナ感染拡大の中での協定締結となった。市と組合支部は以前から協議を進めていたが、結果的に、自然災害と感染症が重なる複合災害への備えが注目されるタイミングと合致した。分散型避難によって3密を回避するという効果の面でも、協定の意義が増したといえる。

 具体的な運用としては、災害時に避難所を訪れた市民に対し、市職員らが健康観察をし、必要と判断した要配慮者は宿泊施設に避難してもらう。組合支部加盟の市内3ホテルは個室を提供するほか、宴会場の利用も想定。料金はシングルルーム分について市が負担するという内容だ。

 課題として、避難者の健康観察や宿泊施設へ送る選別が的確にできるのか、という点が挙げられる。一人一人の体調や状態、持病の有無などを見極めなくてはならず、市職員だけでは難しい面もある。市は医療面から防災、減災に取り組む「まちの減災ナース」に看護師を委嘱している。こういった専門知識を持つ人材が、避難所で活躍することが求められてくる。

 いずれにせよ、頻発する自然災害に新型コロナもあり、今は新しい避難の在り方を考える機運が高まっている。災害関連死の防止などを念頭に置いた今回の協定は、高齢者らに優しい一つの手法を提起したといえ、注目したい。




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Author:gogotamu2019
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