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アイヌの意見反映を(2020年7月7日配信『しんぶん赤旗』)

紙議員の質問主意書
「地域計画」 政府が答弁書決定


キャプチャ
紙智子参院議員

 日本共産党の紙智子参院議員が提出した「アイヌ施策推進法に関する」質問主意書に、政府は6月26日、答弁書を決定しました。

 質問主意書は、アイヌが民族の誇りを持って生活できる環境整備や、差別や権利利益の侵害の禁止を明記したアイヌ施策推進法が成立して1年になるもとで、いまだ多くの課題を残していると指摘。開業される「民族共生象徴空間」(ウポポイ)にかかわって、アイヌ民族の意見をどう取り入れたかを質問しました。

 答弁書は「アイヌ推進法の検討に際して55団体」から意見を聞いたものの、法成立後の意見聴取は明らかにしませんでした。

 アイヌ施策推進法は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の「先住権」が記載されていないとして、「先住民族宣言」の各条文をどう具体化しているかの質問には、「宣言の各条について網羅的に国内措置を講ずるという観点からは検討していない」と回答しました。

 市町村が作成する「アイヌ施策推進地域計画」について、北海道新聞が「アイヌ民族側の提案を検討せずにできないと結論づけたり、協議と言いつつ自治体側が一方的に事業を提示し、十分な議論がないとの声も聞く」との指摘があるとして見解を求めたのに対し、アイヌの人々の意見が反映されていると認められない計画は認定しないとしました。



第201回国会(常会)

質問主意書

質問第一五七号

アイヌ施策推進法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年六月十六日

紙 智子


       参議院議長 山東 昭子 殿


   アイヌ施策推進法に関する質問主意書

 二〇一九年四月に「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(以下「アイヌ施策推進法」という。)が成立してから、一年が経過した。民族の誇りを持って生活できる環境整備や、差別や権利利益の侵害の禁止を明記したが、国連の「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「先住民族の権利宣言」という。)を履行する点からいえば多くの課題を残している。そこで、以下、質問する。

一 アイヌ施策推進法において、「民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置」が規定された。
 本年四月に予定されていた「民族共生象徴空間」(ウポポイ)の開業は新型コロナウイルス感染症の影響で延期されたが、ウポポイは、国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園、アイヌの遺骨を収納・慰霊する慰霊施設という三つの施設で構成される。
 ウポポイは、先住民族であるアイヌの尊厳を守り、わが国が将来に向け多様で豊かな文化の異なる民族との共生を尊重していく社会を築くためにアイヌの歴史、文化等の国民的理解の促進やアイヌ文化の振興、発展に関する中心的な拠点と位置付けられている。
 この趣旨に沿って、自己決定権を含めアイヌ民族の意見を取り入れる必要がある。(1)政府が意見を聞いたアイヌの実団体数および延べ団体数、(2)政府が意見を聞いたアイヌの実人数および延べ人数、(3)各地のアイヌ協会の会員でないアイヌから政府が意見を聞いた回数、実人数および延べ人数並びに取り入れた意見を明らかにされたい。

二 アイヌ施策推進法には、先住民族の権利宣言でうたう「先住権」は一切記されていない。アイヌの誇りの源泉を「アイヌの伝統及びアイヌ文化」に求めているが、「先住権」を認めるという国際的な到達点を踏まえるなら、「先住権なき」新法であって、不十分と言わざるをえない。
 アイヌ施策推進法案の立案過程において、四十六条ある先住民族の権利宣言を日本国内において具体化するためにどのような議論をしたのか。検討の過程と討議内容の資料は明らかにならなかった。
 国会の質疑で明らかになったのは、先住民族の権利宣言のうち、差別を受けない権利、国民の理解促進、土地資源に関する権利、先住民族の文化に関する権利の三つの規定のみを参照したということであるが、これらの権利をどのように具体化したのか。明らかにされたい。また、「先住権」をはじめとする先住民族の権利宣言でうたう諸権利を、今後、どのように具体化するのか、明らかにされたい。

三 アイヌの遺骨問題とは、明治期よりアイヌ人墓地から研究目的と称して遺骨が持ち去られ、今日に至るも全面的に返還されていない問題であり、先住民族の権利を復権するうえで重要な課題である。
 遺骨問題に関する「個人が特定されたアイヌ遺骨等の返還手続に関するガイドライン」では、特定遺骨等を返還する意向がある大学は、民法及び裁判例等を考慮し、返還を希望する祭祀承継者に返還することとし、返還する意向がある大学に決定権を認め、遺骨を奪われたアイヌ民族の権利を認めなかった。
 その後、遺骨の返還を求める運動と世論によって「大学の保管するアイヌ遺骨等の出土地域への返還手続に関するガイドライン」が出され、出土地域が明らかなものは出土地域へ返還する手続きがとられた。しかし、アイヌの習慣では墓地に埋葬した死者に対して墓参りはせずに、そのままにして、コタン(集団)が集落内で慰霊行為(イチャルパ)を行うものであることから、遺骨が誰の遺骨なのか、どこのコタンなのかがわかる情報の提供を大学に求め、国の責任で調査する必要がある。
 先住民族の権利宣言は、「先住民族は、遺骨の返還についての権利を有する。国は遺骨へのアクセス又はこれらの返還を可能とするよう努める」旨規定しているが、国は同規定を、どう具体化するのか。政府の遺骨返還方針を明らかにされたい。

四 アイヌ施策推進法は、都道府県は国の基本方針に基づき方針を定めるよう努め、市町村は「アイヌ施策推進地域計画」を作成することができると規定する。方針を定めた都道府県名、地域計画を作成した市町村名を明らかにされたい。

五 前記四の地域計画が認定された場合、国は予算の範囲内で交付金を交付することになっている。地域計画に掲げる事業は、(1)アイヌ文化の保存又は継承に資する事業、(2)アイヌの伝統等に関する理解の促進に資する事業、(3)観光の振興その他の産業の振興に資する事業、(4)地域内若しくは地域間の交流又は国際交流の促進に資する事業、(5)その他内閣府令で定める事業としているが、「内閣府令」で定めた事業を明らかにされたい。また、アイヌ施策推進法では、地域計画を作成しようとするときは関係者の意見を聞かなければならない旨定めているが、「アイヌ民族側の提案を検討せずにできないと結論づけたり、協議と言いつつ自治体側が一方的に事業を提示し、十分な議論がないとの声も聞く」との報道がある(北海道新聞二〇一九年八月二十五日)。アイヌ民族が地域計画の作成に参画する仕組みを明らかにされたい。

  右質問する。



第201回国会(常会)

答弁書

内閣参質二〇一第一五七号
  令和二年六月二十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員紙智子君提出アイヌ施策推進法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員紙智子君提出アイヌ施策推進法に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねに関し、アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成三十一年法律第十六号。以下「アイヌ施策推進法」という。)の法案(以下単に「法案」という。)の検討に際してのアイヌの人々からの意見聴取は、内閣官房において、計三十六回の意見交換の会合を開催して行ったものであるが、これらの会合において意見を聴取したアイヌ関係団体の実数は少なくとも五十五団体、その延べ数は少なくとも八十五団体、意見を聴取したアイヌの人々の延べ人数は五百三十名である。
 お尋ねの「政府が意見を聞いたアイヌの実人数」及び「各地のアイヌ協会の会員でないアイヌから政府が意見を聞いた回数、実人数および延べ人数」については、各回の個別の参加者の属性を網羅的には把握しておらず、お答えすることは困難である。
 また、聴取した意見のうち、例えば、法律でアイヌを先住民族と位置付けること、儀式等に必要な材料を国有林野で採取できるようにすること、手続が煩雑なさけの特別採捕制度を改善すること等の意見については、法案に取り入れたところである。

二について

 お尋ねの「四十六条ある先住民族の権利宣言を日本国内において具体化するためにどのような議論をしたのか」及び「権利をどのように具体化したのか」については、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「宣言」という。)は法的拘束力を有するものではなく、政府としては、宣言の各条について網羅的に国内措置を講ずるという観点からの検討は行っていないが、平成二十年六月六日に衆議院及び参議院の本会議において採択された「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」において「宣言における関連条項を参照しつつ、・・・総合的な施策の確立に取り組むこと」とされたことも踏まえ、宣言のうち、差別を受けない権利の規定、国民の理解の促進に関する規定、土地資源に関する権利の規定及び先住民族の文化に関する権利の規定を参照し、これらの趣旨に対応する措置として、アイヌの人々に対する差別の禁止に関する基本理念、国及び地方公共団体の教育活動、広報活動等の責務、国有林野における林産物の採取及び内水面におけるさけの採捕に関する特別の措置等を法案に盛り込んだものである。
 また、お尋ねの「諸権利を、今後、どのように具体化するのか」については、政府としては、宣言に示されている国の果たすべき責務は、憲法との課題整理を図る必要があるものを除き、アイヌ施策推進法及び関連法令により、おおむね措置されたものと考えているが、引き続き、アイヌ施策推進法の規定及び附帯決議を踏まえ、アイヌの人々に関する施策の更なる検討に努めてまいりたい。

三について

 御指摘の「アイヌの遺骨問題」に関しては、政府としては、関係者の理解及び協力の下で、アイヌの人々への遺骨等の返還を進め、直ちに返還できない遺骨等については、民族共生象徴空間に集約し、アイヌの人々による尊厳ある慰霊の実現を図るとともに、アイヌの人々による受入体制が整うまでの間の適切な管理を行うこととしており、御指摘の「個人が特定されたアイヌ遺骨等の返還手続に関するガイドライン」(平成二十六年六月二日付け閣副第三六三号、二六文科振第一二六号)及び「大学の保管するアイヌ遺骨等の出土地域への返還手続に関するガイドライン」(平成三十年十二月二十六日付け閣副第八三一号、三〇文科振第三三六号、国北総第九一号)に基づき、発掘又は発見がされた場所、性別、年齢等の遺骨に関する情報を関係大学及び文部科学省において公表するなど、返還手続を進めているところである。

四について

 アイヌ施策推進法第八条第一項に規定する都道府県方針を定めた都道府県は、北海道である。
 また、アイヌ施策推進法第十条第一項に規定するアイヌ施策推進地域計画を作成し、内閣総理大臣の認定を受けた市町村は、北海道札幌市、旭川市、室蘭市、釧路市、帯広市、苫小牧市、根室市、千歳市、登別市、恵庭市、伊達市、八雲町、長万部町、豊浦町、白老町、洞爺湖町、むかわ町、平取町、新ひだか町、上士幌町、釧路町、弟子屈町、白糠町及び標津町並びに三重県松阪市である。

五について

 お尋ねの「「内閣府令」で定めた事業」として定めたものはない。
 また、お尋ねの「アイヌ民族が地域計画の作成に参画する仕組み」としては、アイヌ施策推進法第七条第一項に規定する基本方針である「アイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針」(令和元年九月六日閣議決定)において、「市町村が計画を作成する際には、・・・アイヌの人々の要望等を反映するよう努めることとする」としているほか、アイヌ施策推進法第十条第九項の認定に関する実施要綱において、同項の認定の基準の細目として「アイヌの人々を含めた地域住民からの意見聴取を行っているなど、事業の実施が円滑かつ確実であると見込まれること」を定めており、アイヌの人々の意見が適切に反映されていると認められない計画については同項の認定をしないこととしているところである。






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