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「初耳では済まない」手話通訳者の苦労 専門用語はかみ砕いて 耳代わりの使命感(2020年7月7日配信『毎日新聞』)

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浜田恵造知事の記者会見で、手話通訳をする斉藤和子さん(右)=高松市番町の県庁で2020年6月15日午後1時19分

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、自治体が開く記者会見で「手話通訳」の導入が広がっている。聴覚障害者への情報保障として、香川でも4月から浜田恵造知事の会見に手話通訳が入るようになった。ただ、新型コロナを巡っては専門的な言葉も多く、やり取りを瞬時にかつ的確な手話に置き換えるのには高い技術や知識が求められる。手話通訳者の一人が取材に応じ、やりがいや難しさを語った。

 手話通訳者は都道府県が認定する資格。取得するには各自治体が開く養成講座を受け、社会福祉法人「全国手話研修センター」(京都市)が実施する統一試験に合格する必要がある。県内では現在58人が認定され、講演や会議などの場に派遣されている。

 取材に応じたのは、県職員でもある斉藤和子さん。コロナ禍を受けて県は今年4月中旬から手話通訳を取り入れ、斉藤さんは同じく県職員の池内容子さんと共に浜田知事の定例会見などに立ち会ってきた。ペアで臨むのは10~15分ごとに交代しながら通訳にあたるためだ。高い集中力が必要で、1人がこれ以上続けると質の低下が懸念されるという。

 手話通訳の現場では何が求められるのか。

 通訳者歴13年の斉藤さんは「聞いたことをそのまま表現するのではなく、自分の中で意味をかみ砕き、分かりやすく伝えることが必要」と話す。例えば、収入が減少した事業者に支給する「持続化給付金」は「仕事や生活をそのまま続けるためのお金」、「外出自粛の緩和」は「少しずつ出かけることができるようになる」といった具合だ。

 とはいえ、質疑応答が連続する会見では悠長に考える余裕などない。そこで普段から新聞やニュースに触れ、置き換えられる言葉の引き出しをたくさん持っておくことが大切になる。「(会見で聞いた言葉が)初耳だったでは済まされません」

 県内では4月に9日間連続で新規感染者が確認された。感染者の大半が高松市に集中したため、連日設定された会見には浜田知事に加えて大西秀人市長も出席。さらに質問によっては県や市の事務方職員が回答することも多かった。どんな質問に誰が今どう答えているのか。状況を整理しながらの通訳が求められ、「本当にヘトヘトでした」と振り返る。

 会見の様子は動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信され、後々までネット上に残る。「見られている」というプレッシャーも大きいが、支えになっているのが使命感。「私たちはろう者の耳の代わり。自分が通訳を務める時は自分が責任を持たないといけない」と強調する。

 一方、社会的にはまだ、手話通訳の意義が十分浸透していないと感じることもあるという。テレビで会見の模様が流れても、通訳者が画面から切れて見えない。そんな場面も時折見かけるからだ。ろう者の中には文章を読んで理解するのが苦手な人もおり、仮に字幕があってもそれで事足りるわけではない。「何のために手話通訳があるのかを考えてほしい」と訴える。

 会見に出席する記者たちはどんなことに気をつければいいのだろうか。斉藤さんが挙げたのが、話題が変わる時は「ところで」などの接続助詞を付ける▽できるだけはっきりとした口調で話す――の2点。「こうした配慮があるとうれしい。相手にしっかりと伝えたいという思いがあれば自然と話し方も変わってくると思います」

 会見の向こう側にいるのは聞こえる人ばかりではない――。そのことを改めて肝に銘じたい。

「聴覚障害の不安知って」医療機関向け冊子

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イラストも使い、聴覚障害者への望ましい配慮を紹介した冊子=高松市番町で2020年7月6日午後7時39分

 聴覚障害者に対する医療機関での望ましい配慮のあり方を紹介した冊子を、香川県手話通訳問題研究会が作った。耳の不自由な人は医師や看護師とのコミュニケーションに不安を感じ、受診をためらったり我慢したりすることがあるといい、活用を呼びかけている。

 同研究会は聴覚障害者を取り巻く諸問題の解消を目指して活動。2001年にも同様の冊子を作っており、今回は改訂版にあたる。高松市のITコンサルタント企業「トスバックシステムズ」の寄付を受けて3000部を印刷した。

 冊子では、診察時によく使う言葉を事前にカードにして用意する▽痛い時は手を挙げてもらうなど、検査時の意思疎通方法をあらかじめ決めておく▽電光掲示板など視覚的に分かる案内表示が多くあると当事者が安心できる――などの留意点を紹介している。

 同研究会は希望する医療機関などに冊子を送付する。問い合わせは研究会医療班の河崎好子さん(0877・33・1822)。




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Author:gogotamu2019
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