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【強制不妊判決】被害の実情を踏まえよ(2020年7月8日配信『高知新聞』-「社説」)

 強制不妊手術で長く強いられた被害の実情を踏まえた司法判断とは受け取れない。

 旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして、東京都の高齢男性が国に3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁が請求を棄却した。

 判決は、男性に対する手術は「憲法13条で保護された、子を持つかどうか決める自由を侵害した」と指摘した。ところが、加害行為から20年が過ぎると賠償請求権が消滅するという民法の「除斥期間」の規定が壁になった。

 男性は1957年、14歳のころに手術を受けた。判決は除斥期間の起算点を手術の時点とした上で、仮に起算点をずらす余地があるとしても、旧法改正で優生条項が削除された1996年までとした。

 強制不妊手術を巡る判決は2件目になる。昨年5月の仙台地裁判決も、除斥期間が経過しているとして請求を退けている。

 しかし、被害者が置かれた環境も考える必要がありはしないか。「不良な子孫の出生防止」を掲げた1948年制定の旧法が半世紀近くにわたって社会に残した爪痕は深い。被害者にとって容易に名乗り出られない「烙印(らくいん)」になったと指摘される。

 手術は国策の下で本人をだまし、気づかれないように行われた。男性も説明がないまま手術を受けた。手術内容を把握した後も差別や偏見を恐れ、2013年に亡くなった妻にも死の直前まで打ち明けられなかったという。

 男性側は除斥期間を適用しないよう求めていた。支援者からは「人権侵害に時効はない」との声も上がっている。過去の最高裁判決では、B型肝炎訴訟など起算点を遅らせて救済の道を広げた判例もある。

 東京地裁の判決は、被害の実情に向き合わず、形式的な法律論で国の賠償責任を免じ、救済の道を閉ざすものと言わざるを得ない。
 旧法自体の違憲性に言及しなかった点も看過できない。仙台地裁判決は、旧法は幸福追求権を保障する憲法13条に違反し、無効だとしていた。原告側弁護団は「後退した」「逃げている」と批判している。

 ハンセン病問題では2001年、熊本地裁が隔離政策を違憲とし当時の小泉純一郎首相が控訴断念を決断した。国と原告団が和解の基本合意をかわし、国が原因究明の検証会議を外部に設置。元患者も名を連ねた。

 違憲判断は、沈黙を続ける被害者が声を上げやすくなる社会への第一歩という見方もある。

 旧法による不妊手術を受けたのは約2万5千人。昨年、議員立法で被害者に一時金320万円を支給する救済法が施行されたが、今年6月末時点の認定は600人余りだ。被害者は声を上げにくいままなのではないか。

 国会は6月、人権侵害を容認してきた旧法の立法経緯や被害状況の調査を始めた。いまだに曖昧な責任の所在を明らかにし、被害者に寄り添う真の救済につなげる必要がある。




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Author:gogotamu2019
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