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高齢者施設の被災 惨事繰り返さぬ手だてを(2020年7月7日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 4日未明に県南部を襲った豪雨は、球磨川の氾濫に伴う浸水などによって各地で甚大な被害を引き起こした。被害者の情報や被災時の状況が徐々に明らかになっているが、過去の自然災害と同様、高齢者の被災が多いようだ。球磨村の高齢者施設では、浸水で多数の入所者が亡くなった。

 高齢者や障害者ら、自力で避難することが難しい「災害弱者」と呼ばれる人々が巻き込まれる事態は、これまで何度も繰り返されてきた。高齢者施設で大勢の人が被災するケースも初めてではない。

 惨事を今後、繰り返さないためには、関係機関から提供される情報に敏感に反応して予防的避難に踏み切るなど、“空振り”を恐れずに早め早めの手だてを講じる必要がある。河川氾濫などの危険性が指摘されている地域であれば、最悪の事態も想定しての周到な準備が欠かせない。

 今回、大きな浸水被害が発生した特別養護老人ホーム「千寿園」がある球磨村の渡地域は、人吉盆地の“出口”にあたり、球磨川の本流と支流の合流点にも近い。被災時の詳細な状況は分かっていないが、本流と支流がそれぞれ氾濫したほか、本流の増水によって支流の流れが遮られ逆流する「バックウオーター現象」が起きたと指摘する識者もいる。施設側も浸水被害は想定していたが、水かさが増す速さが想定外だったようだ。

 ホーム周辺は、もともと氾濫の危険が高い地域として知られていた。結果論になってしまうが、土地の利用規制や、建物の高層化などの手だてが講じられていなかったことが悔やまれる。

 高齢者施設では、多数の入居者が災害の犠牲になる事例がたびたび起きている。2009年7月には山口県防府市で大雨による土石流が発生し、特養ホームの7人が死亡。16年8月には岩手県岩泉町の高齢者グループホームが台風で浸水し、9人が亡くなった。

 だが、各施設に義務付けられた避難計画の作成は全体に進んでいない。熊本県も高齢者施設や障害者支援施設に対し、災害が予想される際は▽予防的避難の判断を行う▽土砂崩れの恐れがある崖に面した建物内では崖から遠い場所に避難する-などの対策を講じるよう通知してきたが、対策は万全とは言えないのが実情だろう。

 一方、93歳の男性の遺体が見つかった八代市坂本町の球磨川沿岸地域では、土地のかさ上げが行われていたという。想定を上回る増水で、住民の多くは2階などに垂直避難するほかなかったようだ。

 こうした状況も踏まえると、災害の恐れがある地域の人々、特に災害弱者が命を守るためにできることは、危険が迫っていないうちに安全な場所へ避難することに尽きる。早めの行動につなげる関係機関からの情報の伝え方も今回、改めて突きつけられた課題だ。

 県内では、今後しばらく豪雨への警戒が欠かせない。自分自身はもちろん、大切な人の命を守るためにも、油断せず、声を掛け合って身の安全を確保したい。




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Author:gogotamu2019
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