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九州の豪雨災害 高齢者の避難、再考せよ(2020年7月8日配信『中国新聞』-「社説」)


 九州一円が記録的な豪雨に見舞われ、死者、行方不明者が相次いでいる。とりわけ、熊本県球磨村の特別養護老人ホーム・千寿園で入所者14人が亡くなったのは痛恨の極みだろう。

 千寿園では濁流が迫る中、寝たきりや車いすの高齢者が次々と2階に移された。それが間に合わないまま、1階で水にのまれた人たちがいたようだ。「必死に腕をつかんだが、助けられなかった」と悔やむ近隣の住民の心中は、いかばかりか。

 特養など高齢者施設については、災害発生時に自力で避難できない問題がかねて指摘されてきた。特養に入居が認められるのは、原則として要介護3以上の高齢者に限られる。車いすを利用していたり、認知症があったりして、介助なしには1人での移動が難しい人も多い。

 「線状降水帯」の発生によって、想定しない豪雨に見舞われるケースが増えている。災害弱者の生命を守ることを第一に、高齢者施設の防災を再考する機会にしなければなるまい。

 中国地方では2009年に防府市で大雨による土石流が発生し、特養の入居者7人が死亡した。しかしながら国の対策は万全とはいえないまま、16年には岩手県岩泉町の高齢者グループホームが台風で浸水し、入所者9人全員が犠牲になった。

 この惨事を受けて国は翌年、川の氾濫で浸水する恐れがある高齢者施設など「要配慮者利用施設」に対し、避難先や移動の方法、職員配置などを計画にまとめ訓練を行うよう義務付けた。遅きに失した感はあるものの、水防法の改正である。

 昨年3月末で、対象の全国約6万8千カ所のうち、計画を作成していたのは36%にとどまっている。まずは避難計画をまとめるなど、平時の備えが求められる。その上で大雨の情報をつかんだら、必ずしも行政の避難勧告・指示にこだわらず、現場の判断で動くことだろう。

 千寿園も計画を定め、高台に避難する訓練を実施していたという。洪水被害を繰り返してきた球磨川流域だけに、球磨村も防災には力を入れていた。だが球磨川と支流、それぞれの氾濫によるバックウオーター現象は想定を超えたといえよう。

 氾濫の危険性が高い地域への立地を規制したり、「垂直避難」を可能にするため施設に2階以上の部分を設けたりするよう、高齢者施設の経営者に促すべきではないか。場合によっては、施設の移転を公的に支援する手だても必要だろう。

 また、福祉の分野は慢性的に人手が足りない。あらかじめ職員を総出で宿直させることが可能か、職員の身の安全を確保できるのか、近隣住民の支援も得られるか、日頃から想定しておかなければならないことは多い。多くの車いすの高齢者を抱えて移動する仕事がどれほどの負担か、想像してみたい。

 球磨村では住民は総合運動公園に避難したものの、天井があるだけで壁や床のない施設にブルーシートを敷いて休んだ。避難所としては堪えられず、そこから再び避難したという。

 過疎地の孤立は中国地方でも人ごとではない。球磨村では役場の機能も、ライフラインも損なわれている。地盤が緩んだ地域では雨がやんでも油断はできない。被災住民の救助と併せて厳重な警戒が求められる。




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Author:gogotamu2019
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