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高齢者の災害死 早め早めの避難が肝心だ(2020年7月9日配信『西日本新聞』-「社説」)

 確かに未曽有の豪雨だった。それでも、救う手だてはなかったものか。多くの高齢者の痛ましい災害死に、どうしてもそんな思いがこみ上げてくる。

 熊本県南部を襲った豪雨により、球磨村では特別養護老人ホーム「千寿園」が水没し、14人が亡くなった。

 氾濫した川の濁流が押し寄せたのは4日早朝という。施設職員と地元住民らが力を合わせ、入所のお年寄りたちを2階に避難させたが、全員を救うことはできなかった。

 この施設がある地域は最大で深さ10~20メートルの浸水が想定されていた。このため施設は法定の避難計画を策定し、訓練も実施していたという。

 気象庁も「予測困難だった」という突発的大雨で、球磨川とその支流の水位は4日未明から一気に上昇した。施設職員も驚いたはずだ。一方で、村は3日夕には、5段階の警戒レベルの「3」に当たる「避難準備・高齢者等避難開始」を発令していたという経緯もある。

 今回の被災に至った状況がまだよく分からない現時点で、施設の対応の是非を軽々に判断することは慎むべきだ。ただ、これだけ多数のお年寄りが命を落とした事実はやはり重い。事実関係を検証して教訓をくみ取ることは、亡くなった方々への責務でもあると指摘したい。

 大きな自然災害が高齢者施設に甚大な被害をもたらす例はこれまでもあった。2009年には山口県の特別養護老人ホームに土砂が流れ込み、7人が死亡した。16年は岩手県のグループホームが氾濫した川の濁流にのまれ、9人が亡くなった。

 翌17年に改正水防法が施行され、浸水が想定される高齢者施設などに避難計画策定が義務付けられたものの、実際の策定率は低迷している。施設運営者は危機感を高める必要がある。

 河川の近くや山間部といった自然災害の危険エリアに立つ高齢者施設も少なくない。

 6月に成立した改正都市計画法で、災害危険区域などに病院や社会福祉施設の建設は原則禁止された。国はこうした施設の移転も支援するが、大規模施設だとハードルは高い。移転促進に一段と力を入れてほしい。

 加えて、防災上エレベーター増設や改築が必要な施設への補助金も充実させるべきだ。

 今回の豪雨による犠牲者には独居や病弱、高齢夫婦だけで暮らすといった「災害弱者」の高齢者が数多く含まれる。

 高齢者施設や病院は避難の手順を確認し、早め早めに行動に移ることが肝心だ。市町村や自治会は地域の災害弱者などに目を配り、犠牲者を一人でも減らす努力を重ねてほしい。




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