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強制不妊訴訟判決 しゃくし定規が過ぎる(2020年7月10日配信『中国新聞』-「社説」)

 障害などを理由に不妊手術を認めた旧優生保護法下で説明もなく手術を強制されたとして、70代の男性が国に3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁が請求を棄却した。

 判決は、強制手術について「憲法13条で保護された、子を持つかどうかを決める自由を侵害した」と違法性を指摘した。ただ不法行為から20年経過すると賠償請求権が消えるという「除斥期間」の民法規定を理由に、訴えを退けた。

 あまりにも、しゃくし定規に過ぎよう。長く強いられた被害の深刻さを思えば、被害者に寄り添う姿勢を欠いた判断と言わざるを得ない。もっと血の通った救済が求められる。

 男性は1957年、14歳の頃に説明のないまま手術を施された。先輩から「子どもができなくなる手術」と教えられ、事実を把握した。だが差別や偏見を恐れ、2013年に亡くなった妻にも死の直前まで打ち明けられなかったという。

 憤りはもちろん、男性は心理的にも肉体的にも苦痛を抱えながら生きてきたに違いない。男性がやっと提訴できたのは2年前のことだった。

 「不良な子孫の出生防止」を掲げ、48年に制定された旧法がほぼ半世紀にわたって社会に残した爪痕は深い。

 男性側は「差別を受ける可能性が高く、手術を受けた事実を公表して賠償を求めるのは困難だった」と除斥期間を適用しないように求めていた。

 にもかかわらず、判決は除斥期間を厳格に適用し、「どんなに遅くとも、旧法が改正された96年の時点では、提訴が困難な状況だったとは認められない」として請求権は消滅したと結論づけた。

 社会に差別感情が根強くはびこる中で、提訴するのに強い心理的抵抗を感じ、躊躇(ちゅうちょ)したとしても仕方あるまい。声を上げられなかった被害者の事情をくみ取った判断とは言い難い。支援者からは「人間の尊厳を著しく傷つける人権侵害に時効も除斥期間もない」との声が上がる。

 遅きに失した感は否めないが、医学系学会でつくる日本医学会連合会が6月、旧法下で強制不妊手術が繰り返された問題について責任を認め、被害者への「おわび」を表明した。

 命を守るべき人たちが「命の選別」を行い、被害救済を放ってきた責任は重い。人権侵害の過ちを繰り返さない一歩を踏み出すことに「時効」はない。

 強制手術を受けた男女24人が全国8地裁に起こした裁判のうち2例目の判決となる。ただ最初の判決となった昨年の仙台地裁判決は、原告の訴えを退けたものの、旧法は違憲と断じた。

今回の判決は、旧法の違憲性に踏み込んでおらす、後退した感が否めない。

 さらに国会の責任についても、被害回復措置を取る立法が必要不可欠だったとは言えないとの判断も示した。障害者差別につながる優生思想自体は国がつくり出したものではないと理由を挙げた。被害者が受けてきた差別と偏見の実情に照らせば、到底納得できない。




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