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豪雨被害 高齢者の避難路確保が課題だ(2020年7月11日配信『読売新聞』-「社説」)

 日本列島の広い範囲で記録的な大雨が続いている。九州では犠牲者が多数に上る。河川の氾濫や土砂崩れに、引き続き警戒が欠かせない。


 熊本、鹿児島両県に豪雨被害が出てから1週間になった。激しい雨は九州全域に広がり、岐阜、長野両県でも浸水被害が出ている。今後も梅雨前線の停滞が見込まれ、各地で大雨の恐れがある。

 九州はこの時期、毎年のように豪雨に見舞われる。原因は、梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込み、次々と発生した積乱雲が強い雨を降らせる「線状降水帯」だ。海に開けた地形が影響し、気温が上昇する梅雨時に生じやすい。

 線状降水帯の兆候を把握できれば、早期避難が可能になるが、予測は難しい。台風や梅雨前線より規模が小さく、発生も急なためだ。関係機関で研究を進め、効果的な予測を実現してほしい。

 今回、亡くなった人の大半は、熊本県南部を流れる球磨川流域の高齢者だ。急激な雨量の増加に避難が間に合わず、浸水や土砂崩れの犠牲になった。雨が夜中から明け方に集中した影響も大きい。

 迅速な避難の重要性が改めて浮き彫りになったと言えよう。とりわけ高齢者の場合は、早めの行動が命を守ることにつながると、周囲も認識する必要がある。

 球磨川の支流近くにある特別養護老人ホームでは14人が死亡した。事前に避難計画を作り、訓練もしていたが、被害を防げなかった。職員が近隣住民と車いすの入所者を、階段で2階へ押し上げる途中に濁流が押し寄せた。

 1階と2階を結ぶスロープはなかったという。施設の中には、階段に固定できる簡易スロープを導入し、車いすのスムーズな移動に役立てているところもある。

 高齢者や障害者を抱える施設は、様々な災害を想定し、できる限り備えておくようにしたい。

 ホームへの浸水は、球磨川の増水で支流から水が押し寄せる「バックウォーター現象」が原因とみられる。2年前の西日本豪雨でも起きた。河川に近い施設は危険性を把握しておくことが重要だ。

 迅速な避難が難しい施設については、より安全な地域への移転も検討すべきではなかろうか。

 心配なのは避難生活である。

 自宅が土砂や濁流で損壊した被災者は多い。生活の再建は容易ではなく、避難所暮らしが長期化する可能性がある。夏本番には熱中症のリスクも高まる。こまめな水分補給と定期的な運動で、健康維持に努めてもらいたい。




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