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井浦新、斎藤工も…「映画文化」存続に広がる支援と課題(2020年7月12日配信『AERA.com』)

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「ミニシアターパーク」を立ち上げた俳優の井浦新(提供写真)

 国内で公開される映画のおよそ半数はミニシアターでしか公開されていない。しかし、日本の映画文化を担うミニシアターもコロナ禍で苦境に立たされた。4月には諏訪敦彦監督、白石和彌監督らが呼びかけ人となって、#SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」プロジェクトが発足。深田晃司、濱口竜介の両監督が発起人となってミニシアター・エイド基金も行われた。多くの映画監督や俳優らがミニシアターの救済に奮起している。ライターの藤井克郎氏が、その危機をリポートする。

 ネット上にオープンした「仮設の映画館」というユニークな方法で支援を行ったのは、ドキュメンタリー映画の想田和弘監督(50)だ。配給会社の東風(東京都新宿区)と企画したプロジェクトで、観客はインターネットで見たい作品と劇場を指定。配信で見た「入場料」は、指定された劇場と配給で半々に分配される。

「劇場公開前の作品を配信することには、最初は抵抗があったが、緊急事態ですからね。なりふり構わずやるしかないという感じでした」と想田監督。東風以外の配給会社からも賛同を得、4月25日の「開館」以来、これまでに13作品を公開している。

 想田監督も、本来なら5月2日に劇場初日を迎えるはずだった新作「精神0」を提供したが、当初は1年ほど公開を延期したらどうかと提案したという。

「でも東風から、それをみんながやっていたら、映画館がつぶれてしまうと言われた。はっとしました。1年延長しても、そのときにかける映画館がないかもしれない。何とかみんなで生き残っていかないと、と気づいたんです」

「精神0」の「仮設」は7月3日に終了し、入場者数は、6月26日までの8週間で3467人を記録。自粛明けの劇場から順次、公開が始まったが、「仮設の映画館」で見たという人も足を運んできているという。

「バーチャルなものだけでは本当に充実した感触は得られないということだと思う。逆に映画館の存在感を印象づけられることにもなって、やってよかったなと思っています」

 俳優からもミニシアターを支援する動きが起こっている。「こはく」「嵐電」など、映画を中心に幅広く活躍する井浦新(45)は、渡辺真起子、斎藤工とともに、俳優が個々に活動を行うキャンペーン「ミニシアターパーク」を発足した。

「僕らが言えるのは、映画館を、映画を忘れないでほしいということしかない」と強調する井浦によると、お世話になった各地のミニシアターが苦しんでいると聞き、自分は何ができるのだろうとずっと悩んでいた。「何しろ、映画館に行こうの『行こう』が言えないわけですからね」

 #SaveTheCinemaの呼びかけ人に名を連ねたが、多くの映画監督が最前線で戦っている姿に触発された。映画館が再開された後の第2、第3の支援となるよう、俳優たちの思いをすくい取る受け皿を作れないかと考えた。

「みんなで一緒に何かをやるのではなく、俳優一人ひとりの思いを自主的に表現する場にしたい。まずは僕ら3人が前例を作っていこうということになりました」

 監督でもある斎藤は、リモートで短編映画を作って発表。渡辺は、大分県日田市のミニシアター、日田リベルテで出演作の「風の電話」が上映された際、オンライン舞台挨拶を行った。ソーシャルディスタンスで20席だけの入場だったが、50席の空席分をオンラインで販売して、ネットを通じて舞台挨拶を見せるという形で協力した。

「僕も京都シネマで出演作の『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』が上映されたとき、オンライン舞台挨拶をやらせてもらった。このときは空席分を販売するには準備時間が足りなかったが、今後はいかに空席を補っていけるか、いろいろと試してみたいと思っています。俳優も人形ではなく一人の人間ですから、困っている人がいたら手を差し伸べて、少しでも心が癒やされるように発信できたらと思う。そのためにミニシアターパークを活用してもらえたらと願っています」

 こうして多くの善意に支えられているミニシアターだが、不安が消えたわけではない。国による援助も緒についたばかりだし、何よりいつまで席数を制限しなければいけないかというのが最大の課題だ。経済産業省や厚生労働省と相談しながらガイドラインを出しているという全興連も「夏休みが始まる7月下旬には緩和できないと厳しい」と認める。

「ウイルス学の専門家と勉強会を開いたりしているが、映画館はそもそもローリスクで、手指の消毒を徹底してマスクをすれば、満席でも安全だと言われている」と主張する想田監督は、怖いのはウイルスよりも、「自粛警察」であらわになった私たちの心だと強調する。

「芸術文化というものが、私たちが生きていくうえで必要不可欠なんだというコンセンサスが日本社会は弱いので、その部分を変えていく必要がある。例えば教育や医療はみんなが必要だと思っているから、もうからないなら学校なんてつぶせ、うちの町に病院はいらないという人はいない。でも映画館の場合だとそういう人が出てくる。いや、芸術や文化がないと生きていくことの豊かさや楽しさがなくなってしまう、とみなさんに感じてもらわないと」と意気込む。

 中でも映画文化の多様性を担っているのがミニシアターで、ユーロスペースでは7月4日から「もち」(小松真弓監督)を公開。岩手県一関市を舞台に、地元の人々が自分自身を演じるという極めて個性的な作品で、上映時間は61分と短い。一方で、シアター・イメージフォーラムで8月1日公開のスイス、フランス合作「死霊魂」(ワン・ビン監督)は、8時間26分もの大長編ドキュメンタリーだ。

「死霊魂」は2度の延期を経てようやく公開のめどが立ったが、イメージフォーラムの山下支配人は「配信で流すこともできたが、大きいスクリーンだと画面との対峙度が違う。8時間半はハードルが高いが、だからと言って除外するものではない」と明言する。

 ミニシアターパークを提唱した俳優の井浦は力説する。「大切なものと出会ったり、人生が変わったり、救われたり、そういう力を映画は持っている。それが最大限に機能して最大限に生かされる場が映画館だと思う。映画を見ることは家でもできる。でも生かされて見られるのは映画館で、だから映画館で出会うと特別な映画になるんです」

 ミニシアター存続には、私たちの文化度が試されている。

※週刊朝日  2020年7月17日号




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