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災害弱者の避難に関する論説(20207月14日) 

災害弱者の支援 避難計画の作成が急務(2020年7月14日配信『北海道新聞』-「社説」)

 九州に甚大な被害をもたらした梅雨前線は停滞を続け、大雨による浸水被害や土砂災害が本州も含め広い範囲に及んでいる。

 福岡、熊本、大分3県では、亡くなり身元が判明した人たちのうち高齢者が9割弱を占めた。

 逃げ遅れた人が多いとみられる。高齢者の避難支援の難しさがあらためて浮き彫りになった。

 行政は被害の実態を検証し、高齢者や障害者ら災害弱者の避難支援の体制構築を、地域と連携して急ぐ必要がある。

 熊本県球磨村では、昨年導入された5段階の大雨警戒レベルのうち、最も危険性が高いレベル5の大雨特別警報が出てから2時間たたないうちに川が氾濫した。

 局地的豪雨をもたらす線状降水帯の発生が近年増えている。気象庁など関係機関はさらに早い段階で、強い警告を住民に伝える方策を検討するべきだろう。

 入所者14人が亡くなった球磨村の特別養護老人ホームでは、2017年改正の水防法が浸水想定区域内の福祉施設などに義務付けた避難確保計画を作成済みだった。避難訓練も行っていた。

 にもかかわらず、未明の浸水に避難が間に合わなかった。急な豪雨にどう対応するかが課題として残った形だ。

 避難確保計画は、防災体制や避難誘導方法などを定めるものだが、計画作りは全国で遅れている。

 道内では6割の施設が未作成だ。防災の知識を持つ職員が不足していることなどが背景にあるという。市町村は計画に関する講習会の開催といった施設への支援を積極的に行ってほしい。

 専門性のある職員がいないため支援に手が回らない市町村もあるといい、道のサポートも必要だ。

 東日本大震災の後、国は災害対策基本法を改正し、災害弱者をリスト化した要支援者名簿の作成を市町村に義務付け、避難方法などを記載した個別計画の作成を地域に求めた。

 こちらの計画づくりも、道内を含め全国でほとんど進んでいない。町内会など住民団体が、地域の要支援者全員と面談して個々に計画を作成しなければならず、その負担があまりに重いからだ。

 住民任せではいけない。行政側が積極的に助言し、地域の高齢者をよく知るケアマネジャーも含めた話し合いの場を設けるなど、さまざまなサポートが求められる。

 住民同士の連携を強め、地域の実情を把握しておくことが災害時に有益となろう。



 高齢者の避難 必要な手だてを確実に(2020年7月14日配信『京都道新聞』-「社説」)

 「災害弱者」といわれる高齢者らに安全に避難してもらう困難さが改めて突き付けられていよう。

 九州を中心とする豪雨で、最初の大雨特別警報が熊本、鹿児島両県に出されて10日になる。

 活発な梅雨前線による断続的な強い雨を警戒しつつ、懸命な捜索・救助や復旧活動が続いている。

 洪水や土砂災害が相次ぎ、球磨(くま)川が広範囲で氾濫した熊本県を中心に死者は70人を超え、10人前後が行方不明となっている。

 際立っているのは、犠牲者の多くが高齢者であることだ。自宅で川の増水や土砂崩れに巻き込まれたほか、高齢者施設で多数が犠牲となり、衝撃を与えた。

 熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」は4日未明に水没し、入所者14人が亡くなった。

 宿直の職員数人と駆けつけた近隣住民の計約20人で入所者を1階から2階に運び、51人は助かったが、途中で濁流が押し寄せた。エレベーターがなく、階段を車椅子ごと数人がかりで上げるのに時間がかかったという。

 園は球磨川に支流が注ぐ地点に近い。同村は前日夕、大雨を警戒して「避難準備・高齢者等避難開始」情報を発令。夜間に勧告、指示に引き上げた際、わずか1時間半で球磨川の水位は約3メートルも急上昇したという。

 増水で合流できない支流が津波のように逆流する「バックウオーター現象」が起きたと専門家は指摘している。どこまで危険性が認識されていたのか、早い段階で入所者の避難を始められなかったのか、詳しい検証が求められる。

 今回の豪雨で被災した高齢者施設は、福岡、熊本両県を中心に特養、グループホームなど99カ所に上る。入所者は自力歩行が難しかったり認知症だったりする人も多い。地価の安さなどから川沿い、山間部など災害の恐れの高い立地が少なくないことを見つめ直す必要があるだろう。

 施設の防災対策は、2016年の台風で岩手県のグループホーム入所者9人が犠牲になったのを受け、浸水想定区域内の特養、病院などそれぞれに「避難確保計画」の策定が義務付けられた。

 だが、今年初めの策定率は45%にとどまり、滋賀は30%、京都は6%しかない。災害リスクを総点検して策定を急がねばならない。

 大切な命を守るため、どの状況で、誰が、何をすべきか。必要な手だてを訓練で確かめ、裏付けとなるマンパワー確保や施設改修などで備えておくことが不可欠だ。



災害弱者の避難 空振り恐れず早めの行動を(2020年7月14日配信『北国新聞』-「社説」)

 九州豪雨の影響でこれまでに死亡した人のほぼ9割が65歳以上の高齢者だったことは、自力で行動することが困難な「災害弱者」の避難支援の難しさをあらためて際立たせた。

 14人が犠牲になった熊本の特別養護老人ホームでは、避難勧告や特別警報が深夜から早朝にかけて出たため、状況が急激に悪化する中で、入所者一人を4~5人で運ぶ過酷な救助行動を強いられ、避難に時間を要したとみられる。日頃の訓練とともに、警戒レベルが低い段階でも、見守る側が空振りを恐れず早期避難に踏み切ることの重要性を示している。

 国土交通省によると、河川の氾濫や土砂災害の恐れがある特別養護老人ホーム、学校、病院などには、施設の所有者、管理者が建物内外の安全な場所や避難開始のタイミングなどを定める「避難確保計画」の策定が義務付けられている。その上で定期的な避難訓練を実施することが求められる。

 ただ対象となる全国7万7906施設のうち、策定は45%にとどまる。石川は対象施設の74%、富山では同56%が策定済みだった。今回多数の犠牲者を出した熊本の特別養護老人ホームでは、避難計画を策定し訓練も実施していたが想定外の速さで事態が悪化したため、十分生かせなかったようだ。今後につなげるためにも、避難対応の課題を入念に検証したい。

 今回の豪雨では各地で高齢者向け施設の被災も目立った。災害弱者が過ごす施設は本来最も安全であるべきだが、全国的に川沿いや山間地にある場合が少なくない。立地のあり方も精査が必要だろう。

 豪雨災害では、今回も含め高齢者が自宅で被災するケースが相次いでいる。昨年秋の台風19号の際は、自ら自宅にとどまったり、体が不自由で避難できない人が多く犠牲者の半数が70代以上だった。

 内閣府は、災害時に自力避難が困難な災害弱者のうち、危険度が高い区域に住む人をリストアップするよう市区町村に要請した。危険区域に住む人には、自治体が地域と連携して、常日頃から自宅の被災リスクをこまめに伝え、災害時の行動を助言することが、万一の時の迅速な行動につながる。



豪雨への備え/高齢者の早期避難徹底を(2020年7月14日配信『神戸新聞』-「社説」)

 九州を中心に大きな被害をもたらした豪雨災害は発生から10日となる。死者・行方不明者は約80人、1万3千棟以上の住宅が浸水や土砂崩れなどで被災した。

 停滞する梅雨前線の影響で、今後も西日本から東日本にかけて大雨の恐れがある。長雨で緩んだ地盤は、少しの雨でも土砂崩れなどを起こす危険性が高い。今は落ち着いている地域でも警戒を緩めず、一人一人が命を守る行動を心がけたい。

 被害状況が明らかになるにつれ、高齢者の避難の難しさが課題として浮上してきた。

 福岡、熊本、大分3県で亡くなった人の大半が65歳以上だった。最も多い64人の死亡が確認された熊本県は約8割の死因が溺死だったと公表した。半数以上は屋内で発見されたという。急激に雨量を増した未明の雨で、逃げ遅れた高齢者がいかに多かったかが分かる。

 同県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」では入所者約50人が2階に避難して助かったが、14人が間に合わずに亡くなった。エレベーターはなく、夜勤の職員数人が地域住民の手助けで車いすの利用者らを運ぶ途中、水かさが急増したという。

 近年多発する水害では、地価が安いなどの理由でリスクの高い場所にある高齢者施設の被災が目立つ。

 2016年の台風で岩手県岩泉町の高齢者グループホームが浸水し入所者9人が亡くなったのを受け、国は翌年、水防法などを改正した。浸水想定区域の施設に避難計画の作成と訓練を義務付けたが、今年1月時点で作成率は45%にとどまる。

 千寿園は避難計画を作り、訓練もしていた。だが、夜間や2階への避難を想定していたのか、園の当日の対応とともに検証が必要だ。

 実効ある計画や訓練ができていない施設は全国にあるとみられる。行政は施設任せにせず、専門家の助言や地域の協力も得て、実情に合った改善に取り組まねばならない。

 危険な場所での福祉施設などの新設を禁じる改正都市計画法も6月に成立し、2年以内に施行される。ただ既存施設には、補助金で移転を促すものの強制力はない。

 移転が難しい施設も多い。立地の危険度を十分に認識し、早めの避難を徹底しなければならない。併せて居室を2階以上にしてスロープを付けるなど、安全な場所に逃げられなくても、施設内で命を守り通せる対策を急ぐべきだ。

 常識が通用しない災害が頻発している。わずかな時間で事態は急変し、警報や避難指示が遅れる場合もある。各家庭でも避難のタイミングを逃さないよう、雨の降り方などの異変に細心の注意を払いたい。






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