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高齢者の防災 綿密な計画と早めの避難が重要(2020年7月17日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 災害時の高齢者避難の難しさがまたも浮き彫りとなった。記録的な豪雨に見舞われた熊本県球磨村で、特別養護老人ホーム「千寿園」が浸水し、入所者14人が命を落とした。

 近年の甚大な水害では高齢者施設が被災し、大勢が犠牲になる例が相次ぐ。施設を巡っては自力で移動できない入所者が多いなど、避難には通常よりハードルがある。常識が通用しない豪雨などから高齢者の命を守るには、綿密な避難計画と早めの行動が不可欠だ。災害リスクが高い場所からの移転も着実に進めなければならない。

 4日未明、球磨村を流れる球磨川はわずか1時間半ほどで水位が約3メートルも上昇。避難勧告が避難指示に切り替えられ、千寿園では職員と地域住民らで入所者を2階に運んだ。エレベーターはなく、寝たきりや車いすの人も多いため、避難に時間がかかったという。

 千寿園は球磨川の支流にほど近く、避難計画の策定が義務付けられ、訓練も年に2回実施。地域住民も加わり、高齢者を移動させたり、施設外に運び出したりする手順を確認していた。にもかかわらず、職員が手薄な時間帯の急激な増水に避難が間に合わなかったとみられる。当時の対応を検証し、今後の防災に生かすことが求められる。

 近年、大雨や台風で高齢者施設がしばしば被災している。2009年には山口県防府市の特養に裏山から土砂が流入し、入所者7人が死亡。16年には岩手県岩泉町のグループホームが川の氾濫で浸水し、入所者9人が亡くなった。

 国は岩泉町の災害を受け、水害の恐れがある特養、病院などに避難計画の策定などを義務付けた。だが、今年1月時点で策定済みは45%にとどまる。施設の運営者はリスクを点検し策定を急がなければならない。自治体は施設任せにせず、専門知識や避難先確保などの面で支援する必要がある。計画は新たな知見に基づき改善を重ね、実効性を高めることも重要だ。

 高齢者施設の立地も防災上の大きな問題となっている。施設には駐車場を併設するため、一定の広さが必要だ。地価の安さなどから、川沿いや山間部など災害の危険性が高い場所に立地するケースも少なくない。

 問題解決へ、6月に改正都市計画法が成立した。危険性が高い場所での病院や福祉施設などの新設を認めない。一方、既存施設には補助金で移転を促すだけで強制力はない。法施行も2年後の予定となる。国は新設を含め、安全な場所に誘導する施策の強化を急ぐべきだ。

 移転の有無にかかわらず、改めて事前の避難を徹底したい。施設にとどまっても身を守れるよう、高床式への改築や、2階以上を居室にするといった対策も有効だろう。犠牲者を出さないため、ソフト、ハード両面で備えを進めてほしい。行政は地域と連携し、避難の支援体制を拡充しなければならない。




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