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夜の二人(2020年7月17日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 高村光太郎(1883~1956年)の詩集「智恵子抄」の中に「夜の二人」という作品がある。「私達の最後が餓死であらうといふ予言は、しとしとと雪の上に降る霙(みぞれ)まじりの夜の雨の言つた事です」―。

 何とも幻想的で、うら悲しい書き出しが、読む者を引き込む。書かれたのは光太郎と智恵子の結婚から12年後の1926(大正15)年。詩は続く。「智恵子は人並はづれた覚悟のよい女だけれど まだ餓死よりは火あぶりの方をのぞむ中世期の夢を持つてゐます」。

 火あぶりよりも残酷かもしれぬ餓死。子どもだからこそ、どれほどつらかったことか。東京都のマンションの一室で母親から1週間以上放置され、3歳女児が衰弱死した事件。司法解剖の結果、死因は高度脱水症状と飢餓だった。胃に食べ物はほとんど残っていなかった。

 逮捕された母親の梯(かけはし)沙希容疑者も幼いころ、都城市の自宅で母親から暴力を振るわれたり、衰弱しているのに放置されたりといった虐待を受けていたという。虐待の連鎖なのか。梯容疑者のやったことは決して許されない。ただ、昨年夏ごろまでは娘をかわいがり子育てを楽しむ姿も見られていた。

 光太郎と智恵子の最期は、ともに病死。餓死ではなかった。少なくとも2人には付き合いのある親族もいて孤立無援の状態ではなかった。この母子にも頼れる人、手を差し伸べる人がいたなら…。せんないことは承知の上で「たられば」を繰り返してしまう。




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