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ネグレクト 危険な兆候見逃さないで(2020年7月19日配信『西日本新聞』-「社説」)

 幼い子どもの痛ましい死が再び繰り返された。救い出す道を社会全体で探り続けたい。

 東京都大田区の自宅に3歳の女児を放置し衰弱死させたとして、保護責任者遺棄致死の疑いで24歳の母親が逮捕された。母親は宮崎県出身で、交際男性に会うため鹿児島県を訪ね、約1週間も留守にしたとされる。死因は高度脱水症状と飢餓で、胃の中に食べ物はほとんど残っていなかった。

 母親は離婚後、母子2人で暮らしていた。日頃から女児を自宅に残し出掛けることがあり、深夜まで飲食店で過ごすこともあったという。母親は「子育てが大変でリラックスしたかった」との趣旨の供述をしているようだが、逮捕容疑が事実なら、残酷なネグレクト(育児放棄)というほかない。

 育児放棄は、殴る蹴るといった身体的虐待に比べ、比較的軽い行為のような印象を持つ人もいる。それは誤りだ。今年1月にも千葉県市原市で、生後10カ月の女児が衰弱死する事件が起きた。自力で食べ物や水を確保できない幼い子どもにとって、生死に関わる虐待行為だと改めて認識する必要がある。

 全国の児童相談所が2018年度に対応した虐待の相談・通告件数は約16万件あり、その5割以上が心理的虐待だ。子どもの前での夫婦間の暴力である面前ドメスティックバイオレンス(DV)も、警察が近年積極的に通告するようになった。

 一方、育児放棄は全体の2割弱だが、家庭という「密室」に閉じ込め、静かに徐々に継続されるので、周囲が気付きにくいとされる。相談・通告に至った事案は氷山の一角だろう。

 乳幼児健診を受診しない。保育園や幼稚園の長期の休みが続く。こうした兆候が確認できたら、早期に学校や児相、保健所が連携して家庭への介入を急ぐべきだ。

 育児放棄を受けている子どもは、放置されている虫歯が極端に多いという指摘がある。このため、各地の歯科医師会が3歳児歯科検診や学校歯科検診を担当する歯科医師に注意を呼び掛けている。乳幼児に接する機会のある人々は危険な兆候を見逃さぬようにしてほしい。

 若年出産で養育能力が低い世帯、乳幼児を含む多子世帯、身辺に頼る人がいないひとり親世帯などは虐待リスクが比較的高いとされる。生活に追われ、仕事と育児の両立に疲弊し、子どもを放置するうちに深刻な育児放棄に至ってしまうケースは過去に幾つもあった。

 こうした苦境にある家庭を早期に見つけ出し、行政やNPOが協力して支える体制を各地域に構築することも肝要だ。




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Author:gogotamu2019
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