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養育費不払い 逃げ得、許さぬ制度急げ(2020年7月20日配信『中国新聞』-「社説」)

 離婚した後、子どもの養育費が約束通り払われないなどで困窮するひとり親家庭が目立つ。特に母子家庭では、7割以上が受け取っていないという。こうした不払いの解消に向け、政府がようやく重い腰を上げた。法改正を含めた公的な仕組みづくりの検討を始めた。

 欧米をはじめ先進国の多くが強制徴収制度などを設けているのに比べ、大きく遅れている。政府は養育費を払わない親の逃げ得を許さず、実効性のある制度づくりを急ぐべきだ。

 子どもの貧困率は2018年の厚生労働省調べで、13・5%に上る。ひとり親家庭に限ると48・1%と3・5倍に跳ね上がる。特に、その9割近くを占める母子家庭の生活は苦しい。年間平均所得は306万円と全世帯平均の6割にも満たない。

 パートやアルバイトなど非正規労働に就き、年収200万円を下回るシングルマザーも多く、8割以上が「生活が苦しい」と訴えている。養育費不払いが、追い打ちを掛けており、その解消が求められる。

 近年、離婚する割合が増え、その数は20万組を超す。うち6割に未成年の子がいるという。成長するにつれて教育費がかさむ。離婚という親の事情で、子どもが将来の夢を諦めることがあってはならない。

 民法では、子どもが自立するまで必要な費用は親が分担する義務があるとし、離婚時に養育費を受け取る取り決めを定めるよう求めている。しかし母子家庭の6割は離婚時、取り決めをしていないのが実情だ。家庭内暴力(DV)が絡む場合、話し合いができないケースが多い。取り決めていても支払われないことも少なくないという。

 政府は6月、法務省内に有識者会議を設け、議論を始めた。離婚時に支払いの取り決めをどうやって促すかや、立て替えや強制徴収を制度化するかが焦点になる。子どもがきちんと養育費を受け取れるよう行政による強制的な徴収や立て替え払い、債権回収を専門とする民間機関の活用などを検討する。年内には提言をまとめる予定だ。

 支払いの取り決めを義務化し、離婚成立の要件に定める必要がある。DVなど当事者間の話し合いが難しければ、代理人協議など実情に即した仕組みづくりも不可欠だ。

 ただ取り決めをしても、養育費が支払わなければ絵に描いた餅になる。4月に改正民事執行法が施行され、裁判所に申し立てれば相手の預貯金や給与情報が得られるようになった。しかし差し押さえの手続きは煩雑だ。生活に追われていれば時間的にも金銭的にも余裕はない。

 米国や英国では、行政が養育費を支払わない親の給与から天引きし、銀行口座を差し押さえる制度がある。しかし日本にはなく、自治体が独自に取り組まざるを得ない。兵庫県明石市は今月、立て替え制度を始めた。仙台市は民間企業に督促や回収を代行してもらう際の保証料を補助する。先進的な自治体の試みは評価できるが、制度をきちんと整えるのは国の責任だ。

 コロナ禍による雇用情勢の悪化が、さらに母子家庭を苦境に追い込んでいる。政府は、給付金など緊急対策に力を入れるのはもちろん、養育費不払いの抜本的解消による、生活基盤の安定策も急がなければならない。 




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Author:gogotamu2019
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