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強制不妊訴訟 旧法の違憲性裁いてこそ(2020年7月20日配信『西日本新聞』-「社説」)

 国が誤った法律によって非人道的行為を続けた責任と被害の重さを直視した判決とは言い難い。むしろ、司法への期待に背を向けた結論ではないか。

 旧優生保護法の下で不妊手術を強制された男性が国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁が先日、訴えを棄却した。

 男性は1957年、14歳の時に何の説明もないまま手術を施され、60年にわたり身体的、精神的苦痛を背負わされたとして2018年5月に提訴した。

 焦点は旧法そのものの違憲性と、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する民法上の除斥期間の起算点をどう捉えるかだった。旧法は差別を助長し、被害者は長年、提訴に踏み切れない境遇に置かれたからだ。

 判決は、男性の手術は旧法で定める疾患がないのに行われており、憲法13条が保障する私生活上の自由を侵害したと述べ、個別事例としての違憲性は認めた。しかし旧法の違憲性には全く触れず、損害賠償権も既に消滅していると結論づけた。

 除斥期間の起算点は遅らせるとしても、旧法が母体保護法に改められた1996年が限度とした。その後、手術の不当性は広く認識され、提訴は可能になったとの判断だ。政府や国会が長年救済に動かなかった責任も「優生思想は国が作出したものではない」などと否定した。

 釈然としない判決だ。原告弁護団は「司法が人権救済の役割を放棄したに等しい」として控訴した。問題の深刻さに照らせば当然だろう。同様の訴訟で昨年、仙台地裁が請求を退けながらも旧法を違憲と判示した。それよりも後退したと言える。

 そもそも国がこの問題で被害者に謝罪し、一時金(一律320万円)を支払う救済法を制定したのは昨年のことだ。96年時点で問題が解消したかのような判断は実態と懸け離れている。旧法の違憲性は日弁連をはじめ多方面から指摘されてきた。

 旧法下で手術を受けた人は約2万5千人、うち半数近くが存命と推定されながら、一時金支給者は先月末時点で621人にとどまる。救済法の周知不足や支給額の低さを指摘する声も多い。にもかかわらず司法が憲法判断を避け、国の立場を半ば擁護するような姿勢は、被害者救済の流れに逆行する。

 日本医学会連合は先月、医療者が旧法を後押ししたことへの深い反省と謝罪が必要だとする報告書をまとめた。これも問題の根深さを物語る動きだ。

 旧法を巡る国家賠償訴訟は九州を含め全国九つの地・高裁で争われている。各裁判所が横並びの判断に流れず、人権と正面から向き合う「血の通った裁き」を進めるよう強く求めたい。




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Author:gogotamu2019
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