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海の日に考える 廃プラスチック漂流記(2020年7月23日配信『東京新聞』-「社説」)


 コロナ禍でテレワークになった時、運動不足解消のために始めた早朝散歩が今も続いています。

 愛知県知多半島の田園地帯の農道を、コースを決めずに30分から1時間。途中浜辺に腰を下ろして、ひと休みするのが日課になりました。

 ぼんやり海を眺めていると、半透明の浮遊物がクラゲのように漂いながら、波間に消えていくのをしばしば目にします。

 あのレジ袋。どこから来て、どこへ流れていくのでしょうか−。

◆七つの海を漂うもの

 「コンティキ号漂流記」で知られるノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールは、インディ・ジョーンズのような探検家でもありました。

 太平洋の島々に伝わるポリネシア文化の起源が南米大陸にあるという仮説を証明するために、1947年、古代インカ人の技法にならったバルサ材のいかだ「コンティキ(ペルーの太陽神)号」でペルーを出航、約8000キロ離れた南太平洋のラロイア環礁へ、100日余に及ぶ漂流実験を成功させました。

 それから22年後の69年、今度は大西洋をまたいだ文明の交流を証明すべく、ヘイエルダールは、クフ王のピラミッドに描かれたパピルスの葦舟(あしぶね)を再現し、「ラー(エジプトの太陽神)号」と名付けて、モロッコからバルバドスへ、大西洋横断の冒険にこぎ出します。

 一度目は失敗でした。葦舟は出港から約八週間後、船体が破損し、波間に消えていきました。

 ちょうどそのころ、米国の有人宇宙船アポロ(ローマ神話の太陽神)11号が、人類史上初の月面着陸に成功しています。

 ヘイエルダールは翌年、「ラー二世号」で、大西洋横断6100キロの航海を成し遂げますが、洋上で目の当たりにした大西洋の異様な姿に、強い衝撃を受けました。

 滑らかな海面はまるで油を流したみたいにぎらぎら光り、何やら黒い塊が浮かんでいます。その汚染された海面もまた、ラー二世号と同じように、カナリア海流に乗って南米大陸へ、ゆっくりと流されていたのです。

◆レジ袋の旅路の果ては

 ヘイエルダールは書きました。

 <しかし石油による汚染は現代人の海に対する唯一の贈り物ではなかった。ずっと見張りを続けていると、プラスチック容器や、ビールの空缶や、空瓶や、あるいはもっと腐りやすい包装用ケースやコルクなどのがらくたが、ラー二世号の近くを漂わない日は一日としてなかった>(葦舟ラー号航海記)

 ヘイエルダールはラー二世号の航海記録を基に海洋汚染の実態報告書をしたためて、国連に送っています。

 <世界の海洋を、人の出す永続的廃棄物の国際的ごみ投棄場として無分別に利用し続けることは、動植物の繁殖と生存そのものに修復不能な影響を与えるにちがいない−>

 この報告書などをきっかけに、船舶による海の汚染を規制する「マルポール条約」が結ばれました。しかし、「無分別な利用」は今も続いているようです。

 ところで、あのレジ袋。どこから来て、どこへ流れていくのでしょうか。

 海の中には、陸(おか)からはうかがうことのできない流れがあって、あらゆるものを水平線のかなたへと運んでいってしまいます。
 世界中の街から川、川から海へ流れ出たプラスチックごみの多くは、海中の巨大な流れに乗って、ハワイと米西海岸の間に位置し、「太平洋ごみベルト」と呼ばれる海域に漂着します。

 広さ160万平方キロ超。日本列島が4つ以上、すっぽり収まる広大なごみの海、というよりもはや大陸です。

 そのほとんどがプラスチック。太陽の光で分解されても「マイクロプラスチック」と呼ばれる微細な粒子になって、大海を漂い続けます。

 現時点では、安全に回収できる技術はなく、今のペースで排出が続けば、2050年には海のプラスチックごみの重量が、魚のそれを上回るという計算になるそうです。

 海も海の生き物たちも、窒息寸前なのかもしれません。

 ではそのごみは、どこから流れてくるのでしょうか。

◆「いらない」と言う理由

 詳しくはわかりませんが、私たちの暮らしの中から、ということだけは確かでしょう。

 ヘイエルダールは「葦舟ラー号航海記」を、このように結んでいます。

 <海は無限ではない>と。

 そう、海は無限ではありません。だからこそ私たちはまず、不要なレジ袋は「いりません」と言うべきなのだと思うのです。



地球環境を考える一日(2020年7月23日配信『朝日新聞』-「越山若水」)

「海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西(ふらんす)人の言葉では、あなたの中に海がある」。詩人、三好達治の処女詩集「測量船」に収められた「郷愁」の一節だ

▼日本語の漢字「海」には「母」の文字が隠されている。同じように、フランス語の「母=mère」と「海=la mer」はつづりが似ていて、発音も共通している。海は生命の母、万物の生みの親―という民族を超えた言語感覚に気づき、三好は詩にしたためた

▼私たち人間がすむ地球は「水の惑星」と呼ばれる。地表の3分の2は水で覆われているからだ。そのうち淡水はわずか2・5%に過ぎず、大部分は海水が占めている。生物の起源は海にあるとされ、そこから陸へ空へと進出した。海はまさしく母なるふるさとである

▼きょうは「海の日」。海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う国民の祝日である。あれっと思う人も多いだろう。1995年の制定当時は7月20日。後に7月第3月曜日に変更されたものの、今年は東京五輪の開催に合わせて「スポーツの日」ともども移動した

▼五輪の1年延期が決まり妙に拍子抜け。さらに新型コロナの流行で海へ出かける気分もそがれる。とはいえ最近、使い捨てプラスチックごみの海洋汚染が世界的な問題になっている。母なる海のピンチを救うべく、地球環境を考える一日にしたい。




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Author:gogotamu2019
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