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アビガン検証「使命感だけでは限界」 藤田医大教授(2020年7月24日配信『日本経済新聞』)

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オンラインでインタビューに応じる藤田医科大学の土井洋平教授

新型コロナウイルス感染症に対して新型インフルエンザ治療薬「アビガン(一般名ファビピラビル)」の効果を検証する特定臨床研究を実施した藤田医科大学の土井洋平教授は日本経済新聞社のインタビューに応じた。薬を飲んだ患者で改善傾向があったものの、改善幅が予想より小さく、飲まない人と比べて統計上の有意差が確認できない結果に終わった。「対象の患者数を増やせば、有意差が出る可能性はある」と話す一方で、「今の体制のまま使命感だけで臨床研究を継続するのは限界だ」と訴えた。

――今回の臨床研究で分かったことは何ですか。

「アビガンについては、当初の期待ほどの効果は確認できなかったことだ。2月に中国から、アビガンの後発薬が新型コロナ患者の解熱までの期間を大幅に短縮したという臨床試験(治験)の結果が発表された。この結果が日本でも再現できるかどうかを検証した。同じ程度の効果があれば、86人の患者が参加する研究で統計的な有意差をもって効果を確認できると考えた。しかし、今回はそこまでの差が出なかった」

――治療効果はなかったのでしょうか。

「個人の意見になるが、今回の結果や中国のデータなどをみると、何らかの効果はありそうだと考えている。ただ劇的な効果ではない。(新型コロナの感染が拡大していた)3~4月ごろは期待が先行し、『患者全員に投与すべきだ』といった極端な意見が出ていた。今回の研究で、すべての問題を解決する薬ではないということが数字として出てきた」

「200人程度が参加していたら有意差が得られた可能性がある。ただ日本国内で200人規模の臨床研究を実施するのは非常にハードルが高く、我々も次の臨床研究をする計画はない。開始しても終了まで何年もかかり、社会からの要請に応えられないためだ」

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新型コロナウイルス感染症に対する効果について検証が進むアビガン

――得られたデータをどう生かしますか。

「データは個々の患者に合わせて、治療効果を判断する指標になり得る。詳細を論文として公表する予定だ。加えて、データ提供の要請があれば応じる準備をしている。アビガンについては我々の臨床研究とは別に、薬を開発した富士フイルムが治験を実施している。国内で2つのデータが出そろった上で、必要な患者に分け隔てなく薬剤が届くようにするのがよいだろう」

――臨床研究を進める際に直面した課題は何ですか。

「日本ではアビガン以外でも新型コロナ治療薬候補の臨床研究が進んでいるが、いずれも進捗が遅いと感じる。構造的な課題があると考えている。課題は複合的だが、1つは市中病院における臨床研究の支援体制が十分ではないことだ。厚生労働省の事業で大学病院で治験などを実施する体制を整備してきた。一方で、新型コロナ患者の多くが入院する感染症指定医療機関などは診療が中心で、治験などを実施する体制が弱い」

「今回の臨床研究に参加してくれた病院では、フルタイムで診療している医療スタッフが休日返上で、患者への説明や防護具を装着した毎日の検体採取、大急ぎでのデータ入力などに対応した。診療負荷が大きく参加を断った病院もある。これらの業務の一部は外注できるが、契約に時間がかかるなどの理由で諦めた例もある。今回は短期決戦で各施設の医師らに無理をしてもらったが、使命感だけで続けるのは限界だ」

「新たな医療機関が参加する手続きにも課題を感じた。新型コロナはクラスター(感染者集団)が見つかると、地域で一気に患者が増える。入院患者が増えた病院が新たに臨床研究に参加するための手続きは、急いでも2週間はかかる。2週間後には患者は退院していなくなってしまう例が多いため、クラスターを追いかけるのに苦労した。がんや糖尿病などの慢性疾患では2週間は問題ないが、急性疾患の場合は1日の遅れも問題になる」

――どのような体制が望ましいと考えていますか。

「海外の事例が参考になる。米国で治験などを実施する病院には、研究支援業務を担う看護師や検査技師などがいる。主治医をサポートし、個々の患者の詳細なデータが迅速に得られる。英国では現場の負担が大きい検査を極力減らし、体温や症状など診療で得られるデータを集める。その代わりに1万人以上の多くの患者を登録し、数でデータの質を補完する。ただ米国型はお金がかかる。英国型は感染爆発した国でしか採れない戦略だ」

「日本では治験などに参加する施設のネットワークを維持しておくことが重要だ。治療薬やワクチンの候補など必要な試験を順番に実施し、結果が出れば同じ体制のなかで次の候補薬を試す。こうした枠組みがあれば今よりも早く効果の検証が進むはずだ」

(岩井淳哉)



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