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接触確認アプリ、欧州で「官製」不評 アップル・グーグル連合製が高評価の訳(2020年7月26日配信『毎日新聞』)

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フランス政府が開発したアプリ「ストップコビッド」のアイコン=久野華代撮影

 欧州連合(EU)が推奨する、新型コロナウイルスの感染者と接触した人に通知が届くスマートフォン向けアプリの普及が難航している。背景には、効率とプライバシーを巡る葛藤がある。現状のアプリ普及競争では意外にも、これまで欧州でプライバシーの敵とみられていた米ⅠT大手が優位に立っている。【ブリュッセル八田浩輔、パリ久野華代】

仏の利用人口3%未満、接触通知たった14件

 パリに住むジュリエットさん(24)は、6月初旬に仏政府が配信したコロナ追跡アプリをダウンロードしたが、今は使っていない。「利用者が少なすぎて機能しないと知ったから」と理由を語る。

 仏政府によると、配信3週間後の6月下旬までに190万件ダウンロードされたが、46万件が既に削除された。利用人口は3%に満たず、陽性者との接触の可能性が通知された数は14件にとどまる。

 欧州では5月半ばから外出規制が段階的に緩和され、接触確認アプリは任意利用ながら「第2波」への備えに重要なツールの一つと位置づけられている。EU欧州委員会は「アプリの可能性を最大限に引き出すには多くの市民の参加が必要」と利用を呼びかけるが、仏メディア、フランス・アンフォなどが実施した世論調査では、仏国内でアプリを使用したいと答えた人は約半数にとどまる。

「政府が管理するデータの扱い信用できない」
 
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 ネックとなっているのは、国家による監視やプライバシー侵害への懸念だ。

 欧州各国が導入・検討するアプリの基本的な仕組みは共通している。アプリを入れたスマホ同士が一定の距離に近づき一定時間が経過すると、近距離無線通信(ブルートゥース)を通じて接触者として情報が記録される。その後、利用者の感染が判明すると、2週間程度の間に接触した人の端末に通知が届く。

 だが、匿名化された利用者の接触データの管理に関わる制度設計は各国で異なる。ドイツやイタリアなど大部分の国では日本と同様、データを端末内にとどめる「分散型」を、フランスはデータを政府のサーバーで一元管理する「集中型」をそれぞれ採用している。「集中型」は当局が集団感染などを効率的に把握しやすいが、サイバー攻撃へのリスクや国家による監視に道を開くとの批判がある。

 「分散型」のドイツでは6月半ばに配信されたアプリが既に1500万件以上ダウンロードされたが、「集中型」のフランスでは、5月の世論調査で54%が「政府が一元管理するデータの取り扱いが信用できない」と回答するなど、普及が進まない。

往来自由な欧州で統合されないシステム

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仏政府が配信したコロナ追跡アプリ「ストップコビッド」を開くと表示される個人情報の保護について説明した画面=久野華代撮影

 システムの相違は、アプリの互換性の障壁にもなる。国境検査なしで自由な往来が保障された欧州では、アプリの有効性を高めるためには国境を越えた相互利用が欠かせない。だが欧州委員会によると、「集中型」を採用したフランスは当面の間、他国のアプリと相互運用できないという。

 一方、アプリの運用そのものを見送る動きも出ている。非加盟だがEUの個人データ保護規制が適用されるノルウェーは、プライバシー上の懸念からアプリの運用を停止すると6月中旬に発表。ベルギーでもアプリが扱う個人データを巡る議論が続き、本格的な導入に至っていない。ベルギー政府は感染拡大を受けて2000人の調査員を採用し、感染者の接触経路を追跡する体制を強化。マンパワーによる追跡調査に力点を置く方針だ。

GA連合、プライバシー配慮先取りで主導権

 今や少数派となった「集中型」アプリだが、当初は欧州統一規格として想定されていた。ドイツ、フランス、イタリア、スイスなど8カ国の研究機関は4月初めに共同プロジェクトを開始。政府が接触データを一元管理する「集中型」を念頭に開発を進めていたが、「前例のない監視システムを生む可能性がある」などとして科学者のグループから懸念の声が出た。

 直後に米IT大手アップルとグーグルがアプリ開発で手を組むことを発表し、欧州側は主導権を握られた。世界のスマホ基本ソフトのシェアを二分するアップル・グーグル連合が開発を進めたのは、利用者の特定を困難にするなどプライバシーにより配慮した「分散型」だった。欧州側は両社に「集中型」も採用できるよう設定の変更を求めたが譲歩を引き出せず、ドイツを含む多くの国が両社との協力に流れた。

 EUは近年、両社を含むGAFA(ガーファ)と呼ばれる米巨大IT企業への対決姿勢を強めており、個人データの利用をめぐっても世界に先駆けて厳しい要件を定めた法律「一般データ保護規則」(GDPR)を制定している。違反時に巨額の制裁金を科すことができる規制は、GAFAを狙い撃ちにしたとも指摘される。こうした経緯からグーグルとアップルは、プライバシーへの配慮を進め、それが今回、「集中型」を排除する結果となった。

かたくなな仏「健康も技術もフランスの主権」

 1月にEUを離脱した英国も、当初は独自開発した「集中型」アプリの提供を目指していたが、6月半ばに「技術的な障壁」を理由にアップル・グーグルとの協力を表明した。

 アプリ開発を巡る各国の動きについて、欧州メディアはアップル・グーグル連合の「勝利」と報じた。

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接触確認アプリの機能を説明するドイツ政府のホームページ

 これに対し、フランスのセドリック・オ・デジタル担当相は地元メディアに「アプリに関わる企業はすべてフランス企業でなければならない。フランス人を守ることは国家の使命であり、健康も技術もフランスの主権の問題だ」と述べ、現状を維持する姿勢を示している。


接触確認アプリの普及状況

①ダウンロード数(100万件)②人口(100万人)③割合(%)

ドイツ①15.0②83.1③18.0

イタリア①4.2②60.4③7.0

アイルランド①1.3②4.9③26.5

フランス①1.9②66.9③2.8




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Author:gogotamu2019
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