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車にGPS「見張り」該当せず ストーカー事件で初判断 最高裁(2020年7月30日配信『時事通信』)

 車に全地球測位システム(GPS)を取り付けて動静を把握する行為が、ストーカー規制法で禁止された「見張り」に該当するかが争われた2件の刑事事件の上告審判決が30日、最高裁第1小法廷であり、山口厚裁判長は検察側の上告を棄却した。

 「見張りには当たらない」とした二審の判断が確定する。

 小法廷は違法な「見張り」について、被害者宅などの「付近」で被害者の動静を観察する行為とする初判断を示した。いずれの二審も「見張り」を目視などの直接的な観察に限定。GPSでの遠隔監視を処罰できないと判断しており、最高裁判決が注目されていた。

 判決が言い渡されたのは、当時の妻の車にGPSを取り付けた男(48)と、元交際相手の車に取り付けた男(53)。 



ストーカーがGPSで居場所を追跡しても「見張り」に当たらず 最高裁が初判断(2020年7月31日配信『東京新聞』) 

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 元交際相手らの車に無断で衛星利用測位システム(GPS)を取り付けて居場所を知ることが、ストーカー規制法が禁じる「見張り」に当たるかどうかが争われた2つの事件の上告審判決で、最高裁第1小法廷は30日、「見張りに当たらない」との初判断を示した。裁判官5人全員一致の意見。

◆ストーカー規制法に規定なし

 同法は住居や勤務先など相手が普段いる場所の近くで見張ることを禁じているが、GPSに関する規定はない。GPSを使ったストーカー被害は絶えず、法改正を求める議論につながる可能性がある。

 山口厚裁判長は判決理由で、同法の「見張り」の定義を「機器を使う場合であっても、相手が普段いる場所の付近という一定の場所で、動静を観察する行為」と判断。離れた場所の車の位置情報を知ることは見張りに当たらないとした2件の2審判決を支持し、検察側の上告をいずれも棄却した。

◆見張り認めた地裁判決、高裁で破棄

 事件の1つは、長崎県の男(53)が2016~17年、元交際相手の車にGPS機器を取り付け、パソコンや携帯電話で位置情報を約600回確認したとするもの。1審佐賀地裁は、車自体を相手が普段いる場所とみなして見張りに当たると判断し、懲役6月を言い渡した。2審福岡高裁は、視覚で直接見る行為がなければ見張りに当たらないとして、1審判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。

 もう1つの事件では、福岡高裁が見張りを認めた1審福岡地裁判決を破棄し、被告が元妻を実際に近くで監視したストーカー行為だけを有罪としていた。

◆被害女性「信じられない」と絶句

 GPSを使った行動監視は、ストーカー規制法の「見張り」には当たらないとする最高裁判決に、元交際相手から車にGPSを取り付けられた経験のある女性は、「信じられない」と絶句した。識者はGPSでの監視も規制できるよう、法改正すべきだと指摘する。

 「もしかして私、見張られているのかしら」。関東地方に住む40代の女性会社員は数年前、元交際相手と何度も街中で鉢合わせすることに違和感を抱いていた。あるときはスーパー、あるときは路上。「偶然だね」と声をかけられたこともあった。

 「気味が悪い」と思いながら1年が過ぎたころ、車で外出したときに顔を合わせるケースが多いことに気づいた。車を確かめると、バンパーの裏にテープでグルグル巻きにされた謎の四角い物体が。GPS端末だった。

 警察は捜査に乗り出し、女性の近くに現れないよう、ストーカー規制法に基づく禁止命令を出した。

 被害は収まったが、「今もあの人と同じ型の車を見かけると背筋が凍る。この苦しみはきっと一生続くと思う」とつぶやく。今回の最高裁判決を「市民感覚とかけ離れている。居場所を把握されているのに、見張りではないというのは納得できない」と残念がった。

 検察側は上告審で、2014年9月~18年11月、GPSを使った見張りを同法違反罪で39件立件し、今回の2件を除く37件では罰金刑や懲役刑が確定していることを明らかにしている。

◆識者「早急に法改正を」

 甲南大法科大学院の園田寿教授(刑事法)は「GPSによる監視は実質的には見張りそのもの。社会の実態に法律が追いついていないことが、最高裁判決で明らかになった。被害者の不安を取り除くためにも、早急に法改正すべきだ」と指摘した。(小野沢健太)



平成30年(あ)第1529号 ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件
令和2年7月30日 第一小法廷判決


主 文
本件上告を棄却する。

理 由
 検察官の上告趣意は,原判決のストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」という。)2条1項1号所定の「見張り」に関する判断は,所論引用の福岡高等裁判所平成29年(う)第175号同年9月22日判決・高等裁判所刑事裁判速報集平成29年282頁と相反するとともに,判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり,これを破棄しなければ著しく正義に反するというのである。


 原判決は,被告人が,共犯者と共謀の上,多数回にわたり,元交際相手が使用している自動車にGPS機器をひそかに取り付け,同車の位置を探索して同人の動静を把握した行為は,ストーカー規制法2条1項1号所定の「見張り」に該当しないのに,これに該当するとした第1審判決には法令適用の誤りがある旨の判断を示している。この判断は,同様の事案において,同号所定の「見張り」該当性を肯定した所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。

 しかしながら,ストーカー規制法2条1項1号は,好意の感情等を抱いている対象である特定の者又はその者と社会生活において密接な関係を有する者に対し,「住居,勤務先,学校その他その通常所在する場所(住居等)の付近において見張り」をする行為について規定しているところ,この規定内容及びその趣旨に照らすと,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当するためには,機器等を用いる場合であっても,上記特定の者等の「住居等」の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものと解するのが相当である。

 そして,原判決の認定によれば,被告人は,元交際相手が利用していた美容室の駐車場等においてGPS機器を上記自動車に取り付けたが,同車の位置の探索は同駐車場等の付近から離れた場所において行われたというのであり,また,同駐車場等を離れて移動する同車の位置情報は同駐車場等の付近における同人の動静に関する情報とはいえず,被告人の行為は上記の要件を満たさないから,「住居等の付近において見張り」をする行為に該当しないとした原判決の結論は正当として是認することができる。

 したがって,刑訴法410条2項により,所論引用の判例を変更し,本件を第1審裁判所に差し戻した原判決を維持するのを相当と認めるから,所論の判例違反は,結局,原判決破棄の理由にならない。

 よって,同法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山口 厚 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官木澤克之 裁判官 深山卓也)




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