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ALS患者の嘱託殺人事件から、「死ぬ権利」「安楽死」について考える(2020年7月30日配信『ヨミドクター』)

 難病の筋 萎縮いしゅく 性側索硬化症(ALS)の患者から依頼を受け、薬物を投与した医師2人が嘱託殺人容疑で逮捕された事件が大きな波紋を呼んでいます。この事件には、法律に違反した、「死ぬ権利」の行使というだけではない、いくつもの問題がありますが、私の率直な受け止め方は、もう日本も「安楽死」についてきちんと議論を進めるべき時に来ているのではないか、ということです。今回の事件は、起こるべくして起こったもので、今後もまた起こるかもしれないからです。

自分の考えを実践するために実行?

 逮捕された2人の医師は、患者の主治医ではなく、患者の容体を判断できる立場にはありませんでした。患者とはSNSで知り合い、「死にたい」という要望をかなえただけですから、嘱託殺人に違いないでしょう。しかも、彼らは自分たちの行為が、日本では法に触れることを知っており、発覚しないように注意を払っているようです。

 さらに、患者から報酬まで受け取っています。読売新聞でもその額は130万円と報道されていますが、医師が人生を棒に振るほどの額とはとても思えません。詳しい動機は、今後の調べを待たなければわかりませんが、自分たちの考えを実行することに重点を置いていたのではないかと思えてなりません。

 大久保愉一容疑者は、ブログに「私は、治療を頑張りたいという方はサポートしますし、『もうそろそろ、いいかな』という方には、撤退戦をサポートする そんな医者でありたいと思っています」と投稿しています。そこまでは理解できます。しかし、大久保容疑者がペンネームで編集し、共犯の山本直樹容疑者が著者になった電子書籍「扱いに困った高齢者を『枯らす』技術:誰も教えなかった、病院での枯らし方」となると、望ましい命と望ましくない命を選別する「優生思想」に近いものです。

患者と医師のニーズが一致

 従って、多くの医療関係者は、この事件を「安楽死」に関係した事件として扱うことに抵抗を覚えて、議論することさえ嫌がります。しかし、一つだけはっきりしていることがあります。それは、今回のケースは、患者のニーズと医者のニーズがぴったりと一致していたことです。

 患者女性は「(人生を)早く終わらせてしまいたい」「話し合いで死ぬ権利を認めてもらいたい。疲れ果てました」などと周囲に漏らしていたといい、おカネを払ってまで自ら死のうとしていたからです。もし、彼女が日本ではなく、安楽死を認めているスイスのような国にいたら、今回のことは問題なく行われていたのかもしれません。


富家 孝(ふけ・たかし)

医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。





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Author:gogotamu2019
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