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GPSと規制法 実態踏まえ改正議論を(2020年8月3日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 被害の実態に沿って法が改められなければ当事者の不安は解消されないだろう。

 衛星利用測位システム(GPS)の機器を相手の車に無断で付けて位置情報を得る。それがストーカー規制法の禁じる「見張り」に当たるかが争われた2事件の上告審で、最高裁は「見張りに当たらない」との初判断を示した。

 規制法は、恋愛感情が満たされない恨みなどから、相手の住まいや勤務・通学先など通常いる場所の近くから見張ることを禁じている。ただし具体的な手法については定めがない。

 刑事裁判には法が明確に規定しない行為を処罰しない罪刑法定主義の原則がある。拡大解釈が許されれば処罰の範囲が恣意(しい)的に広がりかねない。最高裁はその原則を踏まえ要件を厳格に解釈した。

 実際に起きている事件に照らせば現行法は実情に即していない。現状は看過できない。

 2事件の被告は、別居中の妻や元交際相手の車にGPSを取り付け、パソコンや携帯電話で位置情報を確かめていた。

 1審はいずれも見張りに当たると認定した。2審の高裁は、見張りを視覚などで対象の動静を観察する行為と定義し、離れた場所から相手の位置情報をGPSで得る行為は該当しないと判断。最高裁はこれを支持し、見張りの要件を満たさないと結論づけた。

 警察庁によると、全国でGPSによる相手の動静把握を「見張り行為」として規制法違反容疑で摘発した事例は、これまで59件に上る。今回の最高裁判断は捜査にも影響しそうだ。

 2014年に群馬県館林市で当時26歳の女性が元交際相手に殺害された事件では、家族の車に付けられたGPSから居場所が知られた。11年に兵庫で女子大学生が元交際相手に刺された事件でもGPSが使われたとされる。

 ストーカー規制法は1999年に埼玉県桶川市で起きた女性刺殺事件を機に制定された。当時はGPSが普及する前で、手段として想定されていなかった。これまで裁判所の判断も割れていた。

 機器が容易に入手でき、想定外だった事件の増加が懸念される。情報技術が進み、ストーカー行為が多様化する中、法の専門家からは現行法による対処の限界を指摘する声が出ている。

 機器の悪用によって深刻な被害につながる恐れがある。事件を未然に防ぐため、政府、国会は実態に見合った法改正を早急に検討していくべきである。




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