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漱石の思い(2020年8月3日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 夏目漱石は若い頃から神経質で、胃腸も弱かった。その負担が積み重なったのだろう。43歳の時に胃潰瘍を患い、静岡県の修善寺温泉へ養生に行くが、そこで大量に吐血し、生死をさまよう。世に言う「修善寺の大患」である

▼何とか持ちこたえ、東京に戻るも、再び入院生活となる。平均寿命が50歳にも達しない時代。生きていることを不思議に感じながら、世話をしてくれる医者や看護師の有り難さを痛感する

▼粥(かゆ)を一匙(さじ)ずつ口に運んでくれたり、献立表をつくってくれたりしたことを素直に喜んだ。仕事を忠実にこなしていると言えばそれまでだが、病人から見れば「彼らの所作がどれほど尊(たつ)とくなるか分からない。病人は彼らのもたらす一点の好意によって、急に生きてくるからである」(随筆「思い出す事など」)。医療関係者への敬意が伝わってくる

▼コロナ禍の今、漱石のそんな思いが広がってほしいと願わずにはいられない。感染が再び拡大し始め、十分な対策が取られているか、不安が高まる

▼重症者は少なく、医療体制は逼迫(ひっぱく)していないと政府は言うが、現場からは否定する声が上がる。病院だけではない。保健所や介護施設なども人手不足は深刻だ

▼感染の危険と隣り合わせで働かざるを得ない人は多い。その仕事が日々の安心を支えてくれている。現場への配慮を欠けば、くらしはさらに揺らぎかねない。忘れてはなるまい。





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