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「あの戦争」が過去へ過去へと遠ざかっていく(2020年8月4日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 昨年亡くなったイラストレーター、和田誠さんに国民学校の回想記がある。戦中、昼食時の校内放送で「ブーン」という飛行機の音を聞かされた。続けて「ボーイングB17、高度3千メートル」との説明。それがずっと繰り返された

◆空襲に備えて、敵機の音を聞き分ける訓練という。音を覚えてどうなるものでなし、全く意味がなかったと和田さんは振り返りつつ「恐ろしい」とも述べている。いつもこうやって「戦争」がたたき込まれたと

◆回想を読みながら、真剣な表情で放送に聞き入る子どもたちの姿を思い浮かべる。「あの戦争」が過去へ過去へと遠ざかっていくなか、当時の空気を知らない世代にとっては語られる記憶のすべてがありがたい

◆このコロナ禍で平和学習の機会が激減していると、夕刊の記事にあった。空襲や被爆体験を聞く学校行事が取りやめになったり、戦禍をたどるはずだった修学旅行の行き先が変更を強いられたりしているという

◆話す人がいて耳を傾ける人がいる。もの言わぬ遺物が心に訴えかける。“記憶の糸”はこうして戦後75年にわたり世代から世代へつながれてきた。今はみなで学ぶのが難しくとも、どうしても守りたい糸である

◆回想の証言一つ一つが胸に迫る8月の新聞をひらいて、そう思う




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